大阪医科大学化学2013年第2問

α-アミノ酸は一般式
osakaika-2013-chemistry-2-1
で示される。そのアミノ酸の1つであるグリシンは、水溶液中で下式で示される3種類のイオンの電離平衡状態にあり、その組成は溶液のpHによって変化する。
osakaika-2013-chemistry-2-2

グリシンの水溶液はpH6.0のときに(1)平衡混合物の電荷の合計、すなわち分子全体としての電荷が0となる。式1の電離に加え、置換基Rが酸性や塩基性を示す官能基をもつアミノ酸ではRが溶液のpHに応じたイオンの状態をとり、それがアミノ酸の分子全体としての電荷を決める。

表に示すアミノ酸分子のうちの異なる2つがアミド結合した化合物Xがある。Xに関する以下の文章を読み問に答えよ。

アミノ酸の名称
Rの示性式
下線部(1)のpH
グリシン-$\text{H}$
6.0
アラニン-$\text{CH}_3$
6.0
システイン-$\text{CH}_2\text{SH}$
5.1
リシン-$(\text{CH}_2)_4\text{NH}_2$
9.7
グルタミン酸-$(\text{CH}_2)_2\text{COOH}$
3.2
チロシン-$\text{CH}_2\text{C}_6\text{H}_4\text{OH}$
5.7

A.Xを構成する2つのアミノ酸には、共に光学異性体が存在した。

B.Xの水溶液に濃硝酸を加えて加熱し、さらにアンモニア水を加えて塩基性にしても色の変化がなかった。

C.Xの水溶液に水酸化ナトリウム水溶液を加えて加熱した後、酢酸鉛(Ⅱ)水溶液を加えても沈殿を生じなかった。

D.Xの水溶液を強塩基性にしたとき、Xの分子全体としての電荷は-1であった。

  • 問1 下線部(1)のpHを何というか。
  • 問2 Bの結果からXにどのアミノ酸が含まれていない事がわかったか、そのアミノ酸と呈色反応の名称を答えよ。
  • 問3 Cの結果からXにどのアミノ酸が含まれていない事がわかったか、そのアミノ酸の名称を答えよ。また、含まれていたとき生じる沈殿の化学式を記せ。
  • 問4 Xを完全に加水分解した溶液を強酸性にしたとき、得られた2つのアミノ酸の分子全体としての電荷はそれぞれいくつか、整数で答えよ。解答の順番は問わない。
  • 問5 Xに無水酢酸を完全に反応させた。その後、水溶液を強酸性にしたときの分子全体としての電荷はいくつか、整数で答えよ。また、その理由を説明せよ。
  • 問6 Xの考えられる構造式を全て記せ。ただし、問題文に示した一般式にならい、光学異性体を区別せずイオンでない形で示せ。