藤田保健衛生大学生物2012年第1問

タンパク質に関する次の文を読み、以下の各問いに答えよ。

タンパク質は( ア )種類の(1)アミノ酸が鎖状に結合したものであり、その配列がタンパク質ごとに決まっている。タンパク質の(2)アミノ酸配列を規定している設計図はDNA上にある。タンパク質の構造は、いくつかの階層に分けることができる。アミノ酸配列そのものを一次構造とよび、このアミノ酸配列によって決められる(3)特徴的な構造を二次構造とよぶ。さらに二次構造がいくつか組み合わされてできる全体的な構造を三次構造とよぶ。また、複数のタンパク質が集まって1つの機能的なタンパク質を形成する場合、この構造を( イ )とよぶ。タンパク質の構造には、システイン間の酸化によってつくられる( ウ )結合のほか、構成するアミノ酸間の電荷の引き合いや、(4)アミノ酸の水に対する溶けやすさ(親水性)や溶けにくさ(疎水性)の違いなども関与している。

薬品、あるいは熱やpHの変化などで、タンパク質の機能が失われることを( エ )とよぶが、これはタンパク質の構造が変化することによる。アンフィンセンは、RNAを分解するリボヌクレアーゼの溶液に尿素を加えることで、リボヌクレアーゼの活性が失われることを示した。しかし、(5)透析により尿素を除くと、リボヌクレアーゼの活性が元に戻ることを見つけ、条件によってはタンパク質の構造変化が可逆的であることを明らかにした(図1)。

タンパク質は、生体内の化学反応を触媒する( オ )として機能するもののほかにも、さまざまな生命現象に関わっている。(6)皮膚や臓器などの構造を支える細胞外の繊維状タンパク質や、細胞膜で特定の物質の輸送に関与するタンパク質、さらに細胞外からのシグナルを細胞内に伝えるタンパク質もある。

それではシグナルはいったいどのようなしくみで細胞内に伝わっていくのだろうか。ホルモンなどのシグナル分子が細胞表面の受容体タンパク質に結合すると、受容体の構造の一部が変化する。すると、この変化した構造が細胞内の別の伝達タンパク質によって認識される(図2)。その伝達タンパク質自身も受容体タンパク質に結合したことにより構造変化を起こし、この変化がまた次のタンパク質に認識されていく。このような構造の変化のリレーが、細胞のシグナル伝達のしくみになっている。すなわち、タンパク質は複数の相手との結合部位をもっており、ある部位に標的物質が結合することで、別の結合部位の構造が微妙に変化して、次の標的物質が結合できるようになったり、逆にそれまであった結合がはずれるようになったりするのである。(7)このような調節様式は( オ )でも使われている

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  • 問1 文中の( ア )~( オ )にあてはまる数字または適語を記せ。
  • 問2 下線部(1)の結合は何とよばれるか。その名称を記せ。
  • 問3 下線部(2)について、RNAに転写されるDNAの領域のことを遺伝子とよぶが、転写されたRNAからタンパク質がつくられない遺伝子の例を2つ記せ。
  • 問4 下線部(3)について、代表的な二次構造を2つ記せ。
  • 問5 下線部(4)について、水溶性タンパク質を構成しているアミノ酸の配置に関して、一般にどのようなことがいえるか。次の(a)~(f)から適当なものをすべて選び、その番号を記せ。
    • (a) 親水性アミノ酸はタンパク質の内側に多く、水を保持している。
    • (b) 疎水性アミノ酸はタンパク質の内側に入り込みやすい。
    • (c) 親水性アミノ酸はタンパク質の外側に多く、イオン化しているものもある。
    • (d) 疎水性アミノ酸はタンパク質の外側に多く、表面張力を発揮する。
    • (e) 親水性アミノ酸は加水分解されやすいので、タンパク質の内側に多い。
    • (f) 疎水性アミノ酸同士は互いに反発し合い、離れて存在することが多い。
  • 問6 下線部(5)の結果から、( エ )の状態でも変化しない構造はどれか。一次、二次、三次構造のうち、変化しない構造をすべてあげよ。
  • 問7 下線部(6)のタンパク質としてどのようなものがあるか。主要なタンパク質を1つあげ、その名称を記せ。
  • 問8 下線部(7)について、このような調節様式を何とよぶか。その名称を記せ。
  • 問9 図2において、シグナル分子が結合した受容体は、このままだとシグナルを伝え続けることになる。シグナルを伝えた後、そのシグナルはどのようにして解除されると考えられるか。考えられる方法を40字程度で記せ。