藤田保健衛生大学生物2013年第4問
ヒトの視覚に関する次の文を読み、以下の各問いに答えよ。ただし、文中の記号(イ)~(エ)は、それぞれ図5の記号に対応している。
正常な視力のヒトがものを見るとき、対象物から発せられた光は角膜から眼球に入り、虹彩によって光量が調節された後、水晶体、硝子体を通過し、最終的に網膜に上下左右が反転した像を結ぶ。この間、(1)光は眼球内のさまざまな領域を屈折しながら通過するが、(2)対象物との距離に応じて適切な眼の調節を受けることにより、網膜の上に鮮明な像を結ぶことができる。(3)近視の場合、遠くの物はぼやけた像として網膜に投影されるが、これは眼の焦点距離が近くなっていることに起因する。したがって、近視は凹レンズの眼鏡をかけることで矯正できる。
網膜にある( ア )により受容された光の信号は、( イ )を通り、( ウ )、( エ )を経て、大脳皮質の( オ )頭葉にある視覚野へと伝えられる(図5)。ヒトでは、左右どちらの眼も、鼻側の網膜でとらえた信号を伝える神経は、( ウ )で反対側の( エ )に入り、耳側の網膜から出た神経は交させずに、それぞれ同側の( エ )に入る。つまり、(4)両眼の網膜の右半分に投影された像は大脳の右の視覚野へ、左半分に投影された像は大脳の左の視覚野へと伝えられる。
眼球が収まる頭蓋骨の空洞を眼窩(がんか)と呼ぶが、(5)ヒトでは眼球を動かすための6つの筋肉が眼球と眼窩をつないでおり、各筋肉の収縮度合いを調節することで、視線を目的の方向に向けることができる。内側直筋、外側直筋、上直筋、下直筋の4つの筋肉は、眼窩後方と眼球の内側(鼻側)、外側(耳側)、上部、下部をそれぞれつないでいる。また、上斜筋は、眼窩内側に固定されている滑車と呼ばれるリングを通って、眼窩後方と眼球の上部をつないでいる。下斜筋は、眼窩下面と眼球の下部をつないでいる(図6、図7)。
- 問1 文中の( ア )~( オ )に適語を記せ。
- 問2 下線部(1)について、物体から発せられた光がもっとも大きく屈折を受けるのは、眼球のどの領域に入射するときか。次の(1)~(4)の中から、もっとも適当と思われるものを1つ選び、その番号を記せ。
- (1) 角膜
- (2) 前眼房
- (3) 水晶体
- (4) 硝子体
- 問3 下線部(2)について、次の文の( )の中から、それぞれ適当と思われる語句を選び、その番号を記せ。
遠くの物体を見るときには、毛様筋は(a:(1) ゆるみ (2) 収縮し)、チン小帯は(b:(3) ゆるむ (4) 引っぱられる)ので、水晶体は(c:(5) 薄く (6) 厚く)なる。 - 問4 下線部(3)について、近年、レーザーを用いて近視を矯正する治療法が注目を浴びている。この治療法の原理について、次の文の( )の中から、それぞれ適当と思われる語句を選び、その番号を記せ。
角膜を(a:(1) 薄く (2) 厚く)することで、光の屈折率を(b:(3) 小さく (4) 大きく)し、焦点距離を(c:(5) 短く (6) 長く)する。 - 問5 加齢に伴って近くの物体を見ることが不自由になるのが老眼である。眼球のどの部分が、どのように変化するために老眼となるのか、次の(1)~(5)の中から、もっとも適当と思われるものを1つ選び、その番号を記せ。
- (1) 角膜の透明度が低下し、光の透過量が減少するため。
- (2) 水晶体の弾性が低下し、十分に厚くすることができなくなるため。
- (3) 毛様筋の収縮力が低下し、水晶体を薄くすることができなくなるため。
- (4) 硝子体の透明度が低下し、光の透過量が減少するため。
- (5) 網膜の神経細胞数が減少し、光の感受性が低下するため
- 問6 下線部(4)について、眼球から視覚野へ至る経路が障害を受けると、その障害部位に応じた特有の視野欠損が生じる。例えば、図5のAの部位に障害が起きると図8の(1)のような視野欠損が生じる。図5のB、C、Dに障害が起きた場合、どのような視野欠損が生じると考えられるか。図8の(1)~(15)の中から、もっとも適当と思われるものをそれぞれ1つずつ選び、その番号を記せ。
- 問7 下線部(5)について、
- 1) 6つの筋肉のうち、内側直筋が強く収縮すると、瞳孔は図9において(4)の方を向く。では、上直筋が強く収縮した場合は、どの方向を向くか。図9の(1)~(6)の中から、もっとも適当と思われるものを1つ選び、その番号を記せ。
- 2) 顔の正面にある物体を見ようとする際、6つの筋肉は協調して収縮することで瞳孔を目の中央に位置させることができる。しかし、いずれかの筋肉が麻痺して収縮できなくなると、瞳孔を中央に位置させることは難しくなり、結果的にある方向に寄ってしまう。では、外側直筋が麻痺して収縮できない場合、瞳孔はどの方向に寄ってしまうか。図9の(1)~(6)の中から、もっとも適当と思われるものを1つ選び、その番号を記せ。
- 3) 上直筋の働きを調べる場合には、まず視線を耳側に向けてもらい、その状態でさらに上へ向けてもらうよう誘導する。では、上斜筋の働きを調べる場合には、視線をどのように動かすように誘導すればよいか。次の文の( )の中から、適当と思われる語句をそれぞれ1つずつ選び、その番号を記せ。
まず視線を(a:(1) 耳側 (2) 鼻側 (3) 上 (4) 下)に向けてもらい、その状態でさらに(b:(5) 耳側 (6)鼻側 (7) 上 (8) 下)に向けてもらうように誘導する。