近畿大学生物2012年第3問
生物の持つ形や機能などの特徴をアと呼び、親から子へと遺伝するアのもととなる因子を遺伝子と呼ぶ。動物に見られる複雑なアの中にも、単一の遺伝子によって決定されているものがいくつもある。ヒトにおけるABO式血液型はその例である。染色体上の同じ位置に存在する遺伝子について、一つの種の中で複数の異なるアを決定するものが存在する場合、それらは互いにイの関係にあると言われる。
ハツカネズミにおける特定のウイルスVに対する感染抵抗性も、単一の遺伝子による制御を受けるアである。系統AのハツカネズミはウイルスVに対して感受性で、感染すると2ヶ月以内に死亡する。一方、別の系統BのハツカネズミはウイルスVに抵抗性で、(1)一旦は感染するものの、その後体内からウイルスを排除してしまい、死亡することはない。系統Aと系統Bの個体を掛け合わせて、雑種第1代(F1)の仔を得た。(2)F1の個体は、全てウイルスVの感染に対して抵抗性であった。一方、(3) F1の個体を系統Aの個体と交配すると、得られた仔のうち半数はウイルスVの感染に抵抗性、残り半数は感受性であった。
ウイルスVに対する感染抵抗性のアを決定する遺伝子を同定して、その塩基配列を決定したところ、系統Aでも系統Bでも、(4)細胞質でタンパク質の合成に関わっているmRNAを構成している部分の配列(これをウという)が9ヶ所、それらの間をつないでいるが、細胞質でタンパク質の合成に関わっているmRNAの配列には対応しない部分(これをエという)が8ヶ所あることがわかった。ところが、この遺伝子の産物であるタンパク質を分離して調べると、系統Aの細胞から分離されたタンパク質の方が系統Bの細胞から分離された同じ遺伝子産物のタンパク質より少し大きく、系統Bの細胞で発現するタンパク質では4番目のウに相当するアミノ酸配列のあとに6番目のウに対応するアミノ酸配列が認められ、5番目のウに対応する部分だけがそっくり抜け落ちていた。
- 問1. 文章中のア~エに入る最も適切な語句を、解答欄に記入せよ。
- 問2. 下線部(1)から、ウイルスVに対する感染抵抗性を決定する遺伝子は、動物の持つどのような機能を介して作用すると考えられるか。
- 問3. 下線部(2)から、ウイルスVに対する感染抵抗性を決定する遺伝子について、劣性のアは何か。
- 問4. 下線部(3)のような交配の方法を何と呼ぶか。
- 問5. 系統Aの個体と系統Bの個体を掛け合わせて得たF1個体同士を交配すると、得られた子孫個体中でウイルスVの感染に対して抵抗性のものは何パーセントになると予想されるか。
- 問6. 下線部(4)のmRNAには、タンパク質の合成に関わるある細胞内構造が結合している。それは何か。
- 問7. 核のDNA上にはウとエの両方の配列がひとつながりに存在するが、タンパク質が合成される場に存在するmRNAにはエがない。DNAの転写産物からエを取り除く過程を何と呼ぶか。 また、それは細胞内のどこで起こるか。
- 問8. 系統BはウイルスVの感染に対して抵抗性であるから、系統Bの細胞で発現し、感染抵抗性に関与するタンパク質は、5番目のウが存在しないにもかかわらず、ウイルスVの排除を促進するような機能を持つはずである。5番目のウが抜け落ちても、6番目のウ以降のアミノ酸配列が4番目のウに続いてそのまま翻訳されるためには、5番日のウがその長さについてある条件を満たす必要がある。それは何か。25字以内で答えよ。
- 問9. ウイルスVに対する感染抵抗性を決定する遺伝子の産物であるタンパク質について、系統Aと系統Bでその大きさが異なるのは、それぞれの対立遺伝子の間でどのような機能を持つ部分に違いがあるためと考えられるか。50字以内で答えよ。
- 問10. ウイルスVはハツカネズミに比較的簡単に感染するウイルスであり、どのようなハツカネズミの集団もウイルスVに感染する機会を頻繁に持つと仮定する。また、ハツカネズミ集団における、系統Aで発現するイと系統Bで発現するイの遺伝子頻度は、現時点でほぼ等しいとする。今後年月が過ぎる間に、これら二つのイの遺伝子頻度はどのように変化していくと予想されるか。25字以内で答えよ。