川崎医科大学生物2013年第2問
- Ⅰ 腎臓について、問1~3に答えよ。
ヒトの腎臓には$\fbox{ア}$とよばれる、尿を生成する単位構造がある。$\fbox{ア}$は$\fbox{イ}$とこれに続く細尿管からできており、$\fbox{イ}$は毛細血管が密集した糸球体とこれを包む$\fbox{ウ}$からなっている。たくさんの細尿管が集まり$\fbox{エ}$となって$\fbox{オ}$に開口している。
血液が糸球体内を通るとき、血しょう中のタンパク質以外の成分は$\fbox{ウ}$にこしだされ原尿となる。原尿が細尿管を流れる間に糖のほぼ全部と、無機塩類・水などの大部分が、細尿管を取りまく毛細血管内に再吸収される。1再吸収は、血液の成分や濃度の状態に応じてホルモンによって調節されている。再吸収された残りが尿となって$\fbox{オ}$に集まり、$\fbox{カ}$を経て$\fbox{キ}$にたまり、尿道から排出される。
腎臓が血しょう中にある物質を取り除く速度を、その物質についてのクリアランスという。ある物質の血しょう中の濃度をP(mg/ml)、尿中の濃度をU(mg/ml)、1分間あたりにできる尿の量をV(ml/分)とすると、クリアランスC(ml/分)は、$\text{C}=\dfrac{\text{U×V}}{\text{P}}$と表わされる。
- 問1 文章中の$\fbox{ア}$~$\fbox{キ}$に当てはまる用語はどれか。最も適当なものを一つずつ選べ。
- (1) 腎小体
- (2) 輸尿管
- (3) ネフロン
- (4) 尿膜
- (5) ボーマンのう
- (6) 腎う
- (7) ぼうこう
- (8)集合管
- (9) 腎管
- (0) 腎動脈
- 問2 表1に関して、〔1〕、〔2〕に答えよ。
表1血しょう中の濃度
(mg/100ml)尿中の濃度
(mg/100ml)物質X 1170物質Y 350物質Z 302000- 〔1〕表1はヒトの血しょうと尿中に含まれる物質X、Y、Zの濃度を示す。腎臓における排出が最も効率的に行われている物質はどれか。最も適当なものを一つ選べ。$\fbox{ク}$
- (1) 物質X
- (2) 物質Y
- (3) 物質Z
- 〔2〕 1分間あたり1mlの尿がつくられる場合、表1のそれぞれの物質のクリアランス(ml/分)はいくらか。最も適当なものを一つずつ選べ。
- 物質X:$\fbox{ケ}$
- 物質Y:$\fbox{コ}$
- 物質Z:$\fbox{サ}$
- (1) 0.15
- (2) 0.67
- (3) 1.63
- (4) 6.45
- (5) 16.7
- (6) 66.7
- (7) 165
- (8) 170
- 〔1〕表1はヒトの血しょうと尿中に含まれる物質X、Y、Zの濃度を示す。腎臓における排出が最も効率的に行われている物質はどれか。最も適当なものを一つ選べ。$\fbox{ク}$
- 問3 下線部1に関して、〔1〕、〔2〕に答えよ。
- 〔1〕塩分を多く摂取して体液の浸透圧が上昇すると分泌されるホルモンはどれか。最も適当なものを一つ選べ。$\fbox{シ}$
- (1) 成長ホルモン
- (2) パラトルモン
- (3) 糖質コルチコイド
- (4) バソプレシン
- (5) チロキシン
- (6) 甲状腺刺激ホルモン
- (7) アドレナリン
- 〔2〕このホルモンに関するa~eの記述のうち、正しい組み合わせはどれか。最も適当なものを一つ選べ。$\fbox{ス}$
- a.脳下垂体後葉の内分泌腺で合成される。
- b.視床下部にあるニューロンの細胞体で合成される。
- c.脳下垂体前葉から分泌される。
- d.集合管での水の再吸収を促進する。
- e.集合管での水の再吸収を抑制する。
- (1) aとc
- (2) aとd
- (3) aとe
- (4) bとc
- (5) bとd
- (6) bとe
- (7) cとd
- (8) cとe
- 〔1〕塩分を多く摂取して体液の浸透圧が上昇すると分泌されるホルモンはどれか。最も適当なものを一つ選べ。$\fbox{シ}$
- 問1 文章中の$\fbox{ア}$~$\fbox{キ}$に当てはまる用語はどれか。最も適当なものを一つずつ選べ。
- Ⅱ 浸透圧について、問1~3に答えよ。
- 問1 図1のA~Fは、ほ乳類・両生類・淡水産硬骨魚類・海水産硬骨魚類・海水産軟骨魚類・海水産無脊椎動物のいずれかの体液の浸透圧を示したものである。Bの斜線部は物質Xによる浸透圧であり、物質XはEやF(成体)の尿中に存在する。淡水産硬骨魚類の体液の浸透圧は海水産硬骨魚類のものよりも低い。また、Eの赤血球は核をもたない。〔1〕~〔4〕に答えよ。
