ゴムのような高分子物質は、温度によって伸びと張力の関係が変化し、理想気体のように熱力学の諸法則に従う性質を持つ。いっぼう、ある一定量の理想気体の圧力$p$、体積$V$、絶対温度$T$の間には、「$\dfrac{pV}{T}$=一定」となる関係がある。いま、図1のように、シリンダー中に、ある量の理想気体を、滑らかに動く軽いピストンで封入し、ピストンをシリンダーの底にゴムバンドで結び付けた。このゴムバンドの長さを$x$とすると、その張力$F$は、絶対温度を$T$として$F=Tf(x)$と表されるとする。ここで$f(x)$は、図2に示すような概形を持ち$T$によらない、$x$についての増加関数である。ゴムバンドの断面積はシリンダーの断面積$S$に比べ十分小さいものとする。シリンダーの中には体積の無視できるヒーターが取り付けられ、シリンダー外から通電をオン/オフできる。ピストンとシリンダーは断熱性が良く、それらの熱容量は無視できる。また、以下のいずれの過程でも、$x$は図2の$x_0$を下回ることはない。ピストンに加わる大気圧の大きさを$p_0$とする。以下の問に答えよ。計算問題は途中の考え方も記せ。

• 問1 最初、理想気体とゴムバンドの絶対温度はともに$T_1$、ゴムバンドの長さは$x_1$であった。このときの$f(x)$の値を$f_1$とする。このときの理想気体の圧力を求めよ。
• 問2 次にヒーターに通電を開始し、ある時間が経過したのちに通電を終えたところ、理想気体とゴムバンドは常に互いに同じ温度を保ちながら、最終的に温度$T_2$となり$(T_2\gt T_1)$、その間にピストンはゆっくりと移動し、ゴムバンドの長さが$x_2$となる位置で静止した。このときの$f(x)$の値を$f_2$とする。$x_1$、$x_2$、$f_1$、$f_2$、$T_1$、$T_2$の間に成り立つ関係を記せ。
• 問3 $x_2\gt x_1$であることを証明せよ。
• 問4 問2の加熱の間にヒーターが発生した総熱量を$\text{Q}$とすると、この加熱の間の理想気体とゴムバンドの内部エネルギーの増加量の合計$\Delta U$はいくらか。
• 問5 その後、ピストンに力を加えて、ゴムバンドの長さが$x_1$となる位置まで素早く戻し、その位置でピストンを固定した。これらの操作のあいだ、ゴムバンド及び理想気体の温度は一時的にどう変化するか。適切な記述を下のア―エの中から選び、記号で答えよ。
  • (ア) ゴムバンドの温度は上昇し、理想気体の温度は下降する。
  • (イ) ゴムバンドの温度は変化せず、理想気体の温度は上昇する。
  • (ウ) ゴムバンドの温度は下降し、理想気体の温度は上昇する。
  • (エ) ゴムバンド、理想気体ともに温度は上昇する。