金沢医科大学生物2012年第1問
次の(1)~(20)の設問に答えなさい。設問に特別指示のないものについては、解答群の中から答えとして適したものを1つ選びなさい。指示のある設問については、それに従って答えなさい。$\big\{$解答番号$\fbox{1}$~$\fbox{25}\big\}$
(2) 図1はゾウリムシの模式図である。問1、2に答えなさい。
(3) 次の文章と図2は、細胞が集まり合う性質を調べるための実験について述べたものである。カイメンの組織をガーゼでこしたのち、$\text{Ca}^{2+}$、$\text{Mg}^{2+}$を含まない人工海水に入れておくと、細胞は完全に解離され、このままでは再集合しなかった(図中ア)。その後、解離細胞(図中イ)と、その上澄み(図中ウ)に分けた。この上澄みには解離細胞を再集合させる「集合因子」が含まれる。
(4) 被子植物のおしべの話(やく)の中で、減数分裂が行われて最初に生じるものはどれか。$\fbox{5}$
(5) 酵素の一般的特徴に関する記述と して最も適切なものを選びなさい。$\fbox{6}$
(6) ヒトにおける栄養分の吸収と代謝に関する以下の文のうち、誤っているものはどれか。$\fbox{7}$
(7) 次の文の(ア)と(イ)に該当する語句として最も適切なものをそれぞれ選びなさい。
(8) イギリスのヒルは、光合成に関する次のような実験を行った。葉をすりつぶして葉緑体を含む水溶液をつくり、適当な容器に入れ空気を抜いて密閉した後、光をあてた。このとき、あらかじめシュウ酸鉄(Ⅲ)を加えてあれば$\text{O}_2$が発生したが、加えていないと$\text{O}_2$はほとんど発生しなかった。この実験結果の説明として適切なものを2つ選びなさい。$\fbox{10}$
(9) $\text{C}_3$、$\text{C}_4$およびCAM植物の一般的特徴に関する記述として適切なものを3つ選びなさい。$\fbox{11}$
(10) 遺伝子発現における「転写」または「翻訳」に関する説明として適切なものを2つ選びなさい。$\fbox{12}$
(11) 次のDNAの塩基配列と相補的なRNAの塩基配列を示すものと して適切なものを選びなさい。$\fbox{13}$
DNA塩基配列:TCGGTACCCGGGAACCTCGGCGTCGACTAGCCGCGACGAC
(12) 設間(11)の正答は、ある伝令RNAの塩基配列であるとする。その中の開始コドンから細訳が行われると、アミノ酸何個からなるポリペプチドが合成されるか。なお、終止コドンはUAA、UAG、UGAである。$\fbox{14}$
(13) ポリメラーゼ連鎖反応 (PCR) に関する記述として最も適切なものを選びなさい。$\fbox{15}$
(14) 次の文の(ア)と(イ)に該当する語句の組合わせと して最も適切なものを選びなさい。$\fbox{16}$
(15) iPS細胞に関する記述として適切なものを3つ選びなさい。$\fbox{17}$
(16) イソギンチャクはクマノミに安全な生活場所を与え、クマノミはイソギンチャクの敵を追い払う。異種の生物どうしのこのような関係を何とよぶか。$\fbox{18}$
(17) 目のかん体細胞で働くロドプシンと最も関係が深いビタミンはどれか。$\fbox{19}$
(18) 血液にクエン酸ナトリウムを加えると血液凝固反応が阻害される。それはクエン酸ナトリウムによってどの物質が直接除かれるためか。$\fbox{20}$
(19) ヒトにおける体温調節に関する記述として誤っているものをすべて選びなさい。$\fbox{21}$
(20) 恒常性の維持に関する以下の文章を読み、問1~4に答えなさい。
- (1) 細胞の構成要素に関する記述として誤っているものをすべて選びなさい。$\fbox{1}$
- (a) ミトコンドリアの内膜には多数のATP合成酵素が存在する。
- (b) リボソームはDNAの複製を行う装置である。
- (c) 核小体はリボソームRNA合成の場である。
- (d) ゴルジ体は分泌が活発な細胞でよく発達する。 (e) 核は二重の膜によって取り囲まれている。
- (f) 動物の表皮細胞には細胞壁がある。