- 〔1〕体液の浸透圧を調節するしくみをもたないのはどれか。$\fbox{セ}$
また、海水産硬骨魚類はどれか。$\fbox{ソ}$
最も適当なものを一つずつ選べ。- (1) A
- (2) B
- (3) C
- (4) D
- (5) E
- (6) F
- 〔2〕Bの斜線部の物質Xは何か。最も適当なものを一つ選べ。$\fbox{タ}$
- (1) アンモニア
- (2) 尿素
- (3) 尿酸
- (4) タンパク質
- (5) グルコース
- 〔3〕淡水産硬骨魚類の体液の浸透圧調節に関して誤っているのはどれか。最も適当なものを一つ選べ。$\fbox{チ}$
- (1) 水をほとんど飲まない。
- (2) えらから塩類を積極的に排出する。
- (3) 腎臓で塩類を再吸収する。
- (4) 体液より低張な尿を多量に排出する。
- (5) 川と海を往復する種類は、成長の過程で腎臓やえらの機能を切りかえる。
- 〔4〕硬骨魚類において塩類を調節する塩類細胞はどこにあるか。最も適当なものを一つ選べ。$\fbox{ツ}$
- (1) 口
- (2) えら
- (3) 腸
- (4) 腎臓
- (5) 塩類腺
- 〔1〕体液の浸透圧を調節するしくみをもたないのはどれか。$\fbox{セ}$
- 問2 淡水に生息するゾウリムシの体内の浸透圧は外液に対して高張であり、体内に浸透する水分は収縮胞で排出されている。塩化ニッケル水溶液で繊毛の動きを止めたゾウリムシを用いて、外液の濃度を変化させて一定時間あたりの収縮胞の収縮回数を測定した。結果は図2のa~dのうちのどれか。最も適当なものを一つ選べ。$\fbox{テ}$
- (1) a
- (2) b
- (3) c
- (4) d
- 問3 図3は、2種類のカニ(aとb)の体液の浸透圧と外液の浸透圧の関係を示したものである。何も溶けていない水の浸透圧を0とし、線分の存在する範囲でのみカニは適応し生存した。$\fbox{ト}$~$\fbox{ヌ}$の記述で、カニaについてならば(1)を、カニbについてならば(2)を、両者についてならば(3)を、どちらでもないならば(4)をマークせよ。
- $\fbox{ト}$ 体液の浸透圧は外液の浸透圧とほぼ等しい。
- $\fbox{ナ}$ 淡水から海水まで広い範囲での浸透圧調節能力をもつ。
- $\fbox{ニ}$ 淡水中では浸透圧調節が行えず生存できない。
- $\fbox{ヌ}$ 海水中で生存できる。
- 問1 図1のA~Fは、ほ乳類・両生類・淡水産硬骨魚類・海水産硬骨魚類・海水産軟骨魚類・海水産無脊椎動物のいずれかの体液の浸透圧を示したものである。Bの斜線部は物質Xによる浸透圧であり、物質XはEやF(成体)の尿中に存在する。淡水産硬骨魚類の体液の浸透圧は海水産硬骨魚類のものよりも低い。また、Eの赤血球は核をもたない。〔1〕~〔4〕に答えよ。
- Ⅲ 遺伝子組換えについて、問1~4に答えよ。
ヒトのインスリン遺伝子をクローニングする目的で、大腸菌に組換えプラスミドを導入する実験を以下の手順で行った。
1プラスミド(図1A)には、アンピシリン耐性遺伝子(ampr)とlacZ遺伝子(lacZ)があるものを使用した。アンピシリン耐性遺伝子はアンピシリンを無毒化する酵素の遺伝子であり、lacZ遺伝子はラクトースを分解する酵素(βガラクトシダーゼ)の遺伝子である。
手順1
ヒトDNA(図1B)を2制限酵素で切断し、インスリン遺伝子を含むDNA断片(図1C)を得た。プラスミドも同じ制限酵素で切断した(図1D)。
手順2
両者(図1Cと図1D)を混ぜ合わせ、さらにDNAリガーゼを加えて反応させた混合液を作製した。インスリン遺伝子を含むDNA断片はlacZ遺伝子の中の切断部位(図1Aの▲)に組み込まれる。このDNA断片がlacZ遺伝子の中に組み込まれると(図2)、lacZ遺伝子は分断されて正常なβガラクトシダーゼを合成できなくなる。
手順2を終えた混合液中には、図2で示すインスリン遺伝子を含むDNA断片が組み込まれたプラスミドと、DNA断片が組み込まれなかったプラスミドと、その他のDNA断片が混在する。
手順3
手順2でできた混合液を、大腸菌を含む培養液に加えた。手順3を終えた培養液中にはプラスミドを取り込んだ大腸菌と取り込まなかった大腸菌が混在する。
手順4
