藤田保健衛生大学生物2013年第1問
脊椎動物の骨格筋は、筋繊維が束になってできている。筋繊維の中には、( ア )の束が小胞体やミトコンドリアなどの細胞小器官とともに存在している。( ア )は筋収縮をになう主要タンパク質であるアクチンと( イ )が整然と配列した( ウ )という単位がくり返した構造をとっている。( イ )がATPを分解した際に生じるエネルギーを用いて骨格筋は収縮する。
筋収縮には多量のATPを必要とするが、細胞内に蓄積されているATPは運動開始直後にすみやかに消費される。安静時には主に呼吸によってATPを得ているが、呼吸では間に合わないようなときには解糖によってATPを獲得する。筋肉には多量のATPを蓄積しておくことはできないので、それを補うためにクレアチンリン酸の形で筋肉内にエネルギーを貯蔵しておき、クレアチンキナーゼの働きによってADPからATPを再合成するしくみが備わっている。このように、(1)呼吸、解糖、クレアチンリン酸の3つの系が骨格筋へのエネルギー供給源の代表的なものである。図1は、これら3つの系が、運動を開始した骨格筋へ供給するエネルギー量の時間経過を示したものである。
骨格筋の筋繊維は、収縮速度やエネルギー代謝の特徴などから、遅筋と速筋、さらにその中間の性質をもつタイプの3つに分類される。この3つのタイプの筋繊維が骨格筋に含まれる割合には生まれつきの個人差があり、この差によってスポーツ種目の適性が分かれることもある。遅筋はゆっくり収縮し、持久力を引き出すときに使われる。速筋はすばやく収縮することができるので、瞬発力を引き出すときに使われる。手足の基部を特別なベルトで圧迫し、対象とする手足の血流量を制限した状態で運動する(2)加圧トレーニングを行うことにより効果的に筋肥大と筋力増強を促すことができる。これは、血流を制限することで、筋での( エ )供給量の不足が起こり、その結果、( オ )が蓄積することにより、脳に信号が送られて( カ )が分泌されるためである。
- 問1 文中の( ア )~( カ )に適語を記せ。
- 問2 下線部(1)について、
- 1) a)呼吸、b)解糖、c) クレアチンリン酸などから供給されるエネルギーは、図1の(1)~(3)のどれに相当するか。それぞれ適当と思われるものを1つずつ選び、その番号を記せ。
- 2) a)呼吸によって1分子のグルコースから得られるATPの分子数、b)解糖によって1分子のグルコースから得られるATPの分子数、c) クレアチンリン酸1分子から得られるATPの分子数はそれぞれいくつか、記せ。
- 3) 運動開始から10秒後の骨格筋への全エネルギー供給量はおよそどれくらいか、記せ。
- 問3 遅筋、速筋はそれぞれ赤筋、白筋とも呼ばれる。この色の違いは、あるタンパク質の濃度の差を反映している。あるタンパク質とは何か、その名称を記せ。
- 問4 次の(1)~(7)の中から、速筋よりも遅筋の性質を表していると思われるものを2つ選び、その番号を記せ。
- (1) 筋繊維中のミトコンドリアの数が多い。
- (2) 筋繊維中のグリコーゲンの貯蔵量が多い。
- (3) 筋繊維を取り巻いている毛細血管の数が多い。
- (4) 内臓に多い。
- (5) 加齢により減少しやすい。
- (6) 疲労しやすい。
- (7) 張力が大きい。
- 問5 下線部(2)について、加圧トレーニングにより筋肥大が効果的に起きるのは、a)遅筋とb)速筋のどちらと考えられるか。どちらか一方を選び、その記号を記せ。また、それを選んだ理由を簡潔に記せ。