北里大学生物2013年第1問

遺伝学の発展に関する次の文を読み、以下の問に答えなさい。

1865年、メンデルはaエンドウの7組の対立形質に着目して交配実験を行い、遺伝の法則を発見した。サットンは(ア)の研究から、メンデルが仮定した遺伝子が染色体に存在するという考えを提唱した。これは(イ)説と呼ばれている。その後、モーガンらはキイロショウジョウバエの交配実験から、連鎖詳と相同染色体の対の数が一致していることを明らかにし、(イ)説に根拠を与えた。

遺伝子の本体は、肺炎双球菌やバクテリオファージを用いた実験により明らかにされた。1928年、グリフィスは、肺炎双球菌の病原性があるS型菌を加熱殺菌してからネズミに注射しても発病しないが、加熱殺菌したS型菌を生きている非病原性のR型菌とともに注射するとネズミは発病し、体内からS型菌が検出されることを確かめた。この発見をアベリー(エイブリー)らが受け継ぎ、bS型菌のDNAによってR型菌の遺伝形質が変化することを確かめた。しかし当時は、多くの研究者が(ウ)種類の塩基しかもたないDNAより、(エ)種類のアミノ酸から構成されるタンパク質の方が、遺伝子の本体としてふさわしいと考えていた。

1952年、ハーシーとチェイスは、cT2ファージのDNAと外殻のタンパク質を放射性同位元素$\underline{^{32}\text{P}}$と$\underline{^{35}\text{S}}$を用いて標識し、これを大腸菌に感染させて、大腸菌の内部に侵入するのはDNAとタンパク質のどちらなのかを調べた。彼らは、d標識したT2ファージを大腸菌に感染させて2~3分後に激しく撹拌し、すぐ遠心分離した。この結果、大腸菌は沈殿しファージのタンパク質のほとんどは上澄みに集まったが、ファージのDNAは沈般した大腸菌の分画中からも検出された。さらに、沈段した大腸菌から20~30分後に多数の子ファージが現れた。このようにして、遺伝子の本体がDNAであることが証明された。

DNAが遺伝子の本体であることの解明とともに、DNAの構造も解明されていった。シャルガフは多くの生物のDNAの塩基組成を調べ、e一定の規則性を発見した。1953年にワトソンとクリックが、fDNAの二重らせん構造のモデルを提唱し、1958年にはメセルソンとスタールが、gDNAの複製の方法を密度勾配遠心法(遠心管内にできる密度勾配を利用する方法)により解明した。1960年頃になると、多くの研究者によって、h遺伝暗号の解読の研究が行われるようになり、1960年代の半ばには、64種類のコドンがすべて解読された、

