埼玉医科大学生物2013年第2問
ヒトのからだでは、外界からの刺激を受けて$\fbox{27}$が興奮し、その興奮が感覚神経によって中枢に伝えられ、感覚が生じる。中枢で多くの情報が統合された結果、運動神経を通じて$\fbox{28}$に興奮が伝えられて、反応や行動が引き起こされる。感覚情報を統合して反応を指令するのは$\fbox{29}$の働きである。$\fbox{29}$は左右の半球に分かれ、それぞれの半球が反対側の身体を支配している。すなわち、感覚神経も運動神経も中枢のどこかの部位で交さして情報を伝えている。$\fbox{29}$やその他の中枢神経と末梢を連絡するニューロンのつながりと経路を、伝導路と呼ぶ。
随意運動の伝導路は、$\fbox{29}$の$\fbox{30}$にあるニューロンの軸索が脳の$\fbox{31}$で交さして反対側に行き、反対側の脊髄の$\fbox{32}$質を下行して脊髄の運動ニューロンとシナプスを形成する。運動ニューロンの軸索は脊髄から$\fbox{33}$根を通って脊髄神経として出て行き、骨格筋とシナプスを形成する。
一方、$\fbox{27}$から感覚情報が伝えられたとき、$\fbox{29}$で統合が行われる前にすばやい反応が生じる場合がある。この反応を反射と呼ぶ。 例えば、足で画鋲を踏んだときに、瞬間的に足を上げる反応が生じる。これは$\fbox{34}$反射と呼ばれる脊髄反射の一種である。このとき、足の裏の痛みを感じる$\fbox{27}$が刺激されて興奮し、この興奮を伝える感覚ニューロンが脊髓の$\fbox{35}$根を通って脊髓に入り、脊髄内の連動ニューロンを興奮させて足の筋肉が収縮する。このように反射を生じさせる短い神経経路は$\fbox{36}$と呼ばれる。また、感覚ニューロンは上行して$\fbox{29}$の皮膚感覚の$\fbox{37}$にも興奮を伝えるので、足の裏が刺激を受けたという感覚が、反射のあとで生じる。
よく知られた別の脊髄反射の例として、ひざ関節のすぐ下をたたくと足が跳ね上がる$\fbox{38}$反射がある。この場合は、ももの筋肉が打撃により瞬間的に引き伸ばされることで、筋肉内の$\fbox{39}$が刺激され、$\fbox{36}$を経由してこの筋肉が収縮するのである。この場合も、反射に遅れて$\fbox{39}$からの興奮が$\fbox{29}$にも伝えられて、筋肉が引き伸ばされたことがわかる。
こうした皮膚や$\fbox{39}$からの感覚情報が$\fbox{29}$の$\fbox{37}$に伝えられる伝導路には、感覚の種類によって異なる特徴がある。皮膚の痛みを感じる$\fbox{27}$からの感覚ニューロン(一次感覚ニューロン)の軸索は、脊髄に入るとすぐに次のニューロン(二次感覚ニューロン)とシナプスを形成する。二次感覚ニューロンは脊髄の反対側に軸索を伸ばし、反対側(右側から入った場合は左側)の$\fbox{32}$質を上行して、中継点である脳の$\fbox{40}$に到達する。ここで三次感覚ニューロンとシナプスを形成し、三次感覚ニューロンの軸索が$\fbox{37}$に興奮を伝える。すなわち、この伝導路では脊髄で交さが行われる。他方で、$\fbox{39}$からの伝導路はこれとは異なり、一次感覚ニューロンの軸索は脊髄に入るとそのまま同じ側(右側から入った場合は右側)の$\fbox{32}$質を上行し、脳の$\fbox{31}$に到達すると、ここで二次感覚ニューロンとシナプスを形成する。二次感覚ニューロンは軸索を反対側に伸ばし、反対側を上行して$\fbox{40}$で三次感覚ニューロンとシナプスを形成する。三次感覚ニューロンの軸索が$\fbox{37}$に興奮を伝える。すなわち、この伝導路では、交さは$\fbox{31}$で行われるのである。
