福岡大学生物2013年第1問

クローン羊の作製に関する次の文章を読み、問1~問7に答えよ。

A、B、Cの3つの異なる品種の羊を用いてクローン羊を作った(図1)。まず、A品種の雌から未受精卵を取り出し、核を細いガラス管で吸い取って除核した。次に、B品種の乳房の細胞を取り出し、これを培養皿で培養した(培養細胞)。細胞周期のG1期にある培養細胞1個を取り出し、除核しておいたA品種の未受精卵の透明な卵膜と卵本体の間にガラスピペットを用いて挿入した。この状態で高電圧をかけると未受精卵と培養細胞の細胞膜が融合し、培養細胞の核が未受精卵に挿入され、精子による受精なしで未受精卵の発生が開始された。この卵を培養皿で7日間培養した後、代理母として用意したC品種の雌の子宮に移植した。約5ケ月後、この雌からクローン子羊が誕生した。

fukuoka-2013-biology-1-1
  • 問1 この実験から生まれる子羊の品種と性として適切なものを、次(イ)~(へ)から選び、記号で答えよ。
    • (イ)A品種の雌
    • (ロ)A品種の雄
    • (ハ)B品種の雌
    • (ニ)B品種の雄
    • (ホ)A品種とB品種のキメラの雌
    • (へ)A品種とB品種のキメラの雄
  • 問2 この実験で用いる未受精卵は第一極体を放出したものであるが、この時期の卵のことを何と呼ぶか。解答欄aに答えよ。また、体細胞のG1期の核当たりのDNA量を2としたときに、この卵の持つDNA量はどれだけか。解答欄bに答えよ。
  • 問3 この実験でかけた高電圧と同じように、動物細胞どうしを融合させるときに使われる物質を、次の(イ)~(ニ)から1つ選び、記号で答えよ。
    • (イ)セルラーゼ
    • (ロ)サイトカイニン
    • (ハ)制限酵素
    • (二)ポリエチレングリコール
  • 問4 次の(イ)~(ニ)の生物のうち、クローンではないものを選び、記号で答えよ。
    • (イ)ナズナの同じ個体の葉と茎から細胞を単離し、それぞれを培養して育てた植物体
    • (ロ)1匹の雌ガエルが生んだ卵から発生した複数のオタマジャクシ
    • (ハ)ウニの4細胞期の胚の4つの割球を単離して育てた4匹のプルデウス幼生
    • (ニ)1個体から出芽によって増殖した複数のヒドラ
  • 問5 次の(イ)~(ニ)のうち、クローン動物作製の技術ではできないことを1つ選び、記号で答えよ。
    • (イ)遺伝形質のそろった実験動物の作製
    • (ロ)移植に適する臓器の作製
    • (ハ)有用な遺伝子変異の作製
    • (ニ)有用な動物の系統の作製
  • 問6 クローン生物の作製から分かることを、次の(イ)~(ニ)から1つ選び、記号で答えよ。
    • (イ)分化した細胞にも、受精卵と同じ遺伝情報が含まれる。
    • (ロ)分化した細胞には、その細胞に特異的な遺伝情報のみが残される。
    • (ハ)細胞の分化は、その細胞特異的な細胞質決定因子で決まる。
    • (ニ)細胞の運命は誘導現象によって決まる。
  • 問7 自然界では、受精によって得られる子供の染色体の組合わせは膨大なものになる。羊の体細胞の染色体数を$2n$としたとき、受精によって得られる子羊の可能な染色体組み合わせの最大数はどれだけか。ただし、相同染色体間の組換えはないものとする。