久留米大学化学2013年第3問

フェノールは、1867年ジョセフ・リスターによって最初に用いられた抗敗血症剤である。フェノールは、工業的には、ベンゼンをプロペンでアルキル化してクメンをつくり、これを酸素で酸化して化合物Aとしてから希硫酸で分解することで製造される。このとき副生成物として化合物Bが生成する。(a)化合物Bは酢酸カルシウムの乾留によって得られる化合物と同一である。一方、クメンを過マンガン酸カリウム水溶液とともに加熱して酸化すると防腐剤などに利用される酸性の化合物Cが生成する。フェノールは、実験室的には、(b)ベンゼンスルホン酸ナトリウムをアルカリ融解(水酸化ナトリウムとともに約340℃で融解)して化合物Dをつくり、これに二酸化炭素を吹き込むことによって合成する。(c)フェノールに濃硫酸と濃硝酸の混酸を作用させると、特定の位置の水素原子が置換され、爆発性の黄色の化合物Eになる。また、化合物Dとヨウ化メチルを無水の状態で加熱すると、非対称エーテルである化合物Fが生じる。
kurume-2013-chemistry-3-1
  • (1)化合物A、C、Eの化合物名を記せ。
  • (2)下線部(a)(b)の化学反応式を記せ。構造式は例にならって書くこと。
  • (3)下線部(c)のように、ベンゼン環にあらかじめ結合している置換基の影響で、次の置換反応の起こる位置が決まることを置換基の配向性というが、フェノールの置換反応と同じ配向性を示す化合物はどれか。下の【 】内から該当する化合物をすべて選び、例にならって構造式で答えよ。
    【クロロベンゼン、ニトロベンゼン、トルエン、アニリン、ベンゼンスルホン酸】
  • (4)化合物Fの構造式を例にならって記せ。また、化合物Fの沸点は、フェノールの沸点(181.7℃)と比べてどうなると予想されるか。解答欄の[高くなる・変わらない・低くなる]の中から適切なものを◯で囲み、その理由を簡潔に述べよ。
  • (5)化合物Dは、クロロベンゼンからも合成することができるが、下線部(b)のようなアルカリ融解法では合成することができない。クロロベンゼンからの合成方法について簡潔に概要を述べよ。また、その理由について、クロロベンゼンとベンゼンスルホン酸ナトリウムの分子としての性質の違いに着目して答えよ。