愛知医科大学化学2013年第2問
鉄や銅などの金属元素は( 1 )が小さく、価電子を放出しやすい性質をもっている。金属の単体では、原子の価電子は離れやすく、その価電子は特定の原子に所属することなく、金属全体を動き回ることができるようになる。この電子を( 2 )と呼ぶ。( 2 )のために金属は( 3 )伝導性、( 4 )伝導性が大きい。また、( 2 )による結合には方向性がないため、どのような形になっても結合が壊されにくく、そのため金属は( 5 )性、( 6 )性に富む。
鉄の単体は湿った空気中では、主成分が( 7 )である赤さびを生成する。一方、空気中で強熱すると、主成分が( 8 )である黒さびを生じる。黒さびは鉄の表面を覆って内部を保護し、腐食が進まないようにしている。( 9 )とは腐食しやすい金属の表面を他の金属で覆い、内部を保護する方法である。鉄板に( 10 )を( 9 )したものはトタンと呼ばれ、鉄板に( 11 )を( 9 )したものはブリキと呼ばれる。
ある金属元素に他の金属元素または非金属元素を混合したものを合金という。合金は腐食防止の有力な方法の一つである。また、合金にすることによって、単体では得られない優れた特性を持った金属材料を得ることができる。銅の合金は紀元前から斧・剣・壺などに用いられており、この合金は( 12 )と呼ばれ、銅$\text{Cu}$とスズ$\text{Zn}$からなる。その他に銅を含む合金としては、亜鉛$\text{Zn}$を混合した黄銅、ニッケル$\text{Ni}$を混合した白銅、亜鉛$\text{Zn}$とニッケル$\text{Ni}$を混合した洋銀などがある。また、貨幣である銀貨に用いられる銀$\text{Ag}$と銅$\text{Cu}$の合金(以下、銀貨用合金と記す)などもある。
黄銅$(\text{Cu-Zn})$、白銅$(\text{Cu-Ni})$、銀貨用合金$(\text{Ag-Cu})$をそれぞれ硝酸に溶解し、水で希釈した水溶液が3つの別々の容器に入っている。どの容器の水溶液がどの合金を溶解したものか不明なため、以下のような化学操作を行い、各々の容器内の水溶液がどの合金を溶解したものかを調べた。
〔操作1〕別々の容器に入っている水溶液をそれぞれ<X>、<Y>、<Z>と名付け、それぞれの水溶液からその一部ずつを取り分けた。取り分けた水溶液にそれぞれ塩化ナトリウム水溶液を加えたところ、<X>だけに白色沈殿が生じた。
〔操作2〕<X>、<Y>、<Z>の残りの水溶液にそれぞれ硫化水素を通じたところ、<X>、<Y>、くZ>すべての水溶液に黒色沈殿が生じた。沈殿をろ過し、ろ液をそれぞれ<X-1>、<Y-1>、<Z-1>と名付けた。
〔操作3〕ろ液<X-1>、<Y-1>、<Z-1>を加熱し、硫化水素を追い出した水溶液を、それぞれ<X-2>、.<Y-2>、<Z-2>と名付けた。
〔操作4〕<X-2>、<Y-2>、<Z-2>の水溶液からそれぞれ一部を取り分け、取り分けた水溶液にそれぞれアンモニア水を加えたところ、<Y-2>、<Z-2>から沈殿が生じた。さらに、それぞれにアンモニア水を加えたところ、<Y-2>、<Z-2>から生じた沈殿はいずれも溶解した。
〔操作5〕<X-2>、<Y-2>、<Z-2>の残りの水溶液にそれぞれ水酸化ナトリウム水溶液を加えたところ、<Y-2>、<Z-2>から沈殿が生じた。さらに、それぞれに水酸化ナトリウム水溶液を加えたところ、( A )。
- 問1.( 1 )~( 12 )に当てはまる適当な語句または物質の名称を記せ。
- 問2.<X>、<Y>、<Z>はそれぞれどの合金を溶解したものか。元素記号で記せ。
- 問3.〔操作4〕において<Y-2>の水溶液から沈殿が生じた変化をイオン反応式で表せ。
- 問4.〔操作4〕において<Y-2>から生じた沈殿が溶解した変化をイオン反応式で表せ。
- 問5.( A )に入る文として適当なものはどれか。次の(ア)~(エ)から選び、記号で記せ。
- (ア)<Y-2>から生じた沈殿だけ溶解した
- (イ)<Z-2>から生じた沈殿だけ溶解した
- (ウ)<Y-2>、<Z-2>から生じた沈殿はいずれも溶解した
- (エ)<Y-2>、<Z-2>から生じた沈殿はいずれも溶解しなかった