眼からの視覚情報が$\fbox{29}$に伝えられる伝導路にはやはり交さ(視神経交さ)がみられるが、皮膚の$\fbox{27}$や$\fbox{39}$の伝導路と異なり、左右の眼からの情報がそれぞれすべて反対側の半球の視覚の$\fbox{37}$に到達するのではない。図1は両眼の網膜からの視覚伝導路のうち、網膜の左半分からのものを示している。左右のそれぞれの眼で見える範囲(視野)は、実際にはほとんど重なっているが、図では説明のために分けて描かれている。両眼で1つの物体を注視するときには、図の視野中心にその物体が置かれ、その像は両眼の網膜の中心部の$\fbox{41}$の部位に結ばれる。両眼とも視野の右半分にある物体はレンズを通して網膜の左半分に像を結ぶが、右眼の網膜の左半分からの視神経は交さし、左眼の網膜の左半分からの視神経は交させずに、両方とも左側の$\fbox{40}$に到達し、ここで次のニューロンとシナプスを形成する。このニューロンが視野の右半分にある像の情報を$\fbox{29}$の左半球の視覚の$\fbox{37}$に伝えるのである。同様にして、視野の左半分にある物体の像は右半球に伝えられる。視神経の交さの仕方がこのようになっているので、ア図1のa~cの部位で伝導路に障害が生じると、それに対応して特異的な視野の欠損が生じる。
- 問1 文章中の$\fbox{27}$~$\fbox{41}$に入る語として最も適切なものを、次の語群2の(1)~(24)の中から1つずつ選べ。同じ解答番号には同じ語が入るものとする。2桁の番号を選んでマークする場合には、十の位と一の位の数字を同じ解答番号にマークせよ(例えば(10)は(1)と(0)をマークする)。ただし、(11)、(21)、(22)はない。
語群2- (1) 運動野
- (2) 延髄
- (3) 黄斑
- (4) 灰白
- (5) 感覚野
- (6) 間脳
- (7) 筋紡錘
- (8) 屈筋
- (9) 効果器
- (10) しつがい腱
- (12) 受容器
- (13) 小脳
- (14) 伸筋
- (15) 大脳
- (16) 中脳
- (17) 跳躍伝導
- (18) 背
- (19) 白
- (20) 反射弓
- (23) 腹
- (24) 盲斑
- 問2 事故などで脊髄が損傷を受けると、伝導路が切断されたことにより運動と感覚の障害が生じる。足を支配している脊髄神経が発する部位よりも上で、脊髄の左側の半分だけが切断されたとする。このとき、次の(A)~(E)が右足だけで起こる場合には(1)、左足だけで起こる場合には(2)、両足ともに起こる場合には(3)、両足ともに起こらない場合には(4)をそれぞれ$\fbox{42}$~$\fbox{46}$にマークせよ。
- (A) 意識して足の筋肉を動かせる。$\fbox{42}$
- (B) $\fbox{38}$反射が起こる。$\fbox{43}$
- (C) 足のある筋肉が引き伸ばされたときに、引き伸ばされたことがわかる。$\fbox{44}$
- (D) 足が針で刺されたときに、$\fbox{34}$反射が起こる。$\fbox{45}$
- (E) 足が針で刺されたときに、痛みを感じる。$\fbox{46}$
- 問3 下線部アに関して、図1のa~cで障害が生じたとき、左右それぞれの眼の見え方として最も適切なものを、下の(1)~(4)のうちから1つずつ選び、$\fbox{47}$~$\fbox{52}$にマークせよ。同じものを何度選んでもよい。
- aの障害のとき:左眼 $\fbox{47}$ 右眼 $\fbox{48}$
- bの障害のとき:左眼 $\fbox{49}$ 右眼 $\fbox{50}$
- cの障害のとき:左眼 $\fbox{51}$ 右眼 $\fbox{52}$
- (1) 全視野が見える。
- (2) 全視野が見えない。
- (3) 視野の右半分だけが見える。
- (4) 視野の左半分だけが見える。