  • 問1 下続部aの形質のうち、雑種第二代(F2)の表現型が同一株内で分離する形質として、最も適切な組み合わせを答えなさい。$\fbox{1}$
    • (1)子葉の色、種子の形
    • (2)子葉の色、種皮の色
    • (3)子葉の色、さやの形
    • (4)子葉の色、さやの色
    • (5)種子の形、種皮の色
    • (6)種子の形、さやの形
    • (7)種子の形、さやの色
    • (8)種皮の色、さやの形
    • (9)種皮の色、さやの色
    • (10)さやの形、さやの色
  • 問2 文中の(ア)と(イ)に当てはまる語として、最も適切な組み合わせを答えなさい。$\fbox{2}$
    • (1)ア.体細胞分裂 イ.遺伝子
    • (2)ア.減数分裂 イ.遺伝子
    • (3)ア.染色体地図 イ.遺伝子
    • (4)ア.体細胞分裂 イ.染色体
    • (5)ア.減数分裂 イ.染色体
    • (6)ア.染色体地図 イ.染色体
  • 問3下線部bの現象をPとする。また、R型菌のみを培養してもS型菌が生じることがある。この際に起こった現象をQとする。PとQに当てはまる名称として、最も適切な組み合わせを答えなさい。$\fbox{3}$
    • (1)P.形質導入 Q.形質転換
    • (2)P.形質導入 Q.突然変異
    • (3)P.形質導入 Q.環境変異
    • (4)P.形質転換 Q.形質導入
    • (5)P.形質転換 Q.突然変異
    • (6)P.形質転換 Q.環境変異
    • (7)P.突然変異 Q.形質導入
    • (8)P.突然変異 Q.形質転換
    • (9)P.突然変異 Q.環境変異
    • (10)P.環境変異 Q.形質導入
    • (11)P.環境変異 Q.形質転換
    • (12)P.環境変異 Q.突然変異
  • 問4 文中の(ウ)と(エ)に当てはまる数として、最も適切な組み合わせを答えなさい。$\fbox{4}$
    • (1)ウ.4 エ.8
    • (2)ウ.4 エ.10
    • (3)ウ.4 エ.16
    • (4)ウ.4 エ.20
    • (5)ウ.5 エ.8
    • (6)ウ.5 エ.10
    • (7)ウ.5 エ.16
    • (8)ウ.5 エ.20
  • 問5 下線部cについての記述として最も適切なものを答えなさい。$\fbox{5}$
    • (1)DNAが$^{32}\text{P}$で、タンパク質が$^{35}\text{S}$で標識される。
    • (2)DNAが$^{35}\text{S}$で、タンパク質が$^{32}\text{P}$で標識される。
    • (3)DNAとタンパク質のいずれもが$^{32}\text{P}$と$^{35}\text{S}$の両方で標識される。
    • (4)DNAだけが$^{32}\text{P}$と$^{35}\text{S}$で標識され、タンパク質は標識されない。
    • (5)DNAは標識されず、タンパク質だけが$^{32}\text{P}$と$^{35}\text{S}$で標識される。
  • 問6 以下の文は、下線部dに関連した記述である。適切な記述の組み合わせを答えなさい、なお、標識するT2ファージを親ファージと表記し、この遠心分離の操作では、大腸菌に吸着していないファージは、沈殿しないものとする。$\fbox{6}$
    • A.$^{35}\text{S}$と$^{32}\text{P}$で親ファージを標識すると、子ファージにも$^{35}\text{S}$と$^{32}\text{P}$が含まれる。
    • B.$^{35}\text{S}$だけで親ファージを標識すると、子ファージには放射性同位元素は含まれない。
    • C.$^{32}\text{P}$だけで親ファージを標識すると、子ファージには放射性同位元素は合まれない。
    • D.標識された親ファージの全$^{35}\text{S}$に対する上澄みの$^{35}\text{S}$の割合は、撹拌しない場合よりも撹拌する方が大きくなる。
    • E.標識された親ファージの全$^{35}\text{S}$に対する沈殿の$^{35}\text{S}$の割合は、撹拌しない場合よりも撹拌する方が大きくなる。
    • (1)A、B
    • (2)A、C
    • (3)A、D
    • (4)A、E
    • (5)B、C
    • (6)B、D
    • (7)B、E
    • (3)C、D
    • (9)C、E
    • (10)D、E
  • 問7 2種類のバクテリオファージ(XとY)の遺伝子の本体の塩基の含量比(塩基の数の劃合、%)を調べたところ、表1に示す結果が得られた。下線部eの規則性についての以下の問に答えなさい。
    表1
    アデニン(A)
    チミン(T)
    シトニン(C)
    グアニン(G)
    ファージX
    26
    $\fbox{7}$
    $\fbox{8}$
    $\fbox{9}$
    ファージY
    24
    31
    25
    20
    • 1.ファージXの塩基の含量比(%)は、下線部eの規則性に従っている。表1の$\fbox{7}$~$\fbox{9}$に最も適切な数値をそれぞれ答えなさい。なお、同じ選択肢を複数回答えてもよい。
      • (1)20
      • (2)21
      • (3)22
      • (4)23
      • (5)24
      • (6)25
      • (7)26
      • (3)27
      • (9)28
      • (10)29
      • (11)30
      • (12)31
    • 2.ファージYの塩基の含量比(%)は、下線部eの規則性に従っていない。この理由としてどのような可能性が考えられるか、最も適切な記述を答えなさい。$\fbox{10}$
      • (1)ファージYの遺伝子の本体は、一本鎖のDNAである。
      • (2)ファージYの遺伝子の本体は、一本鎖のRNAである。
      • (3)ファージYの遺伝子の本体は、二本鎖のDNAである。
      • (4)ファージYの遺伝子の本体は、二本鎖のRNAである。
  • 問8 下線部fの二重らせん構造中のある領域における片方の鎖の塩基の含量比(%)が、Aが29.3%、Tが30.l%、Cが20.5%、Gが20.1%であった場合、この領域の二重らせん構造中の両方の鎖の塩基のうち、Gが占める割合として最も適切なものを答えなさい。$\fbox{11}$
    • (1)20.1%
    • (2)20.3%
    • (3)20.5%
    • (4)21.5%
    • (5)24.6%
    • (6)25.6%
    • (7)29.3%
    • (8)29.7%
    • (9)29.9%
    • (10)30.1%
  • 問9 下線部gに関する次の文を読み、以下の問に答えなさい。