- (g) リソソームは加水分解酵素を含み、細胞内消化に関係する。
- (h) 葉緑体の内膜とチラコイドは通常分離している。
- 問1 図中の(ア)は浸透圧の調節に関わる細胞小器官である。その名称として正しいものはどれか。$\fbox{2}$
- (a) 大核
- (b) 小核
- (c) 繊毛
- (d) 食胞
- (e) 収縮胞
- (f) 細胞口
- (g) 細胞肛門
- 問2 図中の(イ)のおもな働きとして最も適切なものを選びなさい。$\fbox{3}$
- (a) 不消化物の体外への排出
- (b) 連動
- (c) 細胞分裂
- (d) エネルギーの生成
- (e) 栄養に関与
- (f) 生殖に関与
- (g) 食物の消化
実験1~5の結果に対する考察a)~d) について、適切なものを$\bigcirc$、不適切なものを$\times$として正しい組合せを選びなさい(A、B、C、Dの順)。 $\fbox{4}$
- [実験1] 図中イの解離細胞を、24℃の正常海水に戻すと再集合した。
- [実験2] 図中イの解離細胞を、5℃の正常海水に戻しても、再集合しなかった。
- [実験3] A種とB種のカイメンを用いて、それぞれ図中イの解離細胞を得た。それらを24℃の正常海水に戻して混合すると、同種の細胞どうしで再集合し、両者が混じることはなかった。
- [実験4] 実験2の条件で再集合しなかった正常海水中のA種の解離細胞に、A種の細胞を解離させた処理海水(図中ウ)を添加すると、5℃でも解離細胞は再集合した。
- [実験5] 実験2の条件で再集合しなかった正常海水中のA種の解離細胞に、B種の細胞を解離させた処理海水(図中ウ)を添加しても、5℃で再集合しなかった。
- A) カイメンの解離細胞は、「集合因子」の働きにより同種の細胞を識別し、再集合すると考えられる。
- B) カイメンの解離細胞の再集合には、$\text{Ca}^{2+}$、$\text{Mg}^{2+}$以外に、正常海水にもともと含まれる「集合因子」が重要であると考えられる。
- C) カイメンの解離細胞の再集合には、24℃で細胞増殖が行われることが不可欠であると考えられる。
- D) カイメンの解離細胞は、24℃で「集合因子」の合成、あるいは分泌を行うと考えられる。
- (a) $\bigcirc$、$\bigcirc$、$\times$、$\bigcirc$
- (b) $\bigcirc$、$\bigcirc$、$\bigcirc$、$\times$
- (c) $\bigcirc$、$\times$、$\times$、$\times$
- (d) $\bigcirc$、$\times$、$\bigcirc$、$\bigcirc$
- (e) $\bigcirc$、 $\times$、$\times$、$\bigcirc$
- (f) $\times$、$\bigcirc$、$\times$、$\times$
- (g) $\times$、$\times$、$\times$、$\bigcirc$
- (h) $\times$、$\bigcirc$、$\times$、$\bigcirc$
- (i) $\times$、$\times$、$\bigcirc$、$\bigcirc$
- (j) $\times$、$\bigcirc$、$\bigcirc$、$\times$
- (a) 胚のう細胞
- (b) 雄原細胞
- (c) 花粉母細胞
- (d) 花粉管核
- (e) 精細胞
- (f) 助細胞
- (g) 反足細胞
- (h) 花粉四分子
- (a) 酵素は触媒として働き、その際自らも分解される。
- (b) 酵素反応は基質と立体構造がよく似た物質によって促進される。
- (c) 酵素はミトコンドリアのみから生成される。
- (d) 酵素の反応速度は水素イオン濃度の影響を受けない。
- (e) 酵素の活性には補酵素が不可欠である。
- (f) 酵素は特定の物質としか反応せず、鍵と鍵穴の関係に例えられる。
- (a) 食物中の高分子化合物は消化によって低分子化合物になる。
- (b) 肝臓でつくられる胆汁に消化酵素は含まれない。
- (c) 消化された単糖類は小腸柔毛内の毛細血管に入る。
- (d) 吸収された脂肪酸は脂肪粒となって毛細リンパ管に入る。
