獨協医科大学化学2013年第5問

次の問1、問2に答えなさい。〔解答番号$\fbox{1}$~$\fbox{5}$〕
  • 問1 炭素、水素、酸素からなる有機化合物で芳香のある物質Aの構造を決定するため、次のような実験を行った。これらの結果を用いて、下の(1)~(3)に答えなさい。

    【実験】

    • (a) 物質A290mgを完全燃焼させると、$\text{H}_2\text{O}$270mgと$\text{CO}_2$660mgを生じた。
    • (b) 物質Aを加水分解すると、アルコールBとカルボン酸Cのみを生じた。また、カルボン酸Cの分子量は、アルコールBの分子量以下であった。
    • (c) アルコールB148mgを完全燃焼させると、$\text{H}_2\text{O}$180mgと$\text{CO}_2$352mgを生じた。
    • (d) アルコールBにヨウ素と水酸化ナトリウムを作用させると、淡黄色の沈殿を生じた。
    • (e) アルコールBを穩やかに酸化すると物質Dを生じ、この物質Dをアンモニア性硝酸銀水溶液に加えても反応は起きなかった。
    • (1) 実験(c)~(e)の結果より予想されるアルコールBの構造について最も適切なものを、次の(1)~(5)のうちから一つ選びなさい。$\fbox{1}$
      • (1) アルコールBの炭素数は4で、第一級アルコールである。
      • (2) アルコールBの炭素数は4で、第二級アルコールである。
      • (3) アルコールBの炭素数は4で、第三級アルコールである。
      • (4) アルコールBの炭素数は3で、第一級アルコールである。
      • (5) アルコールBの炭素数は3で、第二級アルコールである。
    • (2) 実験(a)~(e)から予想される物質Aの示性式を次の図のように表す。このとき、$\fbox{X}$、$\fbox{Y}$に入る示性式の組み合わせとして最も適切なものを、下の(1)~(9)のうちから一つ選びなさい。$\fbox{2}$
      dokkyoika-2013-chemistry-5-1
      $\fbox{X}$
      $\fbox{Y}$
      (1)
      $\text{CH}_3$
      $\text{CH}_2\text{CH}_2\text{CH}_2\text{CH}_3$
      (2)
      $\text{CH}_3$
      $\text{CH}(\text{CH}_3)\text{CH}_2\text{CH}_3$
      (3)
      $\text{CH}_3$
      $\text{C}(\text{CH}_3)_2\text{CH}_3$
      (4)
      $\text{CH}_3$
      $\text{CH}_2\text{CH}(\text{CH}_3)\text{CH}_3$
      (5)
      $\text{CH}_3\text{CH}_2$
      $\text{CH}_2\text{CH}_2\text{CH}_3$
      (6)
      $\text{CH}_3\text{CH}_2$
      $\text{CH}(\text{CH}_3)\text{CH}_3$
      (7)
      $\text{CH}_3\text{CH}_2$
      $\text{CH}(\text{CH}_3)\text{CH}_2\text{CH}_2\text{CH}_2\text{CH}_3$
      (8)
      $\text{CH}_3\text{CH}_2\text{CH}_2\text{CH}_2$
      $\text{CH}_2\text{CH}_2\text{CH}_2\text{CH}_3$
      (9)
      $\text{CH}_3\text{CH}_2\text{CH}_2\text{CH}_2$
      $\text{CH}(\text{CH}_3)\text{CH}_2\text{CH}_3$
    • (3) 物質Aが(2)で示した示性式で表されるとき、この物質Aの異性体であるカルボン酸には$\fbox{ア}$種類の構造異性体があり、その中で不斉炭素原子をもつものは$\fbox{イ}$種類ある。$\fbox{ア}$、$\fbox{イ}$に入る数値の組み合わせとして最も適切なものを、次の(1)~(9)のうちから一つ選びなさい。$\fbox{3}$
      $\fbox{ア}$
      $\fbox{イ}$
      (1)
      3
      1
      (2)
      4
      1
      (3)
      4
      2
      (4)
      5
      2
      (5)
      6
      2
      (6)
      6
      3
      (7)
      7
      3
      (8)
      8
      3
      (9)
      8
      4
  • 問2 次の文章を読み、下の(1)、(2)に答えなさい。

