藤田保健衛生大学生物2013年第2問
タンパク質や核酸は動物の体内で分解されると、水と二酸化炭素の他に窒素化合物である( A )を生ずる。この物質は生体には有害なので、ただちに体外に排出されるか、もしくは毒性の低い窒素化合物である( B )あるいは( C )に変えられた後、体外に排出される。
脊椎動物は最初、海の中で誕生したと考えられているが、水の中で生活する魚類は窒素化合物を( A )の形で水中に排出している。その後、脊椎動物の中から両生類が進化して陸に進出するようになったが、陸に上がることによって、必要なときにいつでも十分な水が得られるとは限らなくなった。水を節約するために( A )を濃縮して排出しようとすると、その毒性のために、排出器官などに障害が発生するおそれがある。そのために、(1)両生類は( A )を毒性が低く水に溶けやすい( B )に変換する手段を獲得したと考えられている。
進化の過程で、水を通さず乾燥に耐える卵殻をもつようになった(2)爬(は)虫類では、胚が排出する可溶性窒素化合物が卵内にため込まれると、危険なレベルにまで集積するおそれがある。そのために、爬虫類では体内で生成する( A )を( B )ではなく、水に溶けにくい( C )に変えて排出するようになった。その後、(3)爬虫類から鳥類が誕生して生活圏を空中へと広げるようになると( B )から( C )への変化は鳥にとってさらに有利に働くこととなった。しかし、鳥類は発生の初期から( C )を排出しているわけではない。ニワトリ胚の発生過程で、排出される窒素化合物の種類を調べてみると、図2に示すように、最初に( A )が現れ、次に( B )、そして( C )へ変わっていくことがわかった。
ヘッケルは、脊椎動物の初期胚はみな似かよった形をしているものの、発生が進むにつれて次第に各動物の特徴が現れてくることを観察し、発生過程の短い期間に進化の長い過程が再現されていると考え、(4)「個体発生は系統発生をくり返す」と表現した。ニワトリ胚発生中に排出される窒素化合物の変化は、形態的な観察から唱えられたヘッケルの説を、機能的にも証明するものとして注目された。
- 問1 文中の( A )~( C )に適語を記せ。
- 問2 下線部(1)について、
- 1) この代謝経路の名称を記せ。
- 2) この代謝経路が存在している器官の名称を記せ。
- 問3 下線部(2)について、爬虫類の卵で毒性の低い( B )をため込むことは、なぜ危険と考えられるのか、簡潔に記せ。
- 問4 下線部(3)について、( B )から( C )への変化が鳥類にとって有利なのは、どのような理由によるものと考えられるか、簡潔に記せ。
- 問5 下線部(4)について、この説は何と呼ばれているか、記せ。
- 問6 a)カエルとb)オタマジャクシでは、窒素化合物の排出をどのような物質で行っていると考えられるか。( A )~( C )の中から、もっとも適当と思われるものを選び、それぞれ記号で記せ。
- 問7 ヒトでは窒素化合物は基本的に( B )の形で排出しているが、代謝の過程で( C )が生成することもあり、結品化した( C )が関節などに集積して激しい痛みを生じることがある。
- 1) このような疾患は一般に何と呼ばれるか、その名称を記せ。
- 2) ( C )はヒトではどのような物質から生成されるか、その名称を記せ。