- (e) 大腸のおもな働きはアミノ酸の吸収である。
- (f) 吸収された単糖類は肝門脈から肝臓に入る。
- (g) 蓄えられた脂肪は必要に応じて呼吸基質として使われる。
光合成は、緑葉の葉緑体で行われる。葉緑体の( ア )はクロロフィルなどの同化色素を含んでおり、光エネルギーを受け取ることができる。また、葉緑体の( イ )の部分では、二酸化炭素を固定する酵素による化学反応が行われる。
- ア:$\fbox{8}$
- イ:$\fbox{9}$
- (a) 葉緑体外膜
- (b) チラコイド
- (c) ミトコンドリア
- (d) リソソーム
- (e) 滑面小胞体
- (f) ゴルジ体
- (g) ストロマ
- (a) 光エネルギーにより水が分解されて$\text{O}_2$が発生した。
- (b) 光エネルギーにより$\text{CO}_2$が分解されて$\text{O}_2$が発生した。
- (c) 光エネルギーにより$\text{CO}_2$が分解されて水素が発生した。
- (d) この反応には$\text{O}_2$を受け取る酸化剤が必要である。
- (e) この反応には水素を受け取る酸化剤が必要である。
- (f) この反応には水素を受け取る還元剤が必要である。
- (a) $\text{C}_3$植物では、$\text{CO}_2$の最初の固定と、カルビン・ベンソン回路の反応とは別の細胞で行われる。
- (b) $\text{C}_4$植物では、$\text{CO}_2$の最初の固定と、カルビン・ベンソン回路の反応とは別の細胞で行われる。
- (c) CAM植物では、$\text{CO}_2$の最初の固定と、カルビン・ベンソン回路の反応とは別の細胞で行われる。
- (d) CAM植物における$\text{CO}_2$の最初の固定では、$\text{CO}_2$は$\text{C}_3$化合物として固定される。
- (e) $\text{C}_4$植物は$\text{C}_3$植物よりも高い光胞和点をもつ。
- (f) $\text{C}_3$植物は、通常日中に気孔を閉じ、夜間に開く。
- (g) CAM植物は、通常日中に気孔を閉じ、夜間に開く。
- (a) 「転写」では、RNAポリメラーゼの働きにより、鋳型DNAから2本鎖RNAが合成される。
- (b) 基本転写因子はプライマーと呼ばれる領域に結合して転写を開始する。
- (c) 「翻訳」とは、伝令RNAの塩基配列からアミノ酸の配列に読み換えられることをいう。
- (d) 開始コドンに対応するアミノ酸はアラニンである。
- (e) 完成した伝令RNAとなる部分に対応するDNAの領域をイントロンという。
- (f) 「転写」は核内で、「翻訳」は細胞質で、それぞれ行われる。
DNA塩基配列:TCGGTACCCGGGAACCTCGGCGTCGACTAGCCGCGACGAC
- (a) UCGGUACCCGGGAACCUCGGCGUCGACUAGCCGCGACGAC
- (b) GTCGTCGCGGCTAGTCGACGCCGAGGTTCCCGGGTACCGA
- (c) AGCCATGGGCCCTTGGAGCCGCAGCTGATCGGCGCTGCTG
- (d) AGCCAUGGGCCCUUGGAGCCGCAGCUGAUCGGCGCUGCUG
- (a) 4個
- (b) 5個
- (c) 6個
- (d) 7個
- (e) 8個
- (f) 9個
- (g) 10個
- (h) 11個
- (i) 12個
- (a) PCRでは、DNAの特定領域が、理論上、一次関数的に増幅される。
- (b) PCRでは、増幅したい領域の端の部分と相補的な塩基配列を持つ短い1本鎖DNAを用いる。この1本鎖DNAをプロモーターとよぶ。
- (c) 実用的なPCR法に用いるDNAポリメラーゼは、耐熱性であることが重要である。
- (d) 2本鎖DNAを1本鎖にする際は、加水分解酵素が必要である。
- (e) DNAを複製するために、塩基がそれぞれA、U、G、Cである4種類のヌクレオチドを反応液に添加しておく。
(ア)という酵素は、 (イ)により特定の塩基配列で切断されたDNA断片を再びつなぐ働きをもつ。
- (a) ア:DNAポリメラーゼ、イ:DNAリガーゼ