    窒素源としては$^{15}\text{NH}_4\text{Cl}$だけを含む培地で大腸菌を培養し、大腸菌のすべての窒素が$^{15}\text{N}$に置きかわったところで、この大腸菌を窒素源として$^{14}\text{NH}_4\text{Cl}$だけを含む培地に移して増殖させた。一定時間ごとに大腸菌からDNAを抽出して、下線部gの方法によりDNAの密度を調べたところ、図のような結果が得られた。すなわち、最初は$^{15}\text{N}$-DNAのみ(図のcの位置)であったが、$^{14}\text{NH}_4\text{Cl}$だけを含む培地に移して50分後には$^{15}\text{N}$-DNAと$^{14}\text{N}$-DNAの中間の密度(図のbの位置)となり、100分後には中間の密度のDNAと$^{14}\text{N}$-DNA(図のaの位置)が半分ずつとなった。

    kitazato-2013-biology-1-1
    • 1.図の遠心管におけるaの位置とbの位置のDNAの量比が7:1になるのは、理論上$^{14}\text{NH}_4\text{Cl}$だけを含む培地に移して何分後か、最も適切な時間を答えなさい。$\fbox{12}$
      • (1)75分
      • (2)90分
      • (3)125分
      • (4)150分
      • (5)175分
      • (6)200分
      • (7)300分
      • (8)400分
    • 2.大腸菌がn回分裂した直後における、全DNAに対する中間の密度のDNAの割合を表す式として、最も適切なものを答えなさい。$\fbox{13}$
      • (1)$\dfrac{1}{3^{n-1}-5}$
      • (2)$\dfrac{1}{2^{2n-2}}$
      • (3)$\dfrac{1}{2^n}$
      • (4)$\dfrac{1}{2^{n}-4}$
      • (5)$\dfrac{1}{2^{n-1}}$
      • (6)$\dfrac{1}{n-1}$
      • (7)$\dfrac{1}{3n-5}$
      • (8)$\dfrac{1}{2n-2}$
  • 問10 下線部hの遺伝暗号解読の研究に、塩基としてウラシル(U)とグアニン(G)だけを5:1の量比(分子数の比)で含み、塩基の配列順序がランダム(不規則)な人口RNAを合成し、このRNAを用いて合成したポリペプチドのアミノ酸を定量的に調べた実験がある。ポリペプチドに取り込まれたアミノ酸のうちで、最も多いものと最も少ないものの量比(分子数の比)として、最も適切なものを答えなさい。なお、アミノ酸とコドンとの関係は表2の通りである。$\fbox{14}$
    表2
    アミノ酸
    コドン
     フェニルアラニン  UUU
     ロイシン UUG
     システイン UGU
     バリン GUU、GUG 
     トリプトファン  UGG
     グリシン GGU、GGG 
    • (1)4:1
    • (2)5:1
    • (3)6:1
    • (4)9:1
    • (5)l6:1
    • (6)20:1
    • (7)25:1
    • (8)64:1
    • (9)125:1
    • (10)216:1