日本医科大学生物2012年第1問

植物を用いた交配実験に関する下記の文章を読み、各問いに答えなさい。

ある植物には、赤花をつける個体と白花をつける個体とがある。赤花の細胞に含まれる色素の合成には2種類の酵素(酵素A、酵素B)が必要であり、これらの酵素がともに正常に働くと花は赤くなる。しかし、どちらか片方の酵素、あるいは両方の酵素が正常に働かないと花は白くなる。

赤花をつける純系Pと、白花をつける3種類の純系(純系Q、純系R、純系S)がある。純系Pでは、2種類の酵素はともに正常に働くが(正常型)、白花の純系では、2種類のうちいずれか1つが、遺伝子に超きた突然変異のために酵素として働くことができない(変異型)。突然変異が起きたDNA上の位置は純系ごとに異なり、3種類の純系は、それぞれが異なる変異型酵素をつくる。また、これら3つの(1)変異型酵素のうちの1つは、酵素として働かないだけでなく、細胞内で同じ酵素の正常型がつくられると、正常型酵素の働きを完全に阻害する。一方、他の変異型酵素には、そのような阻害作用はない。下表には純系間の交配(交配1~交配6)で得られた雑種第一代(F1)について、正常型酵素の産生の有無と花の色が示されている。各交配で得られたF1では、すべての個体で同じ結果であった。

この植物の体細胞には12本の染色体があり、これらの染色体は、6対の相同染色体からなる。酵素Aの遺伝子と酵素Bの遺伝子は、このうちの1対の相同染色体に連鎖して存在し、対をなす2本の染色体上の遺伝子はともに発現している。なお、純系の個体は、酵素Aの遺伝子についても、酵素Bの遺伝子についても、ホモ接合体である。また、交配の過程で新たな突然変異は起きないものとする。

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  • 問1 下線部(1)の変異型酵素をつくる純系の記号を答えなさい。
  • 問2 表中の(あ)にあてはまる花の色を答えなさい。
  • 問3 白花をつける3種類の純系のうちの2つでは、同じ酵素が働きを失っている。(i) それらの純系の記号と、(ii) 働きを失っている酵素の記号を、それぞれ答えなさい。また、(iii) これらを判断する上で最も重要な結果が得られている交配の番号を1つ答えなさい。
  • 問4 交配6のF1を自家受精して得られた雑種第二代(F2)には、酵素A、酵素Bともに変異型のみをつくる個体が(2)ある割合で含まれていた。このような個体と交配6のF1とを交配(これを交配7とする)したところ、赤花をつける個体と白花をつける個体が1:19の比で生じた。これらの結果が得られたのは、酵素Aの遺伝子と酵素Bの遺伝子との間で、ある頻度で組換えが起きたためである。
    • (i) 酵素Aの遺伝子と酵素Bの遺伝子との間の組換え価は何%か、整数で答えなさい。
    • (ii) 交配7で得られた個体のうち、酵素A、酵素Bともに変異型のみをつくる個体の割合はどれだけか。分数で答えなさい。
    • (iii) 下線部(2)の割合を分数で答えなさい。
    • (iv) もし、酵素Aの遺伝子と酵素Bの遺伝子が連鎖していない場合には、交配7で得られる個体のうち、赤花をつける個体の割合はどれだけになるか。分数で答えなさい。
  • 問5 この植物の卵細胞について、染色体の構成を正しく表しているものを、以下の(ア)~(シ)より1つ選び、記号で答えなさい。
    • (ア)$n=2$
    • (イ)$n=3$
    • (ウ)$n=6$
    • (エ)$n=12$
    • (オ)$2n=4$
    • (カ)$2n=6$
    • (キ)$2n=12$
    • (ク)$2n=24$
    • (ケ)$3n=6$
    • (コ)$3n=9$
    • (サ)$3n=18$
    • (シ)$3n=36$