日本医科大学生物2012年第2問
細胞分画法を用いた実験に関する下記の文章を読み、各問いに答えなさい。
細胞は様々な細胞小器官を含んでいる。細胞を破砕(はさい)して、細胞小器官を分離する方法を細胞分画法という。この方法を用い、正常なマウスの(1)ある臓器を材料として、以下の手順で実験を行った。
摘出した臓器を小さく切り刻んで、細胞と同じ浸透圧の緩衝液S(pH7)に入れ、冷やしながらおだやかにすりつぶした。このすりつぶした臓器を含む緩衝液を、まず、低速の遠心機で分離し、沈殿した画分Aと上澄みを得た。次に、この上澄みを中速の遠心機で分離し、沈殿画分Bと上澄みを得た。さらに、この上澄みを高速の遠心機で分離し、沈殿画分Cと上澄み画分Dを得た。
画分A~Dのうち、ある画分に含まれていたミトコンドリアを緩衝液Sに懸濁した。この懸濁液を酸素飽和にしてから、空気が無い状態で密封し、温度を37℃に保ちながら懸濁液中の酸素量を測定した。(2)測定開始から2分後にADP、リン酸、コハク酸をそれぞれ十分な量加えた。図には、測定開始から6分間の懸濁液中の酸素量の変化が、模式的に示されている。縦軸の酸素量は、懸濁液が酸素飽和の状態を100%とする。
- 問1 下線部(1)の臓器は、アンモニアを尿素に変えることができる。この臓器の名称を答えなさい。
- 問2 画分A~Dには、それぞれ異なる細胞成分が含まれていた。各画分に含まれていたものを、以下の(ア)~(エ)より1つずつ選び、記号で答えなさい。
- (ア)核
- (イ)リボソーム
- (ウ)解糖系の酵素
- (エ)ミトコンドリア
- 問3 下線部(2)の操作の結果、懸濁液中の酸素量は減少し、ATPが合成された。同じ測定条件で、コハク酸の代わりに以下の(ア)~(オ)を加えた場合、懸濁液中の酸素量が減少するものはどれか。あてはまるものをすべて選び、記号で答えなさい。
- (ア)乳酸
- (イ)クエン酸
- (ウ)エタノール
- (エ)グルコース
- (オ)ピルビン酸
- 問4 薬剤Zはミトコンドリアの内膜で働き、内膜の内側と外側に水素イオン(H+)の濃度差が生じると、ただちにそれを解消する。下線部(2)の操作の後、測定開始から4分後に薬剤Zを十分な量加えると、懸濁液中の酸素量およびATPの合成はその後どのようになるか。以下の(ア)~(カ)より1つ選び、記号で答えなさい。また、その理由を説明しなさい。ただし、薬剤Zは水素イオンを輸送する働きのみをもち、電子伝達系を阻害しないものとする。
- (ア)酸素量は増加し、ATPは合成される。
- (イ)酸素量は増加し、ATPは合成されない。
- (ウ)酸素量は変化せず、ATPは合成される。
- (エ)酸素量は変化せず、ATPは合成されない。
- (オ)酸素量は減少し、ATPは合成される。
- (カ)酸素量は減少し、ATPは合成されない。