杏林大学生物2012年第3問

図1は、膝蓋(しつがい)腱反射の神経経路を示した模式図である。膝蓋腱反射は、膝のお皿(膝蓋)の下をゴム製のハンマーで軽く叩くと、大腿四頭筋内の受容器Aが反応して起こる反射である。大腿四頭筋を支配する神経には、膝蓋腱反射の神経経路を構成する感覚神経と運動神経の両方の神経繊維が複数並走している。S1あるいはS2の位置で、瞬間的に電気刺激を神経に与えて、大腿四頭筋を収縮させる実験を行った。記録電極を大腿四頭筋上の皮膚にはり付けて、筋収縮に先立って筋繊維に発生する活動電位(筋電図)を筋電図測定装置(R)で記録する、以下の問1~問7に答えよ。
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  • 問 1 膝蓋腱反射に関する以下の文章(1)~(6)から正しいものを二つ選べ。$\fbox{ア}$
    • (1) Aは、パチー二小体である。
    • (2) Aは、筋の伸張に反応する。
    • (3) Bは、背根である。
    • (4) 運動神経末端からアセチルコリンが放出される。
    • (5) 膝蓋腱反射により、膝関節は屈曲する。
    • (6) 痛み刺激から逃避する目的で起こる反射である。
  • 問 2 図1のS1あるいはS2の位置で、瞬問的に電気刺激を神経に与えた時、弱い強度の電気刺激では、刺激部位において感覚神経の神経繊維のみに活動電位が発生し、強い強度の電気刺激では、感覚神経と同時に運動神経の神経繊維にも活動電位が発生することが知られている、まず、S1の位置で弱い強度の電気刺激を1回神経に与えると、Rで図2の筋電図が記録された。電気刺激は。図中の時問0で与えられた。電気刺激から筋電図波形が発生するまでの反応時間は、25ミリ秒であった。次に、同じS1の位置で強い強度の電気刺激を1回与えると、図3の筋電図が記録された。Cの部位で神経を切断した後、S1の位置で強い強度の電気刺激を1回神経に与えた時、記録される筋電図はどれか。図4 (1)~(6)から一つ選べ。$\fbox{イ}$
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  • 問 3 膝蓋腱反射の神経経路を構成する運動神経と感覚神経の神経繊維の伝導速度をそれぞれ算出するために、以下の実験を行った。この実験では、Cの部位で神経は切断されていない。まず、S1の位置で強い強度の電気刺激を1回神経に与えて、図3(前ページ)の筋電図を記録した。次に、刺激位置をS1からS2に移して、S2で強い強度の電気刺激を1回神経に与えて、感覚神経と運動神経の神経繊維に同時に活動電位を発生させた。S2の刺激により記録される筋電図として、どのような筋電図が予想されるか。図5(1)~(6)から一つ選べ。$\fbox{ウ}$
  • kyorin-2012-biology-3-3
  • 問 4 運動神経の神経繊維末端からS1、S2までの距離は、それぞれ36cm、12cmであった。図3と問3の測定結果から、運動神経と感覚神経の神経繊維の伝導速度は、それぞれ何 m/秒と算出されるか。もっとも適当な数値をそれぞれ以下の(1)~(8)から選べ。
    • 連動神経の神経繊維の伝導速度は、$\fbox{エ}$ m/秒
    • 感覚神経の神経繊維の伝導速度は、$\fbox{オ}$ m/秒
    • (1) 4
    • (2) 6
    • (3) 8
    • (4) 10
    • (5) 40
    • (6) 60
    • (7) 80
    • (8) 100
  • 問 5 運動神経を電気剌激してから筋電図の波形が発生するまでの時間(反応時間)には、活動電位が神経繊維を伝導する時間に加えて、活動電位が運動神経の神経繊維末端に到達してから、伝達物質が放出され、筋繊維の受容体に伝達物質が結合し、筋繊維に活動電位が発生するまでの時間が含まれる。活動電位が運動神経の神経繊維末端に到達してから、筋繊維に活動電位が発生するまでに何ミリ秒かかるか。もっとも適当な数値を以下の(1)~(6)から一つ選べ。なお、電気刺激は瞬間的で、刺激部位で電気刺激を与えてから神経繊維に活動電位が発生するまでの時間は無視する。$\fbox{カ}$
    • (1) 0.5
    • (2) 1
    • (3) 2
    • (4) 5
    • (5) 6
    • (6) 7
  • 問 6 新たな実験として、2回連続して神経を電気刺激する実験を行った。この実験では、Cの部位で神経は切断されていない。S1の位置で弱い強度の電気刺激を1回神経に与えて、さらに 1ミリ秒後にもう一度S1で同じ弱い強度の電気刺激を行った。この時どのような筋電図が記録されるか。図6(1)~(6)からもっとも適当なものを一つ選べ。図6中の矢印は2回の電気刺激を与えた瞬間を示している。$\fbox{キ}$
  • kyorin-2012-biology-3-4
  • 問 7 問6で起こった現象を説明する文章として正しいのはどれか。以下の文章(1)~(6)から一つ選べ。$\fbox{ク}$
    • (1) 1回目の刺激で、刺激部位の神経繊維は不応期になった。
    • (2) 1回目の刺激で、シナプスにおける伝達物質が枯渇した。
    • (3) 1回日の刺激で、筋肉疲労を起こした。
    • (4) 2回の刺激で、2回続けて筋繊維に活動電位が発生した。
    • (5) 2回の刺激で、活動電位の伝導が速くなった。
    • (6) 2回の弱い強度の刺激は、強い強度の刺激1回分になった。