福岡大学生物2012年第5問
生物と化学物質の関係に関する次の文章を読み、問1~問7に答えよ。
生物が生産し個体の間で信号として作用する化学物質には、(A)同じ種の動物個体間で作用するものや、種の異なる動物個体間で作用するものもある。後者はアレロケミカルと呼ばれ、さらに、(B)化学物質を生産する側に利益をもたらすアロモン、化学物質を受容する側に利益をもたらす力イロモン、両者に利益をもたらすシノモンに分けられる。
動物と植物の間でもこの様な化学物質を介する複雑な相互関係が見られる。農作物の害虫のある種のハダ二はマメ科の植物であるリママメの葉を食べる(加害)が、ある種の捕食ダニに捕食される。捕食ダ二には眼がないので、匂いを手がかりにハダ二を探す。これらの関係と化学物質の関わりについて図1に示すY字迷路を用いて[実験1]~[実験4]を行なった。迷路の分岐管の先端近くの箱Iと箱IIにはリママメの葉(ダニは除く)を一定量入れ、その開口部から迷路の入口に向けて脱臭した空気を流す。実験では入口に1個体ずつ置いたハダ二または捕食ダ二が分岐点まで進んだところで、どちら側の分岐管に入るかを調べる。この実験をそれぞれの組み合わせ毎に多数の個体で行ない、統計的に検定した。
- [実験1] 箱Iにハダ二に加害されていないリママメの葉(未加害葉)、箱IIに砂で擦って傷を付けた未加害葉を入れると、捕食ダ二は有意な選択を示さなかった。
- [実験2] 箱Iに未加害葉、箱IIに300匹のハダニが加害したリママメの葉(加害葉)を入れると、捕食ダ二は箱IIをハダニは箱Iを有意に選択した。
- [実験3] 箱Iに未加害葉、箱IIに100匹のハダ二による加害葉を入れると、捕食ダ二は箱IIを有意に選択したが、ハダニは有意な選択を示さなかった。
- [実験4] 箱Iに未加害葉、箱IIに20匹のハダ二による加害葉を入れると、ハダニは箱IIを有意に選択したが、捕食ダ二は有意な選択を示さなかった。
- 問1 系統分類上でダニと最も近い動物を、次の(イ)~(へ)から1つ選び、記号で答えよ。
- (イ) アブラムシ
- (ロ) ノミ
- (ハ) クモ
- (ニ) ダンゴムシ
- (ホ) ミジンコ
- (へ) シラミ
- 問2 下線部(A)の化学物質を何と呼ぶか。
- 問3 下線部(B)に関して植物が分泌する化学物質が周囲の植物の生育に影響をおよぼす現象を何というか。
- 問4 [実験1]と[実験2]から言えることを、次の(イ)~(ニ)から1つ選び、記号で答えよ。
- (イ) 捕食ダニを誘引する物質は、ハダ二が放出する。
- (ロ) 捕食ダ二を誘引する物質は、普段からリママメの葉の中に存在する。
- (ハ) 捕食ダニを誘引する物質は、ハダニに加害されることでリママメの葉の中につくられる。
- (ニ) 捕食ダニを誘引する物質は、ハダニが捕食されることでリママメの葉の中につくられる。
- 問5 [実験2]~[実験4]から捕食ダ二の誘引について考えられることを、次の(イ)~(ニ)から1つ選び、記号で答えよ。
- (イ) 加害するハダニの密度が大きいほど誘引効果が高い。
- (ロ) 加害するハダニの密度が小さいほど誘引効果が高い。
- (ハ) 加害するハダニの密度が中程度のときに誘引効果は最も低い。
- (ニ) 加害のハダニの密度と誘引効果の間には何の関係もない。
- 問6 ハダニにとって、捕食ダニを誘引する化学物質は不利な要素と見えるが、見方をかえると別の意味も考えられる。[実験2]~[実験4]から考えられることを、次の(イ)~(ニ)から1つ選び、記号で答えよ。
- (イ) 捕食ダ二による捕食が始まる前にハダニに逃避行動を起こす信号となる。
- (ロ) ハダ二を集合させることで繁殖を強める。
- (ハ) ハダニを分散させ密度を調節する。
- (ニ) 捕食ダ二がある加害葉に集中することで、他の加書葉でのハダニの捕食が選けられる。
- 問7 捕食ダ二を誘引する化学物質はリママメと捕食ダニにとって下線部(2)の3つのタイプのどれにあたるか。