慶應義塾大学化学2012年第2問
次の文を読み、設問に答えよ。
アセチレンは常温で無色・無臭の気体であり、直線状分子である。(a)炭化カルシウムに水を作用させると発生する。
(b)アセチレンの25℃、$\underline{1.013\times10^5}$Paにおける燃焼熱は1300kJ/molであり、燃焼時に発生する熱が大きいため、金属の溶接に用いられる。
アセチレンに水を付加させると化合物Aを経て、化合物Bになる。このとき、硫酸水銀を触媒として用いるが、この廃液を海に流出した結果、生じたのが水俣病である。アセチレンにシアン化水素を反応させると、化合物Cができる。また、アセチレン2分子を重合させた化合物に触媒を用いて水素を付加すると、1,3‐ブタジエンが得られる。(c)化合物Cと1,3‐ブタジエンを混ぜて重合することにより得られる合成ゴムDは耐油性が大きく、耐油ホース、耐油パッキンなどに用いられる。
- 下線部(a)について、以下の間いに答えよ。
- (i)
- 1)対応する化学反応式を記せ。
- 2)炭化カルシウム350mgを十分な水と反応させたときに、アセチレンが標準状態で94.08mL生じたとする。使用した炭化カルシウムの純度を求めよ。ただし、反応は理論的に進行したものとする。
- (ii)片方の管にくびれがあるふたまた試験管を用いてアセチレンを生成させ、水上置換法により、試験管に捕集する方法でこの実験を行ってみよう。
- 1)炭化カルシウムはふたまた試験管のどちらの管に入れるべきか。以下の選択肢から選び、番号で答えよ。また、そのように考える理由を簡潔に記せ。
- (a)くびれがある方
- (b)くびれがない方
- (c)この実験ではどちらに入れてもかまわない
- 2)実験装置の概略図を描け。
- 3)炭化カルシウムと水はどちらを先に入れた方がよいか。以下の選択肢から選び、番号で答えよ。また、そのように考える理由を簡潔に記せ。
- (a)炭化カルシウム
- (b)水
- (c)この実験ではどちらを先に入れてもかまわない
- 4)試験管に捕集するとき、最初の1本は使用しないで捨てるが、これはなぜか。簡潔に説明せよ。
- 1)炭化カルシウムはふたまた試験管のどちらの管に入れるべきか。以下の選択肢から選び、番号で答えよ。また、そのように考える理由を簡潔に記せ。
- (i)
- 下線部(b)について、以下の間いに答えよ。なお, 熱化学方程式を書く際には、物質の状態がわかるように、化学式の後に気体ならば(g)、液体ならば(l)、固体ならば(s)を付記せよ。
- (i)対応する熱化学方程式を書け。
- (ii)表1に示す燃焼熱の値、表2に示す結合エネルギーの値を使って、以下の熱化学方程式、生成熱およびエネルギーを求めよ。なお、固体の炭素は黒鉛とし、その昇華熱は718kJ/molとせよ。
表1 燃焼熱 物質(状態) 燃焼熱(kJ/mol) $\text{H}_2$(g) 286 $\text{C}$(s) 394 $\text{CH}_4$(g) 891 表2 結合エネルギー 結合 結合エネルギー(kJ/mol) $\text{H}-\text{H}$ 432 $\text{C}-\text{H}$ 413 $\text{C}-\text{C}$ 366 - 1)水素を完全燃焼させる反応の熱化学方程式
- 2)アセチレンの生成熱
- 3)アセチレンを完全に原子に分解するときに必要なエネルギー
- 4) $\text{C}\equiv\text{C}$結合の結合エネルギー
- 化合物A、B、Cについて、その化合物名と構造式を記せ。
- 下線部(c)について、以下の間いに答えよ。
- (i)このような重合法を何というか。
- (ii)合成ゴムDは化合物Cと1,3‐ブタジエンの比率により耐油性に違いがある。耐油性を大きくするには、どちらの比率を大きくすればよいか。以下の選択肢から選び、番号で答えよ。また、そのように考える理由を簡潔に記せ。
- (a)化合物C
- (b)1,3‐ブタジエン
- (iii)ある合成ゴムDの元素分析を行ったところ、143mgの試料から標準状態で11.2mLの窒素ガスが発生した。この合成ゴムDにおける化合物Cと1,3‐ブタジエンの物質量比を求めよ。また、この合成ゴムDの分子量が50000であるとき、1分子のDに含まれる化合物Cの数は平均するといくらか。いずれも、導出過程を簡潔に記せ。