- (b) ア:DNAポリメラーゼ、イ:制限酵素
- (c) ア:DNAリガーゼ、イ:DNAポリメラーゼ
- (d) ア:DNAリガーゼ、イ:制限酵素
- (e) ア:制限酵素、イ:DNAポリメラーゼ
- (f) ア:制限酵素、イ:DNAリガーゼ
- (a) 胚性幹細胞とよばれる。
- (b) 胚盤胞の内部細胞塊を培養してつくられる。
- (c) ヒトの皮膚細胞などに遺伝子を導入してつくられる。
- (d) 数種類の限られた細胞にしか分化できない。
- (e) 日本人の研究者によって最初につくられた。
- (f) 将来一人の人間になり得る胚を犠牲にしてつくられるので、再生医療に応用しようとした場合、倫理的問題がともなう。
- (g) 患者自身の細胞が利用できるため、移植医療に応用しても拒絶反応は起こらないと期待される。
- (a) 競争
- (b) 捕食-被食関係
- (c) 相利共生
- (d) 片利共生
- (e) 寄生
- (f) 中立
- (g) すみわけ
- (h) 食物連銀
- (a) ビタミンA
- (b) ビタミンB1
- (c) ビタミンB2
- (d) ビタミンB6
- (e) ニコチン酸
- (f) ビタミンE
- (a) $\text{Ca}^{2+}$
- (b) $\text{Cl}^-$
- (c) $\text{K}^+$
- (d) フィブリン
- (e) トロンビン
- (f) プロトロンビン
- (g) フィブリノーゲン
- (h) 血小板
- (a) 体温調節中枢は間脳の視床下部にある。
- (b) 寒冷剌激があると、交感神経の働きにより立毛筋が収縮する。
- (c) 寒冷刺激があると、チロキシンなどの働きにより代謝が抑制される。
- (d) 暑熱剌激があると、交感神経の働きにより心臓の拍動が促進される。
- (e) 暑熱刺激があると、皮膚の血管が拡張して熱の放散量が増す。
ヒトをはじめとする(ア)脊つい動物の循環系には、血管系とリンパ系がある。ヒト血液の組成はほぼ一定に保たれており、恒常性と深い関係をもっている。血液は有形成分と液体成分の血しょうから成り、有形成分は、赤血球、白血球、血小板である。血液中の白血球の一種は病原体を(イ)食作用によって取り込み、消化して、排除する。さらに、別の白血球は(ウ)抗体と呼ばれる免疫グロブリンを産生し、病原体や毒素を排除、中和する。以上のように、我々のからだは微生物などの外敵から守られている。このことを免疫といい、これを利用した(エ)血清療法などが行われている。
- 問1 下線部(ア)に関する記述として誤っているものを選びなさい。$\fbox{22}$
- (a) ヒトは、大部分の血液が血管中だけを流れる閉鎖血管系をもつ。
- (b) 血液やリンパ液などの体液は、からだ全体を循環して、物質の運搬などを行う。
- (c) 哺乳類、鳥類、は虫類の心室には完全な隔壁があり、循環している動脈血と静脈血は混ざらない。
- (d) 魚類には、肺循環と体循環の区別がない。
- (e) ヒトでは、全身から心臓に戻る血液は、まず右心房に送られる。
- (f) リンパ節や胸腺はリンパ系に属する。
- 問2 下線部(イ)の作用をおもに担当する細胞の名称と、その細胞の他の機能として正しい語句との組合わせを選びなさい。$\fbox{23}$
- (a) マクロファージ-抗体産生
- (b) マクロファージ-抗原提示
- (c) T細胞-抗体産生
- (d) T細胞-抗原提示
- (e) B細胞-抗体産生
- (f) B細胞-抗原提示
- 問3 下線部(ウ)が、抗原を認識する部位を図3から選び、その名称との組合わせとして正しいものを選びなさい。$\fbox{24}$
- (a) a:定常部
- (b) a:可変部
- (c) b:定常部
- (d) b:可変部
- (e) c:定常部
- (f) c:可変部
- (g) d:定常部
- (h) d:可変部
- (i) e:定常部
- (j) e:可変部
- 問4 下線部(エ)に最も関連の深い語句を2つ選びなさい。$\fbox{25}$
- (a) 抗原抗体反応
- (b) 赤血球凝集素
- (c) 細胞性免疫
- (d) 体液性免疫
- (e) キラーT細胞
- (f) 血液凝固因子