兵庫医科大学生物2012年第2問

次の文章を読み、(1)から(4)の問いに答えよ。

ほ乳動物の初期発生に関する理解は、1961年にタルコフスキ一博士が発表した以下の実験が契機となり、その後大きく進んだ。

マウスの卵管から2個の8細胞期胚を取り出し、8細胞期胚を包む外側の膜(透明帯)を除いた。この2個の8細胞期胚を顕微鏡下で互いに押しつけたところ、2個が融合して、1個の大きな細胞の塊(胚)になった。この大きな胚を、培養液中で胚盤胞(着床直前の状態)まで育てた。この胚盤胞は、通常の2倍の大きさであった。この胚盤胞を、別途用意した偽妊娠マウス(仮親)の子宮に移植し、着床させた。この2倍の大きさの胚盤胞に由来したマウスは、2倍の大きさのマウスではなく、正常の大きさと形をもったマウス個体であった。

その後、大きな胚を発生させるのとは逆に、小さな胚を発生させる実験も行われた。すなわち、8細胞期胚のときに割球数を半分にし、培養液中で胚盤胞まで育てた後、胚盤胞を仮親の子宮に移植し、着床させたのである。この場合、胚盤胞は通常より小さかったが、正常の大きさと形をもったマウス個体が生まれた。

  • (1) 上記の実験から、ほ乳類胚のきわだつ発生の特徴が明らかになった。それはどういうことか、述べよ。
  • (2) 毛色が茶色のマウス(遺伝子型AA)同士の交配によって生じた8細胞期胚1個と、毛色が黒色のマウス(遺伝子型aa)同士の交配によって生じた8細胞期胚1個を用意し、上記下線部の実験を行ったとき、生まれてくるマウスの毛色はどうなるか。可能性がある毛色をすべて挙げよ。なお、遺伝子Aは遺伝子aに対して優性である。
  • (3) (2)の実験で生まれたマウスを、黒色のマウス(遺伝子型aa)と交配したとき、生まれてくるマウスの毛色はどうなるか。可能性がある毛色をすべて挙げよ。
  • (4) 上記の応用として、牛の桑実胚1個を、5個に切り分けて、異なる母牛の子宮で発生させ、5個体の牛を生ませることが行われた。この5個体は「クローン牛」といえるか、理由とともに述べよ。