福岡大学生物2012年第3問
免疫に関する文章を読んで問1~問4に答えよ。
免疫反応には、獲得免疫と自然免疫とがある。前者はB細胞を中心とする体液性免疫、T細胞を中心とする細胞性免疫、後者は主に好中球やマクロファージによるものである。皮膚や粘膜などの障壁を超えて病原体が体内に侵入すると、好中球は( イ )のはたらきによってこれを取り込み、分解する。マクロファージは好中球と同様の処理を行なうとともに、(A)抗原部位を細胞表面に提示する。
キラーT細胞は感染細胞を直接攻撃し、ヘルパーT細胞は( ロ )という物質を産生してB細胞やT細胞を活性化して分裂・増殖させる。この結果、B細胞の一部は( ハ )となり盛んに抗体を産生する。(B)また、一部は抗原特異的な記憶細胞となって、その後同じ抗原が侵入したときに再び免疫応答(二次応答)する。
後天性免疫不全症候群(エイズ)の病因は、感染したヒト免疫不全ウイルス(HIV)がヘルパーT細胞を破壊していくことにある。典型例では、感染後HIVは一旦は活発に増殖するが、2~3週間のうちに急速に減少し、増殖が鎮静化する。しかし3~6年後にウイルスが再び活発に増殖し、ヘルパーT細胞が減少する。そのため免疫力が低下し、日和見感染や発癌などが起こる。HIVの増殖は、HIVがもっている( ニ )によってウイルスRNAが一本鎖DNAに変換されて開始されるが、増殖の過程で(C)高率に突然変異を起こす。
- 問1 文中の( イ )~( ニ )に当てはまる最も適切な語句を記入せよ。
- 問2 下線部(A)について、(1)マクロファージより抗原の提示を受ける細胞、(2)その細胞の特徴、をそれぞれ(イ)~(ホ)の選択肢より1つ選び、(1)は解答欄(a)に、(2)は解答欄(b)に記入せよ。
- (1)
- (イ) B細胞
- (ロ) 好中球
- (ハ) キラーT細胞
- (ニ) ヘルパーT細胞
- (ホ) 肥満細胞
- (2)
- (イ) 自らも抗原を提示できる。
- (ロ) 抗原が他の細胞の表面にないとこれを認識できない。
- (ハ) 非特異的にウイルス感染細胞と結合して細胞障害性を示す。
- (ニ) 即時型アレルギーで増加する。
- (ホ) 抗原を認識するために、抗体を細胞表面に有している。
- (1)
- 問3 下線部(B)に関連して次の問に答えよ。
- (1) 記憶細胞について、正しい記述の組み合わせを下の(イ)~(ホ)から1つ選び、番号を記入せよ。
- (a) 血清療法は、記憶細胞を活性化する治療法である。
- (b) インフルエンザウイルスに何度も感染するのは、記憶細胞が生じないためである。
- (c) 記憶細胞は、T細胞にも存在する。
- (d) 予防接種が有効なのは、記憶細胞のはたらきである。
- (イ) aとb
- (ロ) aとc
- (ハ) bとc
- (ニ) bとd
- (ホ) cとd
- (2) 二次応答による抗体産生のパターンを図1の(イ)~(ニ)より1つ選び、記号で答えよ。
- (1) 記憶細胞について、正しい記述の組み合わせを下の(イ)~(ホ)から1つ選び、番号を記入せよ。
- 問4 下線部(C)が直接原因となる事象は次のどれか。(イ)~(ニ)より1つ選び、記号で答えよ。
- (イ) HIVに感染すると、癌が発生しやすくなる。
- (ロ) HIVに対しては、治療や予防のために有効なワクチン作製が困難である。
- (ハ) HIVには、限られた種特異性がある。
- (ニ) HIVは、ヘルパーT細胞に感染しやすい。