杏林大学生物2012年第2問
ショウジョウバエの眼色は、褐色系と朱色系の2種類の色素により決まっている。これらの色素の合成・連搬経路に関与する遺伝子の異常により様々な眼色を示す突然変異体となる。2つの色素系の合成が正常である野生型の眼は、褐色がかった赤い眼であるが、上記の2つの色素合成・運搬経路それぞれに関与する2つの遺伝子の突然変異によっても、また1つの突然変異によっても白眼になる場合がある。白眼の3種類の純系の変異体系統(AとBとC)と純系の野生型系統を用い交配を行ったところ以下の実験結果(1~3)が得られた。以下の問1~問10に答えよ。なお、ショウジョウバエの雄では減数分裂期の乗換えは起こらない。
[実験1] 2つの突然変異により白眼となっているA系統の雌を野生型の雄に交配したところ。得られた$\text{F}_1$(雑種1代)は、雌雄ともすべて野生型の眼であった。この野生型の眼をした$\text{F}_1$の雌を白眼のA系統の雄に交配したところ、4種類の眼色、野生型、朱色眼、褐色眼、白眼、の個体が下記のように現れた。しかし、同時に得られた$\text{F}_1$の雄を白眼のA系統の雌に交配したところ、雌雄とも野生型と白眼の2種類の個体しか現れなかった。
- 問 1 実験1に用いた白眼の系統(A)の持つ突然変異遺伝子はどのような性質のものか、最も適切なものを以下の(1)~(4)から一つ選べ。$\fbox{ア}$
- (1) 2つの突然変異遺伝子とも常染色体優性である。
- (2) 2つの突然変異遺伝子とも常染色体劣性である。
- (3) 2つの突然変異遺伝子は、それぞれ常染色体と性染色体にある。
- (4) 2つの突然変異遺伝子とも、性染色体にある。
- 問 2 A系統の2つの突然変異は、どの染色体上にあるか、最も適切なものを以下の(1)~(5)から一つ選べ。$\fbox{イ}$
- (1) 2つの突然変異遺伝子は、それぞれ異なる染色体上にある。
- (2) 2つの突然変異遺伝子は、X染色体上の近接した領域にある。
- (3) 2つの突然変異遺伝子は、X染色体上のかなり離れた領域にある。
- (4) 2つの突然変異遣伝子は、同じ常染色体上の近接した領域にある。
- (5) 2つの突然変異遺伝子は、同じ常染色体上のかなり離れた領域にある。
- 問 3 なぜ親世代の系統と異なる新しい表現型(朱色眼、褐色眼)が$\text{F}_1$を雌にした時の子供に出現したのか、最も適切なものを以下の(1)~(5)から一つ選べ。$\fbox{ウ}$
- (1) 雌の減数分裂時に、2つの突然変異が独立に分離したから。
- (2) 雌の減数分裂時に、2つの突然変異の間で乗換えが起こったから。
- (3) 雌の減数分裂時に、新しい突然変異が生じたから。
- (4) 雄の減数分裂時に、相同染色体の分離が正常でなかったから。
- (5) 雄の減数分裂期に、2つの突然変異の間で乗換えが起こったから。
- 問 4 A系統の$\text{F}_1$雌を用いた実験1で出現した未交尾の朱色眼の雌と褐色眼の雄を交配した。交配の結果として最も適切なものを以下の(1)~(5)から一つ選べ。$\fbox{エ}$
- (1) 雌はすべて野生型で、雄はすべて白眼であった。
- (2) 雌雄ともすべて野生型であった。
- (3) 雌雄とも、朱色眼と褐色眼の個体が1:1の割合で現れた。
- (4) 雌雄とも、野生型と白眼が1:1の割合で現れた。
- (5) 雌雄とも、野生型、朱色眼、褐色眼、白眼の個体が1:1:1:1の割合で現れた。
- 問 5 実験2の結果を説明するのに最も適切な文章を以下の (1)~(5)から一つ選べ。$\fbox{オ}$
- (1) 2つの突然変異遺伝子は、それぞれ異なる染色体上にある。
- (2) 2つの突然変異遺伝子は、X染色体上の近接した領域にある。
- (3) 2つの突然変異遺伝子は、X染色体上のかなり離れた領域にある。