    α-アミノ酸の分子間で、アミノ基とカルボキシ基(カルボキシル基)が脱水縮合して生成した化合物をペプチドという。ペプチドの一方の末端にはアミノ基が存在し、他方の末端にはカルボキシ基が存在する。これらをそれぞれ、ペプチドのN末端、およびC末端とよぶ。ペプチドには、タンパク質と同様に固有の生理機能をもつものが多く存在し、ペンタペプチドXも脳で分泌され、鎮痛作用を示す神経伝達物質である。このペンタペプチドXのアミノ酸配列を決定するために次のような実験を行った。

    〔実験1〕ペンタペプチドXを完全に加水分解したところ、メチオニン(Met)、グリシン(Gly)、フェニルアラニン(Phe)、チロシン(Tyr)の4種類のα-アミノ酸が得られた。また、ペンタペプチドXについて、そのN末端、C末端のアミノ酸はいずれも光学異性体をもつこと、および、光学異性体をもたないアミノ酸どうしが隣り合わせで結合していることがわかった。

    〔実験2〕ペンタペプチドXを、酵素Aを用いて加水分解すると、ペプチドYとペプチドZが得られた。ただし、酵素Aはベンゼン環をもつアミノ酸のアミノ基側のペプチド結合を特異的に加水分解する作用をもつ。

    〔実験3〕ペプチドYの水溶液とペプチドZの水溶液に(a)水酸化ナトリウム水溶液を加えた後、硫酸銅(Ⅱ)水溶液を滴下して観察したところ、ペプチドZの水溶液のみが紫色を呈した。

    〔実験4〕ペプチドYの水溶液とペプチドZの水溶液に(b)水酸化ナトリウム水溶液を加えて加熱した後、酢酸鉛水溶液を滴下して観察したところ、ペプチドYの水溶液のみに黒色沈殿が生じた。

    〔実験5〕ペプチドYの水溶液とペプチドZの水溶液に(c)濃硝酸を滴下して加熱し、さらにアンモニア水を加えて塩基性にして起こる変化を観察したところ、ペプチドYとペプチドZの両方の水溶液がともに黄色になってから橙黄色になる呈色反応を示した。

    〔実験6〕ペプチドYの分子量を測定したところ296であり、これよりペプチドYは必須アミノ酸のみから構成されていることがわかった。

    • (1) 下線部(a)~(c)の反応名の組み合わせとしで最も適切なものを、次の(1)~(8)のうちから選びなさい。$\fbox{4}$
      (a)
      (b)
      (c)
      (1)
      キサントプロテイン反応
      ニンヒドリン反応
      ビウレット反応
      (2)
      ニンヒドリン反応
      硫黄の検出反応
      ビウレット反応
      (3)
      硫黄の検出反応
      キサントプロテイン反応
      ニンヒドリン反応
      (4)
      ビウレット反応
      硫黄の検出反応
      キサントプロテイン反応
      (5)
      ニンヒドリン反応
      ビウレット反応
      硫黄の検出反応
      (6)
      硫黄の検出反応
      ニンヒドリン反応
      キサントプロテイン反応
      (7)
      ビウレット反応
      キサントプロテイン反応
      硫黄の検出反応
      (8)
      キサントプロテイン反応
      ビウレット反応
      ニンヒドリン反応
    • (2) 実験1~実験6の結果より、ペンタペプチドXのアミノ酸配列をN末端からC末端まで次のように表した。このとき、フェニルアラニン(Phe)とチロシン(Tyr)の位置の組み合わせとして最も適切なものを、下の(1)~(8)のうちから一つ選びなさい。$\fbox{5}$
      dokkyoika-2013-chemistry-5-2
      フェニルアラニン(Phe)
        チロシン(Tyr)  
      (1)
      1
      3
      (2)
      1
      4
      (3)
      1
      5
      (4)
      3
      1
      (5)
      3
      5
      (6)
      4
      1
      (7)
      5
      1
      (8)
      5
      3