杏林大学化学2013年第2問

以下の文章を読み、問いに答えよ。[解答欄$\fbox{ア}$~$\fbox{ネ}$]

炭素、酸素、水素からなる有機化合物Aがある、Aに関連して(1)~(8)がわかっている。

  • (1)Aと不飽和一価カルボン酸Bの組成式は同一である。
  • (2)Bにはカルボキシル基以外の官能基はなく、その分子量は114である。
  • (3)Aに水酸化ナトリウムを加えて熱すると、多価カルボン酸Cのナトリウム塩、アルコールDとアルコールEが生成される。
  • (4)DはEとアルコールFが脱水縮合したエーテルの構造異性体であり、その炭化水素鎖に枝分かれはない。
  • (5)Fに濃硫酸を加えて170℃に加熱するとエチレンが生成される。
  • (6)Eを酸化すると得られる有機化合物Gの分子量はAの1/4程度である。
  • (7)Gは酢酸カルシウムの乾留によっても生成される。
  • (8)Cの異性体であるHとIは各々シスとトランスの関係にある。

これらの条件をもとに、Aの構造を決定する過程を順序だてて考えてみる。

  • 問1 Bの分子量から推定すると、カルボキシル基を除いたBの炭素数は$\fbox{ア}$であるので、その組成式は$\text{C}_{\fbox{イ}\fbox{ウ}}\text{H}_{\fbox{エ}\fbox{オ}}\text{O}_{\fbox{カ}\fbox{キ}}$となる。$\fbox{ア}$~$\fbox{キ}$にあてはまる数値を選べ。(組成式で原子数が1の場合は$\fbox{0}$$\fbox{1}$と記入)
  • 問2 有機化合物Gは$\fbox{ク}$なので、Eは$\fbox{ケ}$であるとわかる。Gは$\fbox{コ}$を合成するときにも副産物として生成される。$\fbox{ク}$ $\fbox{ケ}$ $\fbox{コ}$を各々、解答群から選べ。
    • $\fbox{ク}$
      • (1)アセトアルデヒド
      • (2)ホルムアルデヒド
      • (3)プロピオン酸
      • (4)無水酢酸
      • (5)ギ酸
      • (6)エチレン
      • (7)アセチレン
      • (8)アセトン
      • (9)ジエチルケトン
      • (0)メタノール
    • $\fbox{ケ}$
      • (1)メタノール
      • (2)エタノール
      • (3)1-プロパノール
      • (4)2-プロパノール
      • (5)1-ブタノール
      • (6)2-ブタノール
      • (7)1-ペンタノール
      • (8)2-ペンタノール
      • (9)1-ヘキサノール
      • (0)2-ヘキサノール
    • $\fbox{コ}$
      • (1)塩化ベンゼンジアゾニウムからスダンI色素
      • (2)尿素から尿素樹脂
      • (3)ビニルアセチレンからブタジエン
      • (4)エチレンからベンゼン
      • (5)酢酸ビニルからビニロン
      • (6)クメンからフェノール
      • (7)アセチレンからアクリロニトリル
      • (8)高級不飽和脂肪酸から硬化油
      • (9)$p$-ビニルベンゼンから陽イオン交換樹脂
      • (0)フェノールからアジピン酸
  • 問3 Aの分子式は、$\text{C}_{\fbox{サ}\fbox{シ}}\text{H}_{\fbox{ス}\fbox{セ}}\text{O}_{\fbox{ソ}\fbox{タ}}$となる。 $\fbox{サ}$~$\fbox{タ}$にあてはまる数値を選べ。(原子数が1の場合は$\fbox{0}$$\fbox{1}$と記入)
  • 問4 EとFが脱水縮合したエーテルの構造異性体であるから、Dの分子量は$\fbox{チ}$$\fbox{ツ}$である。この分子量から考えられる炭化水素鎖を基にすると、Dとして$\fbox{テ}$種類の構造異性体の可能性があることがわかる。ただし光学異性体は考えないとする。またA、D、Eの分子式からCとして可能性がある分子が推定できるので、Iは$\fbox{ト}$と考えられる。$\fbox{チ}$~$\fbox{テ}$には適切な数値を選び、$\fbox{ト}$は下記の解答群から適切なものを選べ。
    • (1)フタル酸
    • (2)シュウ酸
    • (3)イソフタル酸
    • (4)アジピン酸
    • (5)フマル酸
    • (6)クエン酸
    • (7)リンゴ酸
    • (8)マレイン酸
    • (9)グルタミン酸
    • (0)酒石酸
  • 問5 Aの構造を決定するためにはアルコールDが問4で考えられたどの異性体であるか確定しなければならない。そこでDに対して何種類かの実験を行うことにした。表に、実施する実験と「期待される結果」をまとめた。推定された異性体の化学的性質に基づいて、これらの実験と期待される結果を重複しないようにⅠ~Ⅳに分類した。
    • Ⅰ どの異性体の場合でも「期待される結果」が常に生じる実験
    • Ⅱ どの異性体の場合でも「期待される結果」が決して生じない実験
    • Ⅲ 「期待される結果」が得られたときにはDの構造が確定する実験
    • Ⅳ 「期待される結果」が得られたときには2通りの可能性があり、他に適切な1つの実験と組み合わせることによりDの構造が決定できる実験
    このように分類するとⅡに相当する実験は(a)で、Ⅲに相当する実験は(b)である。Ⅳに相当するのは(C)の場合だけであり、(C)の他に(d)を実施してその期待される結果が得られるかどうかでDが確定できる。(a)~(d)の各々に該当する全ての実験と「期待される結果」の組み合わせを(1)~(9)から選べ。(d)は必要であれば(a)(b)と同じものを選んでよい。
    • (a)$\fbox{ナ}$
    • (b)$\fbox{ニ}$
    • (c)$\fbox{ヌ}$
    • (d)$\fbox{ネ}$
    実施する実験と期待される結果
    実験と結果
    の番号
    実験の内容
    期待される結果
    (1)
    OH基を酸化するアルデヒドを経てカルボン酸が生成する
    (2)
    OH基を酸化するケトンが生成する
    (3)
    OH基を酸化する酸化されない
    (4)
    金属ナトリウムを加える水素が発生する
    (5)
    臭素水を加える臭素水の褐色が消失する
    (6)
    ヨウ素と水酸化ナトリウムを加える黄色のヨードホルムが生成する
    (7)
    水と混合する水に任意の割合で溶解する
    (8)
    酢酸と濃硫酸を加え熱するエステルが生成する
    (9)
    平面偏光に対する性質を調べる(注)不斉炭素の存在が示される
    注:溶液中での偏光の回転を調べることにより不斉炭素の有無を知る実験方法