獨協医科大学生物2012年第1問

遺伝子の構造と発現に関する次の文を読み、下の問1~5に答えなさい。〔解答番号$\fbox{1}$~$\fbox{6}$〕

DNAは塩基・$\fbox{ア}$および$\fbox{イ}$からなるヌクレオチドと呼ばれる構成単位が$\fbox{ア}$と$\fbox{イ}$で交互に長く連なった2本のヌクレオチド鎖で形成されている。$\fbox{ア}$には塩基が結合し2本の鎖の内側につき出ている。2本の鎖は塩基間に働く弱い結合力、つまり$\fbox{ウ}$結合によって、はしご状となり全体にねじれた二重らせん構造をとっている。この塩基対の形成は特異的で、常にG(グアニン)はC(シトシン)と3つの$\fbox{ウ}$結合で、A(アデニン)はT(チミン)と2つの$\fbox{ウ}$結合で対をなしており、これを塩基の相補性という。したがって、DNAに含まれるGとCおよびAとTのモル比はそれぞれほぼ1で、すべての生物の間で差がない。しかし、(a)GC対の含量(GC含量、%)は30~70%と生物間で大きなばらつきがある

遺伝子が発現する際には、DNAの2本鎖がほどけ、一方の鎖を鋳型としてこれに相補的な塩基配列をもつ$\fbox{エ}$が合成される。これを遺伝情報の$\fbox{オ}$という。真核生物の場合、$\fbox{エ}$は核から細胞質に出てリボソームに結合する。また、細胞質には比較的低分子の$\fbox{カ}$が多く存在し、それぞれ特定のアミノ酸と結合している。リボソーム上では$\fbox{エ}$のコドンと$\fbox{カ}$のアンチコドンが相補的な塩基対を作って結合する。そして、$\fbox{エ}$の塩基配列に従って運ばれてきたアミノ酸が次々とペプチド結合していくことで、長い鎖状のポリペプチドが合成される。この過程を遺伝暗号の$\fbox{キ}$という。(b)このようにして合成されたタンパク質は、独自の役割をもった機能タンパク質や構造タンパク質として働くようになる

  • 問1 文中の$\fbox{ア}$~$\fbox{ウ}$にあてはまる語句の組合せとして最も適当なものはどれか。次の(1)~(4)のうちから一つ選びなさい。$\fbox{1}$
    • (1) デオキシリボース リンゴ酸 S-S
      (2) リボースリンゴ酸 水素
      (3) デオキシリポース リン酸水素
      (4) リボースリン酸S-S
  • 問2 文中の$\fbox{エ}$~$\fbox{キ}$にあてはまる語句の組合せとして最も適当なものはどれか。次の(1)~(4)のうちから一つ選びなさい。$\fbox{2}$
    • (1) tRNA(運搬RNA)転写mRNA(伝令RNA)翻訳
      (2) mRNA(伝令RNA)翻訳tRNA(運搬RNA)転写
      (3) tRNA(運搬RNA)翻訳mRNA(伝令RNA)転写
      (4) mRNA(伝令RNA)転写tRNA(運搬RNA)翻訳
  • 問3 大腸菌のDNAが$3.0\times10^6$塩基対であるものとすれば、$1.0\times10^9$個体の大腸菌に含まれるDNAのg数として最も適当なものはどれか。次の(1)~(9)のうちから一つ選びなさい。ただし、アボガドロ数を$6.0\times10^{23}$、ヌクレオチドの平均分子量を330として計算しなさい。$\fbox{3}$
    • (1) $1.7\times10^{-3}$
    • (2) $3.3\times10^{-3}$
    • (3) $6.6\times10^{-3}$
    • (4) $1.7\times10^{-6}$
    • (5) $3.3\times10^{-6}$
    • (6) $6.6\times10^{-6}$
    • (7) $1.7\times10^{-9}$
    • (8) $3.3\times10^{-9}$
    • (9) $6.6\times10^{-9}$
  • 問4 下線部(a)に関して、DNAは紫外線を吸収し、そのスペクトルは260nmに吸収極大をもつ。DNAを含む溶液の温度を上げていくと、ある温度から急に吸光度が増大する。これは、DNAの二重らせん構造がほどけて1本鎖になるためである。この現象をDNAの融解といい、融解が50%進行したときの温度をDNAの融解温度$(Tm)$という。
    さまざまな生物がもつDNAのGC含量(%)と$Tm$(℃)との関係を示したものが図1である。図1に示された結果に関する記述として最も適当なものはどれか。次の(1)~(3)のうちから一つ選びなさい。$\fbox{4}$
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    • (1) GC含量(%)が高くなるにつれて$Tm$は高くなるとわかり、その原因は全塩基対あたりの$\fbox{ウ}$結合の割合が少なくなるからであると考えられる。
    • (2) AT含量(%)が高くなるにつれて$Tm$は低くなるとわかり、その原因は全塩基対あたりの$\fbox{ウ}$結合の割合が少なくなるからであると考えられる。
    • (3) GC含量(%)が低くなるにつれて$Tm$は低くなるとわかり、その原因は全塩基対あたりの$\fbox{ウ}$結合の割合が多くなるからであると考えられる。
  • 問5 下線部(b)に関して、次の文を読んで下の[1]・[2]の問いに答えなさい。
    大腸菌の野生株は、グルコースと数種類の無機塩類のみを添加した最少培地で生育できる。野生株にX線を照射して、生育に必須なヒスチジンを合成できなくなった突然変異株を得た。この株のDNAの塩基配列を調べたところ、ヒスチジン合成に関わる一つの酵素の遺伝子(hisG遺伝子)において塩基配列内の1個のCが他の塩基に置換され、その部位で酵素タンパク質の合成が停止していることがわかった。
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    • [1] 上に示された野生株の塩基配列に対応するアミノ酸5個を、合成開始部位に近い方から順に示した配列として最も適当なものはどれか。次の(1)~(5)のうちから一つ選びなさい。なお、合成開始部位のMetと判定不能なアミノ酸は除くものとする。$\fbox{5}$
      • (1) Glu-Gln-Ala-Arg-Ala
      • (2) Leu-Val-Arg-Ser-Arg
      • (3) Ser-Lys-Gln-Glu-Leu
      • (4) Ser-Phe-Val-Leu-Asp
      • (5) Ser-Phe-Val-Leu-Glu
    • [2] 野生株の塩基配列に起こった1塩基の置換に関する記述として最も適当なものはどれか。次の(1)~(3)のうちから一つ選びなさい。$\fbox{6}$
      • (1) 843番目のCがTに置換された。
      • (2) 847番目のCがTに置換された。
      • (3) 853番目のCがAに置換された。
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