慶應義塾大学化学2012年第3問

次の文を読み、設問に答えよ。

1価のカルボン酸Aと1価のアルコールBを酸触媒下で加熱し、縮合させると化合物Cが生成した。

化合物Cの元素分析を行ったところ、質量百分率で炭素66.6%、水素11.2%という結果が得られた。なお、分子量は200以下であることがわかっている。

一方、化合物Bを二クロム酸カリウムの希硫酸溶液と反応させると、生成物として化合物Dのみが得られ、これはフェーリング液を呈色させなかった。また、化合物Bに濃硫酸を加えて160℃に熱すると、生成物として化合物Eのみが得られ、これは臭素水を脱色した。

  1. 化合物Cの組成式と分子式を求めよ。
  2. 化合物の構造に関する以下の問いに答えよ。
    • (i)化合物B、D、Eの化合物名と構造式を記せ。
    • (ii)化合物Aには構造異性体が存在する。
      • 1)構造異性体のうち、カルボン酸はいくつ考えられるか。光学異性体を含まない数で答えよ。
      • 2) 1)の中で不斉炭素原子をもつ化合物はいくつあるか。
      • 3) 2)のうち、一つの化合物の構造式を描け。不斉炭素原子には元素記号の右肩に*を付けよ。
  3. 実際には1molの化合物Aと1molの化合物Bから得られる生成物Cは1molにはならない。これは、反応が(a)化学平衡に支配されているからである。このことを理解するために、以下のような条件で実験を行った。

    10.2gの化合物Aと6.00gの化合物Bに2.68mLの濃硫酸を加え、ある温度で1時間加熱した。反応液を室温まで冷まし、2.00mol/L炭酸ナトリウム水溶液50mL中に加えた。これをよく振った後、二層に分かれたので、水層のみを取り出してメスフラスコに移し、純水を加えて100mLとした。その5.00mLを分取し、純水45.0mLを加えた。この溶液を0.200mol/L塩酸で滴定したところ、完全に中和するまでに15.0mLを要した。ただし、化合物Cは水層に溶解せず、有機層は化合物Cのみを含むものとする。

    なお、濃硫酸の密度を1.83g/mLとし、化合物A、B、濃硫酸の純度は100%とみなして計算せよ。また、化合物を混合するときの微小な体積変化は無視し、化合物がガラス器具等に付着するなどの実験操作上の損失はないものとせよ。

    • (i)下線部(a)は、どのような状態か、簡潔に記せ。
    • (ii)反応後に残存する化合物Aの物質量はいくらか。導出の方針と、計算過程も簡潔に記せ。
    • (iii)平衡定数を計算せよ。導出過程も簡潔に記せ。