福岡大学化学2013年第4問

脂質に関する次の文を読み、下の問1~問6に答えよ。ただし、原子量は$\text{H}=1.00$、$\text{C}=12.0$、$\text{O}=16.0$、$\text{Br}=79.0$とする。

単純脂質は油脂ともよばれ、$\fbox{ア}$と高級脂肪酸のみからできたエステルで、植物や動物の体内に多く存在し、ラードやごま油などの主成分となる。油脂は脂肪酸の種類によって性質が異なり、$\fbox{イ}$が多く含まれる油脂は常温で固体のものが多く、$\fbox{ウ}$が多く含まれる油脂は常温で液体のものが多い。一方、複合脂質には糖脂質やリン脂質などがあり、卵黄に含まれる$\fbox{エ}$はその一例である。

単純脂質の反応および生成物の性質を調べるため、単一の高級脂肪酸のみを含む分子量878の油脂Aを用いて、次の実験1~6を行った。

実験1 4.39gのAに臭素$(\text{Br}_2)$を加え、完全に反応させると、化合物Bが9.13g得られた。

実験2 $\text{Ni}$を触媒として、Aに水素を反応させ、油脂Cを得た。

実験3 Cに水酸化ナトリウムを加えて穏やかに加熱し、高級脂肪酸のナトリウム塩である化合物Dと$\fbox{ア}$を得た。

実験4 Dの水溶液に油を加えると、細かい粒子になって水中に分散した。

実験5 Dの水溶液にカルシウムイオンを含む水溶液を加えると、沈殿を生じた。

実験6 $\fbox{ア}$に濃硝酸と濃硫酸の混酸を作用させ、爆発性が高い化合物Eを得た。

  • 問1 文中の空欄$\fbox{ア}$~$\fbox{エ}$に最も適するものを次の(1)~(9)から選び、番号で答えよ。
    • (1)エタノール
    • (2)エチレングリコール
    • (3)グリセリン
    • (4)グルコース
    • (5)ペクチン
    • (6)レシチン
    • (7)アルブミン
    • (8)飽和脂肪酸
    • (9)不飽和脂肪酸
  • 問2 実験1に関する次の問(a)および(b)に答えよ。解答は下の解答群の(1)~(9)から最も適するものを選び、番号で答えよ。ただし、同じ番号を何度用いてもよい。
    • (a)1molの油脂Aに対して臭素$(\text{Br}_2)$は最低何mol必要か。
    • (b)Aを構成する高級脂肪酸1分子中には、炭素一炭素二重結合がいくつ存在するか。
    解答群
    • (1)1
    • (2)2
    • (3)3
    • (4)4
    • (5)5
    • (6)6
    • (7)7
    • (8)8
    • (9)9
  • 問3 実験4で起こる現象を何とよぶか。最も適するものを次の(1)~(5)から選び、番号で答えよ。
    • (1)硬化
    • (2)乳化
    • (3)液化
    • (4)イオン化
    • (5)凝集
  • 問4 実験5で沈殿が析出する反応の化学反応式を示性式で記せ。
  • 問5 1-ドデカノール$(\text{C}_{12}\text{H}_{25}\text{OH})$に濃硫酸を作用させて得られた化合物を、水酸化ナトリウム水溶液で中和すると、化合物Fが得られる。FはDと同じく、油を水中に分散させる作用があるが、カルシウムイオンを含む水溶液を加えても沈殿しない。DおよびFの性質を表す次の記述(a)~(d)のうち、正しいものの組み合わせはどれか。下の(1)~(6)から選び、番号で答えよ。
    • (a)どちらも海水によく溶ける。
    • (b)一定濃度以上の水溶液では、どちらも炭化水素基を内側に、イオンの部分を外側に向けたコロイド粒子となる。
    • (c)Dの親水性の部分は陰イオンになるが、Fの親水性の部分は陽イオンになる。
    • (d)Dの水溶液は塩基性であるのに対し、Fの水溶液は中性を示す。
    • (1)aとb
    • (2)aとc
    • (3)aとd
    • (4)bとc
    • (5)bとd
    • (6)cとd
  • 問6 実験6で得られた化合物Eおよび問5の操作で得られた化合物Fの構造式を解答欄の例にならって記せ。