順天堂大学生物2013年第2問

以下の文を読んで各問い(問1~7)に答えよ。解答は記述式解答用紙に記述せよ。

ある単細胞真核生物は単相世代(一倍体)も複相世代(二倍体)も無性生殖で増えるが、適切な刺激を人為的に与えた場合にのみ一倍体どうしが接合して二倍体となる。生じた二倍体は無性生殖し、ある条件が人為的に整えられた場合にのみ減数分裂して一倍体を生じる。単相世代も複相世代も、野生型ならば共通の最少培地で生育する。

この生物では、次の模式図で示すように、物質Xから4つの中間代謝産物を経て物質Yにいたる代謝経路が知られている。模式図の( )には中間代謝産物である物質1~4のいずれかが入る。また、それぞれの矢印で示された代謝過程に関与する酵素が1つずつ知られており、どれも1つのポリペプチドからなることがわかっている。なお、物質Xから物質Yにいたる代謝はこの生物の生殖には影響せず、それぞれの酵素間には直接的な相互作用や調節関係はない。

juntendo-2013-biology-2-1

いま、それぞれの酵素に対応する遺伝子(仮にA~Eとする。ただし代謝経路上で酵素が関与する順番はアルファベットの並び通りとは限らない)のいずれか1つだけに突然変異が生じた一倍体を準備した。これらを、それぞれの突然変異遺伝子に対応させてA~E株とよぶことにする。これらの一倍体はどれも、最少培地(すでに物質Xを含んでいる)では全く生育しないが、物質Yを含む添加培地では正常に生育する。

なお、以下の実験1、2および問6、7の実験には、あらかじめ、同じ株の一倍体どうしでは接合しない処理をしたものを用いた。また、これらの実験では十分な数の細胞を用い、細胞の生育を個別に観察できるようにしている。

〔実験1〕準備した一倍体どうしを異なる組合せで接合させて二倍体を得た。どの組合せから得た二倍体も、最少培地で正常に生育した。

〔実験2〕実験1で得られた二倍体を適切な条件におくことで一倍体を得た。次に、1つの接合実験から得た一倍体から無作為に10万個ずつの6群をとり分け、それぞれ最少培地または添加培地(物質1~4および物質Yの中の1つだけを最少培地に添加した培地)に移した。次の表は、5つの接合実験から得た一倍体のうち、それぞれの培地で生育したものの割合を百分率(%)で表したものである。

最少培地および添加培地で増殖した一倍体の割合(%)
一倍体を
得た接合
最少培地:
物質Xを含む
添加培地
最少培地に加えた物質
物質Y
物質1
物質2
物質3
物質4
A×B
25
100
25
50
50
100
B×C
10
100
10
50
50
50
C×D
25
100
25
50
25
50
D×E
5
100
50
100
50
100
E×A
0
100
50
50
50
100
  • 問1 下線部について「1つの遺伝子が1つの酵素の合成を支配する」説を何と呼ぶか。また、この説を最初に唱えた2人の研究者は誰か。それぞれの姓を答えよ。
  • 問2 実験1から、A~E株の持つ5つの突然変異に関してどのようなことが推測できるか。句読点を含めて40字以内で記述せよ。
  • 問3 物質1~4は物質Xからどういう順番で代謝されてくるか。解答用紙の図中の( )に1~4の数字を記入せよ。
  • 問4 突然変異株A~Eはそれぞれどの酵素に異常があるか。解答用紙の図中の$\fbox{ }$にA~Eの記号を記入せよ。
  • 問5 実験1および2から、A株の持つ突然変異遺伝子とE株の持つ突然変異遺伝子の染色体上での位置関係に関してどのようなことが推測できるか。句読点を含めて50字以内で記述せよ。
  • 問6 A株とD株を接合させた後、一倍体を得た。得られたすべての一倍体を、最少培地に移した。このうち生育するものは何%あるか。小数点以下が出た場合には、小数点以下第2位を四捨五入して解答せよ。
  • 問7 C株とE株を接合させた後、一倍体を得た。これらの一倍体どうしでは接合しないように処理した後、物質Yを含む添加培地で培養した。これらの一倍体をB株と接合させた後、一倍体を得た。 得られたすべての一倍体を最少培地に移した時、生育するものは何%あるか。小数点以下が出た場合には、小数点以下第2位を四捨五入して解答せよ。