日本医科大学生物2013年第1問
脊椎動物の胚を構成する細胞群は、$\fbox{あ}$期に、外胚葉、中胚葉、内胚葉の3つの胚葉に分けられるようになる。その後、これらの胚葉をもとに、目や皮膚などの器官が形成されるが、その過程ではさまざまな形づくりのしくみがはたらいている。ニワトリ胚の皮膚を構成する表皮は、真皮からの誘導作用を受けながら、翼では羽毛型ケラチンを、あしではうろこ型ケラチンをつくるように分化する。この分化の過程ではたらく誘導のしくみについて調べるために、以下の各実験を行った。ただし通常、細胞が分化しても核内の遺伝子は変化せず、分化にともなって(a)多くの遺伝子の中から、特定の遺伝子だけが発現されるようになると考えられている。
【実験1】受精後5日日から12日目までのニワトリ胚(5~12日胚)から、将来翼になる部分Wの皮膚と、将来あしになる部分Lの皮膚を切り出した。それぞれの皮膚の表皮を真皮から分離し、いろいろな組み合わせで表皮と真皮を再び結合させた。このようにしてつくった皮膚(再結合皮膚)を、培養液Mの中で37℃に保って培養した。培養前の表皮はいずれも未分化で、ケラチンをつくっていなかった。2週間後、表皮が何に分化したのかを判定するために、分化した表皮がつくるようになったケラチンの型を調べた。その実験結果の一部を、下表に示す。これらの結果から、$\fbox{い}$の真皮が、表皮のうろこへの分化を誘導するはたらきをもつと考えられた。
表 ニワトリ胚の再結合における表皮の分化番号 | ケラチンの型 | ||
$\fbox{い}$の真皮のみで合成され、それ以外の皮膚の部分では合成されないタンパク質を探したところ、(b)タンパク質Pとタンパク質Qの2種類のタンパク質が見つかった。そこで、5日胚のWから取り出した表皮をコラーゲンでつくったゲルの上にのせ、タンパク質Pを充分量加えた培養液Mの中で37℃に保って培養した。2週間後、表皮はうろこ型のケラチンをつくるように分化した。これに対し、タンパク質Pの代わりにタンパク質Qを培養液Mに加えて同様の培養を行った場合には、5日胚のWから取り出した表皮は羽毛型のケラチンをつくるように分化した。
- 問1 $\fbox{あ}$にあてはまる語句を以下のA群より、$\fbox{い}$にあてはまる語句を以下のB群より、それぞれ1つずつ選び、記号で答えなさい。
A群:- (ア) 桑実胚
- (イ) 胞胚
- (ウ) 原腸胚
- (エ) 神経胚
- (オ) 尾芽胚
- (ア) 5日胚のW
- (イ) 5日胚のL
- (ウ) 9日胚のL
- (エ) 12日胚のL
- 問2 真皮は、表皮とともに皮膚を構成している。(1)真皮はどの組織に分類されるか。以下のA群より1つ選び、記号で答えなさい。(2)真皮と同じ組織に分類され、かつ同じ胚葉から形成されるものを、以下のB群よりすべて選び、記号で答えなさい。
A群:- (ア) 上皮組織
- (イ) 結合組織
- (ウ) 筋組織
- (エ) 神経組織
- (ア) 胃の結合組織
- (イ) 角膜
- (ウ) 血液
- (エ) 骨格筋
- (オ) すい臓の上皮
- (カ) 脊髄
- (キ) 脊椎の骨
- (ク) 網膜
- 問3 下線部(a)のような遺伝子の発現を、何的遺伝子発現というか。( )内に漢字2文字を入れて答えなさい。また、細胞が分化しても核内の遺伝子が変化しないことを示す根拠となるものを、以下の(ア)~(カ)より2つ選び、記号で答えなさい。
- (ア) メンデルが行った、エンドウの交配実験の結果
- (イ) ガードンが行った、アフリカツメガエルの核移植実験の結果
- (ウ) モーガンらが作成した、キイロショウジョウバエの染色体地図
- (エ) シュペーマンが行った、イモリ神経胚原基間の交換移植実験の結果
- (オ) ウィルムットらによりドリーと名づけられた、クローンヒツジの誕生
- (カ) フォークトが局所生体染色法を使って作成した、イモリ胚の原基分布図
- 問4 表皮がうろこへと分化する過程で起こる誘導について、以下の(1)と(2)の結論を導いた。実験1の結果から、結論が正しいと判断される場合には◯を、誤りと判断される場合には×を、それぞれ( )内につけなさい。また、その根拠は表中の何番と何番の再結合皮膚の実験結果を比較することにより得られるか。以下の(ア)~(シ)より、最も適切なものをそれぞれ2つずつ選び、記号で答えなさい。
- (1) 将来あしになる部分の真皮では、発生が進むと、表皮をうろこへと誘導する力が弱くなる。
- (2) 将来翼になる部分の表皮では、発生が進むと、真皮からの誘導を受けてうろこへと分化する力が弱くなる。
- (ア) 1番と2番
- (イ) 1番と4番
- (ウ) 2番と3番
- (エ) 2番と4番
- (オ) 3番と4番
- (カ) 4番と5番
- (キ) 4番と6番
- (ク) 4番と7番
- (ケ) 5番と6番
- (コ) 5番と7番
- (サ) 6番と7番
- (シ) 7番と8番
- 問5 実験2で用いたタンパク質Pは、細胞膜にある受容体に結合してはたらくものとする。実験1と実験2の結果から、タンパク質Pの受容体をもたないと予想される表皮はどれか。以下の(ア)~(オ)より1つ選び、記号で答えなさい。
- (ア) 5日胚のW
- (イ) 5日胚のL
- (ウ) 7日胚のW
- (エ) 9日胚のW
- (オ) 9日胚のL
- 問6 下線部(b)のいずれか1種類のタンパク質は、ホメオティック遺伝子からつくられていた。(1)ホメオティック遺伝子からつくられるタンパク質はどちらか。( )内にアルファベットを入れて答えなさい。(2)このタンパク質は、$\fbox{い}$の正常な発生過程ではどこに結合してはたらくのか。以下の(ア)~(ク)より最も適切なものを1つ選び、記号で答えなさい。
- (ア) 表皮細胞の細胞膜にある受容体
- (イ) 真皮細胞の細胞膜にある受容体
- (ウ) 表皮細胞の核にあるDNAの特定の塩基配列
- (エ) 真皮細胞の核にあるDNAの特定の塩基配列
- (オ) 表皮細胞の核にあるRNAの特定の塩基配列
- (カ) 真皮細胞の核にあるRNAの特定の塩基配列
- (キ) 表皮細胞の細胞質にあるタンパク質の特定のアミノ酸配列
- (ク) 真皮細胞の細胞質にあるタンパク質の特定のアミノ酸配列
- 問7 動物の生体内において、細胞外に分泌され、細胞膜にある受容体に結合してはたらく物質はどれか。以下の(ア)~(カ)よりあてはまるものを2つ選び、記号で答えない。
- (ア) アセチルコリン
- (イ) アミラーゼ
- (ウ) インスリン
- (エ) エクジステロイド
- (オ) エストロゲン
- (カ) ヒストン
- 問8 以下の(ア)~(カ)のうち、ニワトリの翼に相同な器官および相似な器官はどれか。最も適切なものをそれぞれ1つずつ選び、記号で答えなさい。
- (ア) クジラの胸びれ
- (イ) クラゲの触手
- (ウ) サメの背びれ
- (エ) ハエのはね
- (オ) バッタのあし
- (カ) ヒトのあし