手順3でできた大腸菌を含む培養液を、アンピシリンとX-galを含む寒天培地上にまいて、培養した(結果1、図3)。また、手順3でできた大腸菌を含む培養液を、アンピシリンは含まないがX-galは含む寒天培地上にまいて、培養した(結果2)。アンピシリンは殺菌作用をもつ抗生物質であり、アンピシリンを含む培地ではアンピシリン耐性遺伝子があるプラスミドをもたない大腸菌は増殖できない。
X-galはβガラクトシダーゼの基質であり、βガラクトシダーゼが作用すると青色物質に変化する。このX-galの性質により、正常なβガラクトシダーゼを合成できる大腸菌はX-galを含む培地で増殖すると青色コロニーを形成し、正常なβガラクトシダーゼを合成できない大腸菌は白色コロニーを形成する。
結果1
培地上には多数の青色コロニーと白色コロニーが観察された(図3)。
結果2 $\fbox{X}$
- 問1 下線部1のプラスミドは、遺伝子組換えの実験において外来遺伝子の「運び屋」として利用される。この「運び屋」を何というか。最も適当なものを一つ選べ。$\fbox{ネ}$
- (1) カルス
- (2) ベクター
- (3) セントラルドグマ
- (4) ゲノム
- (5) ファージ
- (6) オペレーター
- 問2 下線部2の制限酵素はDNA中の6塩基(GAATTC)の配列を認識し、その部分でDNAの2本鎖を切断する。〔1〕、〔2〕に答えよ。
- 〔1〕図4は図2の一部分の拡大図で、制限酵素による切断部位の塩基配列を示す。$\fbox{a}$~$\fbox{f}$の塩基配列として最も適当なものを一つ選べ。$\fbox{ノ}$
- 〔2〕この制限酵素の認識配列は、何塩基あたりに一回現れると考えられるか。ただし、DNAの塩基配列は無秩序だとする。$\fbox{ハ}$~$\fbox{ヘ}$には数字をマークせよ。
$\fbox{ハ}$$\fbox{ヒ}$$\fbox{フ}$$\fbox{ヘ}$塩基あたりに一回
- 問3 結果1の青色コロニーを形成する大腸菌はどれか。最も適当なものを一つ選べ。$\fbox{ホ}$
- (1) インスリン遺伝子が組み込まれたプラスミドを取り込んだ大腸菌
- (2) インスリン遺伝子が組み込まれなかったプラスミドを取り込んだ大腸菌
- (3) プラスミドは取り込まなかったが、インスリン遺伝子を含むDNA断片を取り込んだ大腸菌
- (4) プラスミドもインスリン遺伝子を含むDNA断片も取り込まなかった大腸菌
- 問4 結果2の$\fbox{X}$で観察される青色と白色コロニーの数は、結果1と比較するとどのようになると考えられるか。最も適当なものを一つ選べ。$\fbox{マ}$
- (1) 青色と白色コロニーに変化はない。
- (2) 青色と白色コロニーの両方が増える。
- (3) 青色と白色コロニーの両方が減る。
- (4) 青色コロニーのみ増える。
- (5) 青色コロニーのみ減る。
- (6) 白色コロニーのみ増える。
- (7) 白色コロニーのみ減る。
- 問1 下線部1のプラスミドは、遺伝子組換えの実験において外来遺伝子の「運び屋」として利用される。この「運び屋」を何というか。最も適当なものを一つ選べ。$\fbox{ネ}$
- Ⅳ 遺伝について、問1~3に答えよ。
ある昆虫のさなぎの色は白色または黄色で、これらは独立した二つの遺伝子の相互作用によって決まる。二つの遺伝子の優性遺伝子をAとB、劣性遺伝子をaとbとする。遺伝子型がAaBbで白色のさなぎの成体とaaBbで黄色のさなぎの成体を交雑して生じた個体は、さなぎの白色と黄色の比率が5:3であった。
- 問1 遺伝子型AaBbとAaBbの個体を交雑すると、生じる個体のさなぎの色はどのような比率になるか。$\fbox{ミ}$~$\fbox{モ}$には数字をマークせよ。
白色:黄色=$\fbox{ミ}$$\fbox{ム}$:$\fbox{メ}$$\fbox{モ}$ - 問2 白色のさなぎの成体どうし(XとY)を交雑したところ、生じた個体のさなぎの色の比率が白色:黄色=7:1であった。XとYの遺伝子型として最も適当なものを選び$\fbox{ヤ}$に二つマークせよ。
- (1) AABB
- (2) AABb
- (3) AAbb
- (4) AaBB
- (5) AaBb
- (6) Aabb
- (7) aaBB
- (8) aaBb
- (9) aabb
- 問3 どのような個体と交雑しても白色のさなぎのみが生じる個体の遺伝子型は何種類あるか。$\fbox{ユ}$には数字をマークせよ。
$\fbox{ユ}$種類
- 問1 遺伝子型AaBbとAaBbの個体を交雑すると、生じる個体のさなぎの色はどのような比率になるか。$\fbox{ミ}$~$\fbox{モ}$には数字をマークせよ。