- (4) 2つの突然変異遺伝子は、同じ常染色体上の近接した領域にある。
- (5) 2つの突然変異遺伝子は、同じ常染色体上のかなり離れた領域にある。
- 問 6 B系続を用いた実験2で現れた$\text{F}_1$の雌雄を交配すると4種類の眼色の個体は、どのような比で現れるのか最も適切なものを以下の(1)~(6)から一つ選べ。$\fbox{カ}$
- (1) 野生型:朱色眼:褐色眼:白眼=1:1:1:1の割合であった。
- (2) 野生型:朱色眼:褐色眼:白眼=9:3:3:1の割合であった。
- (3) 野生型:朱色眼:褐色眼:白眼=7:1:1:7の割合であった。
- (4) すべてが野生型であった。
- (5) 野生型:朱色眼:褐色眼:白眼=1:0:0:1の割合であった。
- (6) 野生型:朱色眼:褐色眼:白眼=3:0:0:1の割合であった。
- 問 7 褐色眼の突然変異は、褐色系、朱色系のどちらの合成・運搬経路に影響を及ぼしていると考えられるのか最も適切なものを以下の(1)~(4)から一つ選べ。$\fbox{キ}$
- (1) 褐色系色素及び朱色系色素の合成・運搬経路とは無関係である。
- (2) 褐色系色素及び朱色系色素の両方の合成・運般経路に影響を及ぼしている。
- (3) 褐色系色素の合成・運搬経路のみに影響を及ぼしている。
- (4) 朱色系色素の合成・運搬経路のみに影響を及ぼしている。
[実験3] 白眼C系統の雌と野生型の雄を交配したところ、雌はすべて野生型の眼であったが、雄はすべて白眼であった。この$\text{F}_1$同士(野生型の雌と白眼の雄)を交配して得られた$\text{F}_2$では、雌雄とも野生型の眼と白眼の個体がほぼ同数現れた。
- 問8 実験3に用いた白眼の系統(C)の持つ突然変異は、どのような性質のものか。最も適切なものを以下の(1)~(4)から一つ選べ。$\fbox{ク}$
- (1) 1つの突然変異で常染色体優性である。
- (2) 1つの突然変異で常染色体劣性である。
- (3) 1つの突然変異で伴性優性である。
- (4) 1つの突然変異で伴性劣性である。
- 問 9 親の交配で白眼C系統の雄と野生型の雌を交配したら、$\text{F}_1$は、どのような表現型の個体が現れるか、最も適切なものを以下の(1)~(5)から一つ選べ。$\fbox{ケ}$
- (1) 雌はすべて野生型で、雄はすべて白眼であった。
- (2) 雌雄ともすべて野生型であった。
- (3) 雌雄ともすべて白眼であった。
- (4) 雌雄とも、野生型と白眼の個体数がほぼ同数であった。
- (5) 雌雄とも、野生型と白眼の個体数がほぼ3:1の割合であった。
- 問 10 問9の交配で得られた$\text{F}_1$同士を交配すると$\text{F}_2$世代では、どのような表現型の個体が現れるのか、最も適切なものを以下の(1)~(6)から一つ選べ。$\fbox{コ}$
- (1) 雌雄ともすべて白眼であった。
- (2) 雌雄ともすべて野生型であった。
- (3) 雌はすべて野生型で、雄はすべて白眼であった。
- (4) 雌雄とも、野生型と白眼がほぼ同数であった。
- (5) 雌はすべて野生型で雄は野生型と白眼がほぼ同数であった。
- (6) 雌雄とも、野生型と白眼の個体数がほぼ3:1の割合であった。
[実験2] 2つの突然変異により白眼となっているB系統の雌を野生型の雄に交配し、得られた$\text{F}_1$(雑種1代)は、雌雄ともすべて野生型の眼であった。この野生型の眼をした$\text{F}_1$の雌を白眼のB系統の雄に交配したところ、野生型、朱色眼、褐色眼、白眼の個体が下記のように現れた。
同時に得られた野生型の$\text{F}_1$の雄を白眼のB系統の雌に交配したところ、上記の実験結果とほぼ同じ割合で、雌雄とも4種類の眼色の個体が現れた。