慶應義塾大学生物2013年第3問

以下の文章を読んで、問1~問9に答えなさい。

ヒトのからだの内側の細胞・組織は、直接外界と接することはなく、体液に囲まれており(ア) を構成している。この(ア)の変化を最小限にし、体液の量や酸素濃度、pH、グルコース濃度、体温などを一定に保つ働きを(イ)という。この働きのための臓器の一つである腎臓は、体液中の老廃物を尿として体外に排出する機能を持つ。この尿を生成する構造上の単位である腎単位 (ネフロン)は、一端にある(ウ)とそれに続く細尿管から構成されている。(ウ)では、血液から原尿が生成されるが、この原尿の成分は、タンパク質をほとんど含まないこと(1)を除けば血漿(けっしょう)とほぼ同一である。

  • 問1 空欄(ア)~(ウ)に適切な術語を入れなさい。
  • 問2 (ウ)は、原尿を生成するために必要な構造として2つの部分から構成されている。その2つを答えなさい。
  • 問3 図1は(ウ)の一部を組織切片として顕微鏡で観察した像である。下線(1)が可能となるためには、(ウ)のどのような構造が必要と考えられるか。必要な細胞あるいは構造物を図1のa~dから選び、選んだ記号を含めた解答文としなさい。なお、a、c、dは細胞を、bは構造物を指す。
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ヒト腎臓の(ウ)を単離後、その組織をすりつぶしマウスの腹腔内に投与した。この投与を2ヶ月間にわたり毎週繰り返したマウスから血清を採取し、ヒト腎臓の(ウ)と反応させたところ、その一部と結合する(エ)が含まれていることがわかった。そこで、このマウスのリンパ球から、(エ)を作る機能を持つ(オ)細胞を取り出して、ポリエチレングリコール$\underline{(\text{PEG})}$が含まれた培養液中で、増殖性に優れたマウスがん細胞とともに細胞培養し、(エ)を作り続け、継続して増殖する能力を獲得したX細胞を多種類得た(2)。そこで、それらのうち4種類の細胞(Xa、Xb、Xc、Xd)のそれぞれの培養液とヒト腎臓の(ウ)を反応させたところ、図1のa、b、c、dとそれぞれ結合する(エ)が培養液に含まれていることがわかった(3)

  • 問4 空欄(エ)と(オ)に適切な言葉を入れなさい。
  • 問5 下線(2)は、バイオテクノロジーでよく使われる方法である。何と呼ばれる方法か。さらに、その内容も説明しなさい。
  • 問6 下線(3)において、細胞Xa、Xb、Xc、Xdの培養液に含まれていたものが、図1のa、b、c、dとそれぞれ結合した理由について説明しなさい。ただし、ヒト腎臓の(ウ)をマウスの腹腔内に繰り返し投与した後に(オ)細胞を取り出して下線(2)の実験を行ったことを踏まえた説明とすること。

次に、このXa細胞およびXb細胞の培養液を、ヒトの動脈および毛細血管から得た組織標本(図2参照) と反応させて結合するかどうかを調べたところ、これらの組織の一部に結合することがわかった。

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  • 問7 Xa細胞およびXb細胞の細胞培養液が、それぞれ結合した可能性が高い部分を図2のe~jから選択せよ。なおe、g、h、iは細胞を、f、jは構造物を指す。

次に、Xb細胞の細胞培養液をマウス腎臓と反応させてみたところ、図1で示したヒト腎臓での構造物bと相同な部分に結合が見られたため、Xb細胞の培養液から(エ)を取り出して精製した。その精製した(エ)をマウスに20週間毎日投与したところ、マウス腎臓の(ウ)は時間とともに図3のように変化していた。

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  • 問8 (エ)の連続投与後のマウス腎臓の(ウ)では、図3で示す構造物bに変化が見られ、図3で示すkのような肥厚あるいは断裂が観察され、図3で示すaおよびdの細胞の一部にも変化が観察された。図3で示すkはどのようなものと推測されるか。また図3で示す構造物bの変化の原因を推測しなさい。
  • 問9 Xb細胞の培養液から精製した(エ)をマウスに20週間毎日投与しつづけた後、尿の組成がどう変化するか推測し述べよ。