福岡大学生物2013年第2問

遺伝子発現の調節に関する次の文章を読み、問1~問8に答えよ。

生物のゲノムには多数の遺伝子が含まれているが、その発現の調節は主に転写の段階で行なわれる。原核生物の場合、RNA合成酵素はプロモーターに直接結合するが、(1)プロモーター内またはその近くの塩基配列部位(2)調節タンパク質が結合したり、離れたりすることで転写の調節が行なわれる。真核生物の場合は、まず基本転写因子と呼ばれるタンパク質がプロモーターに結合し、そこにRNA合成酵素が結合する。これがプロモーターから離れたところに結合した調節タンパク質と、さらに複合体をつくることで転写が開始される。例えば、ヒトの性ホルモンである(3)エストロゲンは標的細胞である生殖腺の細胞内に入り、細胞質基質にあるエストロゲン受容体と複合体をつくる。この複合体が核内へ移動し、特定の遺伝子の調節タンパク質としてはたらくことでその遺伝子の転写を開始させる。

多細胞生物の発生では、(4)さまざまな遺伝子の発現が決まった順序で起こる。発現の順序は、ある調節タンパク質が次の調節タンパク質遺伝子の発現を調節するというように、調節タンパク質遺伝子の発現の連鎖で決まる。そのため、正常な発生過程では、(5)連鎖の起点となる調節タンパク質がはたらくと、それ以降の過程は自動的に進んでいく場合が多い。このような連鎖的な過程を経て(6)分化した細胞では、その機能に応じた特定のタンパク質の遺伝子が発現するようになる。

  • 問1 下線部(1)の塩基配列部位を何と呼ぶか。
  • 問2 下線部(2)の調節タンパク質のうち、発現を抑制するものを特に何と呼ぶか。
  • 問3 下線部(3)に関して、エストロゲンはどのようにして細胞の中に移動するか。次の(イ)~(ニ)から適切なものを1つ選び、記号で答えよ。
    • (イ)特定のチャネルを通って入る。
    • (ロ)運搬体タンパク質と結合して入る。
    • (ハ)細胞膜の脂質二重層部分を直接通って入る。
    • (ニ)細胞膜の陥入をともなう現象を利用して入る。
  • 問4 双翅目昆虫のだ腺の染色体で、下線部(4)に関する現象を光学顕微鏡観察で確認できる構造は何か。
  • 問5 ショウジョウバエの胚で各体節が特殊化するとき、下線部(5)のようなはたらきをする遺伝子を何と呼ぶか。
  • 問6 問5の遺伝子の変異が原因で生じるショウジョウバエの変異個体はどれか。次の(イ)~(ニ)から選び、記号で答えよ。
    • (イ)白眼の個体
    • (ロ)黄色体色の個体
    • (ハ)4枚翅の個体
    • (ニ)そり翅の個体
  • 問7 下線部(6)のような発現を何と呼ぶか。
  • 問8 下線部(6)に関して、分化した細胞とその細胞が合成する特異的なタンパク質の組み合わせとして正しいものを、次の(イ)~(二)から1つ選び、記号で答えよ。
    • (イ)筋細胞とグリスタリン
    • (ロ)肝細胞とフィブリノーゲン
    • (ハ)白血球と血清アルブミン
    • (ニ)皮膚繊維芽細胞とミオシン