獨協医科大学生物2012年第4問

植物の窒素同化に関する次の文を読み、下の問1~5に答えなさい。〔解答番号$\fbox{1}$~$\fbox{8}$〕

窒素は生物の生命活動に必要な種々の有機窒素化合物の構成元素である。多くの植物では、土壌中に含まれるアンモニウムイオンや硝酸イオンが無機窒素化合物として吸収され、以下のように有機窒素化合物に合成される。

まず根から吸収された硝酸イオンは亜硝酸イオンを経てアンモニウムイオンに還元され、次にアンモニウムイオンは糖の分解によって生じた$\fbox{ア}$と結合して$\fbox{イ}$になる。そして、$\fbox{ウ}$酵素の働きによってアミノ基が$\fbox{イ}$からさまざまな有機酸に手渡されることで、さまざまなアミノ酸が合成される。さらに、これらのアミノ酸をもとにして、タンパク質をはじめとする生命活動に必要なさまざまな有機窒素化合物が合成される。

  • 問1 緑色植物は無機窒素化合物を効率よ く獲得するために、土壌中にある無機窒素化合物の種類に応じて硝酸還元酵素の活性を誘導するしくみをもっている。このしくみについて調べるために、次の実験1・2を行った。これらの実験に関する下の[1]~[3]の問いに答えなさい。
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    • 実験1 発芽して適当な時間が経過した植物の芽生えに硝酸イオンまたはアンモニウムイオンを与えた。そして、その後3時間おきに芽生えから酵素液を抽出し、最適温度の30℃および十分量の硝酸イオンの下で硝酸還元酵素の活性を測定した。その結果を図1に示す。
    • 実験2 硝酸還元酵素の濃度を一定にし、最適温度の30℃の下で、基質である硝酸イオンの濃度を変化させて活性を測定した。反応速度と基質濃度との関係を図2の実線で示す。
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    • [1] 実験1の結果に関する記述として最も適当なものはどれか。次の(1)~(3)のうちから一つ選びなさい。$\fbox{1}$
      • (1) 硝酸イオンがグラフAで、アンモニウムイオンがグラフBである。
      • (2) 硝酸イオンがグラフBで、アンモニウムイオンがグラフAである。
      • (3) 硝酸イオンおよびアンモニウムイオンとグラフの対応関係はわからない。
    • [2] 実験2において、温度条件を20℃に変えた場合の、反応速度と基質濃度との関係を示すグラフとして最も適当なものはどれか。次の(1)~(4)のうちから一つ選びなさい。$\fbox{2}$
      • (1) 破線a
      • (2) 破線b
      • (3) 破線c
      • (4) 破線d
    • [3] 実験2において、硝酸イオンと構造がよく似た陰イオンを一定濃度で加えた場合の、反応速度と基質濃度との関係を示すグラフとして最も適当なものはどれか。[2]の(1)~(4)のうちから一つ選びなさい。ただし、本来の基質ではないこの陰イオンは、硝酸還元酵素の活性部位に可逆的に結合することができるものとする。$\fbox{3}$
  • 問2 文中の$\fbox{ア}$~$\fbox{ウ}$にあてはまる語句の組合せとして最も適当なものはどれか。次の(1)~(4)のうちから一つ選びなさい。$\fbox{4}$
    • (1) クエン酸グルタミン酸脱アミノ
      (2) ケトグルタル酸 アスパラギン酸 アミノ基転移
      (3) ケトグルタル酸 グルタミン酸アミノ基転移
      (4) クエン酸アスパラギン酸脱アミノ
  • 問3 特定の種類の細菌やラン藻は空気中の窒素を取り込んでアンモニアに変えることができる。これに関する記述として最も適当なものはどれか。次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。$\fbox{5}$
    • (1) 窒素をアンモニアに変える作用を脱窒素という。
    • (2) 特定の細菌が根粒をつくって共生するのはマメ科植物だけである。
    • (3) アゾトバクターは好気性であるが、ネンジュモは嫌気性である。
    • (4) クロストリジウムも根粒菌も嫌気性である。
    • (5) 光合成細菌の中には、この作用を行うものがいる。
  • 問4 有機酸とアミノ酸の関係に関する記述として適当なものはどれか。次の(1)~(6)のうちから二つ選びなさい。ただし、解答の順序は問わない。$\fbox{6}\fbox{7}$
    • (1) 有機酸はアミノ基もカルボキシル基ももたない。
    • (2) 有機酸はアミノ基をもたず、アミノ酸はカルボキシル基をもたない。
    • (3) 有機酸はアミノ基をもたないが、アミノ酸はカルボキシル基をもつ。
    • (4) $\fbox{イ}$がピルビン酸にアミノ基を手渡すとグルタミン酸になる。
    • (5) $\fbox{イ}$がオキサロ酢酸にアミノ基を手渡すとアスパラギン酸になる。
    • (6) $\fbox{イ}$がオキサロ酢酸にアミノ基を手渡すとアラニンになる。
  • 問5 ある緑色植物で64gのタンパク質が合成されたとする。根から吸収された窒素はすべて硝酸イオンで、その75%がタンパク質に取り込まれたとすると、根から吸収された硝酸イオンのg数に最も近い数値はどれか。次の(1)~(4)のうちから一つ選びなさい。ただし、タンパク質中の窒素含量が16%であるものとし、原子量は$\text{H}:1.0$、$\text{C}:12$、$\text{N}:14$、$\text{O}:16$である。$\fbox{8}$
    • (1) 3
    • (2) 60
    • (3) 62
    • (4) 1329