慶應義塾大学化学2013年第4問
互いに混じり合わない溶媒への溶解度の違いを利用して、水溶液に溶解した化合物を有機溶媒相へ抽出することができる。この操作について、以下の問いに答えなさい。
化合物Xは水にも有機溶媒にも溶解し、これらが十分に撹拌されて平衡に達した際、その溶解度の比は、分配係数P=(有機溶媒相の濃度)/(水相の濃度)で表すことができる。化合物Xが$1.00\times10^{-3}$mol/Lの濃度で溶解した水溶液Aが100mLある。この水溶液Aから化合物Xを有機溶媒相に抽出する実験を行う。
- 1.このような水溶液からの物質の抽出操作に用いる有機溶媒として不適当と考えられるものはどれか。記号で答えなさい。
- (ア)クロロホルム
- (イ)ヘキサン
- (ウ)ベンゼン
- (エ)エタノール
- (オ)ジエチルエーテル
- 2.100mLの水溶液Aに有機溶媒を100mL加え、良く撹拌した後静置し、有機溶媒相と水相を分離させた。有機溶媒相に含まれる化合物Xの物質量を、分配係数Pを用いて答えなさい。
- 3.上記2の操作の代わりに100mLの水溶液Aに有機溶媒を50.0mL加えて1回目の抽出を行い、有機溶媒相を分取した後、残った水相に新たに有機溶媒50.0mLを加えて2回目の抽出を行った。これら1回目、2回目の抽出操作によって有機溶媒相に回収される化合物Xの物質量を、分配係数Pを用いて答えなさい。
- 4.分配係数Pが2.00であった場合、上記3の2段階の抽出作業を行うことによって、上記2の1段階の抽出作業のみの場合に比して、化合物Xの抽出量は何%増加するか答えなさい。
- 5.実際の抽出操作では、水相の混入を防ぐために、水相、有機溶媒相共に、各操作において全量は回収しなかった。分配係数2.00の化合物Xは、上記3の50.0mLの2回の抽出操作を行った場合、回収率が何%以上あれば、上記2の100mLの1回の抽出操作による収量を超えることができるか、導出過程も併せて答えなさい。但し、各操作において、水相および有機溶媒相の回収率は同じであるものとする。