愛知医科大学化学2012年第2問

次の文章を読み、(1)~(7)に答えよ。
ヨウ素$\text{I}_2$は、常温で黒紫色の固体であるが、加熱すると昇華して紫色の気体になる。水素$\text{H}_2$とヨウ素の混合気体を密開容器の中で高温に保つと、無色のヨウ化水素$\text{HI}$が時間とともに生成してくる。この反応は$\eqref{aa}$式で表される可逆反応であり、あるところまでヨウ化水素が生成すると、水素とヨウ素からヨウ化水素が生成する速度と、ヨウ化水素が分解して水素とヨウ素が生じる速度とが等しくなり、見かけ上は反応が止まった状態になる。このような状態を平衡状態という。
\[ \text{H}_2+\text{I}_2\leftrightarrows 2\text{HI}\tag{A}\label{aa}\]
ここで、ヨウ化水素の生成反応を正反応、ヨウ化水素の分解反応を逆反応とする。
[実験]水素1.00 molとヨウ素1.00 molの混合気体を容積10.0 Lの密開された反応容器に入れて、温度を600 Kに保ったところ、$\eqref{aa}$式に示す反応が進み、平衡状態に達した。このとき、反応容器の中の水素とヨウ素のモル濃度が反応開始時と比べ、それぞれ80.0%ずつ減少していた。
なお、以下の問題を解くに当たり、必要な場合には、$\text{H}-\text{H}$、$\text{I}-\text{I}$および$\text{H}-\text{I}$の結合エネルギーとして、それぞれ$432\text{kJ}/\text{mol}$、$149\text{kJ}/\text{mol}$および$295\text{kJ}/\text{mol}$を用いよ。また、水素、ヨウ素およびヨウ化水素のモル濃度(mol/L)は、それぞれ$[\text{H}_2]$、$[\text{I}_2]$および$[\text{HI}]$を用いて表すものとする。
  • (1) $\eqref{aa}$式の反応について、次の(a)~(d)に答えよ。
    • (a) 水素とヨウ素を1.00molずつ反応させたときの正反応の反応熱は何$\text{kJ}$か。整数で答えよ。
    • (b) 正反応は発熱反応か、それとも吸熱反応かを答えよ
    • (c) 正反応の反応速度と速度定数を$v$と$k$、逆反応の反応速度と速度定数を$v’$と$k’$としたとき、正反応および逆反応の反応速度を、速度定数を用いて表せ。
    • (d) この反応の平衡定数$\text{K}$を$k$、$k’$を用いて表せ。
  • (2) [実験]の反応において、次の(a)および(b)の正反応の反応速度を、速度定数$k$を用いて表せ。答えに数値が含まれる場合は、数値は有効数字2桁で記せ。
    • (a) 反応開始直後の反応速度$v_0$
    • (b) 平衡状態における反応速度$v_e$
  • (3) [実験]の反応において、反応開始から$t$秒後のヨウ化水素のモル濃度は$n~\text{mol/L}$であった。反応開始から$t$秒間の水素の平均反応速度$\text{mol/(L}\cdot\text{s)}$を求めよ。
  • (4) [実験]の反応が平衡状態にあるとき、容器内のヨウ化水素の物質量は何 molか。有効数字2桁で答えよ。
  • (5) [実験]の反応の平衡定数$\text{K}$を有効数字2桁で答えよ。
  • (6) [実験]の反応が平衡状態にあるとき、容器内の3種類の混合気体の全圧$P$とヨウ化水素の分圧$P(\text{HI})$はそれぞれ何Paか。有効数字2桁で答えよ。ただし、3種類の気体は理想気体として扱うものとする。
  • (7) [実験]の反応が平衡状態にあるとき、次の[i]~[v]の操作を行った。このとき、$\eqref{aa}$式の平衡はどうなるか。それぞれ(ア)~(ウ)のうちから適当なものを選び、記号で記せ。
    • [i] 反応容器の容積を一定に保って、温度を上げる。
    • [ii] 温度を一定に保って、反応容器の圧力を上げる。
    • [iii] 温度を一定に保って、反応容器にアルゴン$\text{Ar}$ 0.50 molを加える。
    • [iv] 温度を一定に保って、反応容器に水素0.50 molを加える。
    • [v] 温度を一定に保って、反応容器に対して体積が無視できる量の白金触媒を加える。
    • (ア)正反応の方向へ進む
    • (イ)変化しない
    • (ウ)逆反応の方向へ進む