愛知医科大学生物2013年第3問

図1の(a)はウシのすい臓から分泌されるリポヌクレアーゼの三次構造を表している。リボヌクレアーゼはRNAを加水分解する消化酵素で、124個のアミノ酸からなる1本のポリペプチド鎖が折りたたまれてできている。このリボヌクレアーゼを8M尿素と還元剤のβ-メルカプトエタノールで処理すると、図1の(b)のように完全にほどけてランダムコイルと呼ばれる1本のポリベプチド鎖を生じ、酵素活性が失われる。リボヌクレアーゼは4ヶ所にあるS-S結合によって架橋されているが、β-メルカプトエタノール処理によりS-S結合が還元されて切れ、8M尿素により立体構造やらせん構造が失われて酵素タンパクはランダムコイルになる。ところが、尿素とβ-メルカプトエタノールを除くと、ランダムコイルは図1(a)と同じ三次構造に折りたたまれて、ほぼ100%酵素活性を取りもどすのである。一方、還元したリボヌクレアーゼを8M尿素の中で酸化してS-S結合が形成されてから尿素を除くと、大部分のSH基が誤った相手とS-S結合を形成するために、得られたリボヌクレアーゼの酵素活性は本来のものの1%しかない。以下の各問に答えよ。なお、図中の数字は124個のアミノ酸のうち、SH基を側鎖にもつアミノ酸の配置を示している。また、図1(a)の●―●はS-S結合を表している。

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  • 問1. タンパク質によっては四次構造をもつものがある。四次構造をもつタンパク質の名称を1つあげよ。また、タンパク質の四次構造とは何か簡単に説明せよ。
  • 問2. リボヌクレアーゼのようにS-S結合によって架橋されているタンパク質には、架橋されていないタンパク質に比べて、どのような利点があると考えられるか。
  • 問3. S-S結合の形成に必要なSH基を側鎖にもつアミノ酸の名称を記せ。
  • 問4. 図1の矢印(b)→(a)の変化は「再生」と呼ばれる。図1の矢印(a)→(b)の変化は何と呼ばれているか。
  • 問5. 下線部について、反応液中から低分子のβ-メルカプトエタノールと尿素を除去する方法を述べよ。
  • 問6. 1分子のリボヌクレアーゼにはSH基が全部で8個含まれている。8個のSH基を使えば4つのS-S結合が形成できる。ランダムコイルを尿素の中で酸化してS-S結合を形成させた場合のように、1分子のリボヌクレアーゼの8個のSH基を自由に組み合わせて4つのS-S結合を形成すると、可能な組み合わせは全部で何通りになるか。
  • 問7. ランダムコイルの状態から活性型のリボヌクレアーゼが再生されるとき、複数のS-S結合の組み合わせが可能なのに、実際には1通りの組み合わせしかできない。この結果はポリペプチド鎖がランダムコイルの状態から特有の立体構造に折りたたまれた後に、近傍のSH基の間でS-S結合ができると考えれば説明できる。この実験からタンパク質の折りたたみに関する、ある重要な一般原理が見出された。タンパク質の折りたたみに関する重要な一般原理とは何か、記せ。
  • 問8. 図1(b)のランダムコイルの状態で失われているのは、リボヌクレアーゼの一次構造、二次構造、三次構造のうちどれか。次の(ア)~(キ)より1つ選び、記号で答えよ。
    • (ア) 一次構造のみ失われている
    • (イ) 二次構造のみ失われている
    • (ウ) 三次構造のみ失われている
    • (エ) 一次構造と二次構造が失われている
    • (オ) 二次構造と三次構造が失われている
    • (カ) 一次構造と三次構造が失われている
    • (キ) 一次構造、二次構造、三次構造とも失われている
  • 問9. リボヌクレアーゼのポリペプチド鎖には両端がある。1番目のアミノ酸側の端と124番目のアミノ酸側の端はそれぞれどのようになっているか。端がアミノ基の場合は$-\text{NH}_2$と、端がカルボキシル基の場合は$-\text{COOH}$と答えよ。
  • 問10. インスリンはプロインスリン(図2)の形で合成され、プロインスリンから連結ペプチド(図2の点線の部分)が切除されると活性をもつインスリンに変わる。このインスリンをリボヌクレアーゼと同じように8M尿素と還元剤のβ-メルカプトエタノールで処理すると、3ヶ所のS-S結合が切れて2本のポリペプチド鎖に分かれる。しかし、インスリンの場合は8M尿素とβ-メルカプトエタノールを除いても、2~3%しか本来の形に再生しない。インスリンはなぜ再生しないのか、その理由を記せ。
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