藤田保健衛生大学生物2012年第4問

ヒトの腎臓に関する次の文を読み、以下の各問いに答えよ。ただし、文中の記号はそれぞれ図中の記号に対応している。なお、図6はヒトの腎臓の断面を示し、図7は図6の四角の部分を拡大したものである。
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腎臓は尿をつくることで老廃物の排出を行うとともに、体液の浸透圧を調節する上でも重要なはたらきをしている。体液の浸透圧が低下すると、腎臓は塩濃度の低い尿を大量に出すことによって、体液の浸透圧を上げるようにはたらく。一方、体液の浸透圧が高くなったときには、腎臓はさらに塩濃度の高い尿を排出して水分の減少を抑える。腎臓はいったいどのようにして、塩濃度が体液と異なる尿をつくり出すことができるのだろうか。

ヒトの腎臓は、図7に描かれている( ア )とよばれるユニットが100万個ほど集まってできている。( ア )は( イ )と細尿管(尿細管あるいは腎細管ともよぶ)からなり、( イ )はさらに、( ウ )と( エ )からできている。腎臓に入った血液が、毛細血管からなる( エ )を通る際に、血球と( オ )を除く大部分の成分が( ウ )へろ過される。(1)ろ過されたものを原尿という。その後、(2)老廃物を除く原尿のほとんどの成分が細尿管で再吸収されるが、このうち水と塩では再吸収の起こる部位が異なっている。図7に見られるように、再吸収が起こる過程で細尿管は腎臓の皮質と髄質を行き来している。髄質へ向かう細尿管と皮質へ向かう細尿管ではそのはたらきが異なっている。(3)塩の再吸収は細尿管が髄質から皮質に向かう過程で起こる。塩が細尿管の中から外へくみ出されることによって、細尿管の内外に浸透圧の差ができるが、水の再吸収はこの浸透圧の差を利用して行われている。(4)細尿管が皮質から髄質へ向かう過程で徐々に水の再吸収が起こるので、原尿は髄質へ向かうほど浸透圧が高くなっていく。次に細尿管が髄質から皮質に向かう過程で徐々に塩の再吸収が起こるので、逆に原尿は皮質へ向かうほど浸透圧が低くなっていく。このようにして、腎臓の浸透圧は髄質が高く、皮質で低い、という勾配ができあがる。(5)最終的に集合管は浸透圧の高い髄質を通るので、このときに集合管からの再吸収を調節することによって、さまざまな浸透圧の尿を排出することができる

体内の水分が不足しているときには、( カ )から分泌される( キ )のはたらきで、集合管からさらに水が再吸収され、浸透圧の高い尿が排出される。逆に、体液の浸透圧が低いときには、( ク )から分泌される( ケ )のはたらきで、集合管からさらに塩の再吸収が起こり、体液の浸透圧を下げないようにしている。

  • 問1 文中の( ア )~( ケ )にあてはまる適語を記せ。
  • 問2 下線部(1)について、ヒトの成人で1日あたりにつくられる原尿の量はどれくらいか。次の(a)~(f)の中からもっとも適当なものを1つ選び、その番号を記せ。
    • (a) 0.5l
    • (b) 1.5l
    • (c) 5l
    • (d) 15l
    • (e) 50l
    • (f) 150l
  • 問3 下線部(2)について、細尿管でほぼ完全に再吸収される物質を2つあげ、その名称を記せ。
  • 問4 下線部(3)について、塩の再吸収は能動輸送によって行われている。
    • i) 細尿管の上皮細胞で、塩の再吸収に用いられている膜タンパク質の名称を1つ記せ。
    • ii) そのタンパク質では、どのようなエネルギー物質が使われているか、その名称を記せ。
    • iii) そのエネルギー物質をつくり出すために、細尿管の上皮細胞では、ある細胞小器官が非常に発達している。その細胞小器官の名称を記せ。
  • 問5 下線部(4)について、水を効率的に再吸収するために、細尿管の上皮細胞の細胞表面では、ある特徴的な構造が発達している。その名称を記せ。
  • 問6 下線部(5)について、もし水が細胞膜を自由に行き来できるとすると、集合管が髄質を通過する過程で尿の浸透圧はいつでも高くなってしまう。集合管で尿の浸透圧を調節できるようにするために、細胞膜には水を通すための特別なタンパク質(チャネル)が存在している。
    • i) このタンパク質の名称を記せ。
    • ii) 浸透圧の低い尿を排出するために、集合管の上皮細胞にはどのようなしくみがあると考えられるか。i) で答えたタンパク質がホルモンの作用により細胞内でどのようにふるまうか予想して、そのしくみを40字程度で記せ。