産業医科大学生物2013年第4問
哺乳類の消化器官の機能調節に関する次の文章を読み、以下の設問に答えなさい。
胃、小腸などの腹部の消化器官にはその機能を調節する神経系として〔 ア 〕が分布している。〔 ア 〕のうち〔 イ 〕はその末端から〔 ウ 〕を分泌して消化器官の機能を促進し、一方〔 エ 〕は〔 オ 〕を分泌して抑制する。
小腸に胃液の塩酸が入ると、膵臓からアルカリ性の膵液が分泌されることは19世紀には知られていた。この現象について、条件反射の研究で著名なロシアの生理学者パブロフは、腸壁に分布している神経が腸管の粘膜表面まで伸び出してきており、この神経が塩酸を感知して、その興奮が神経の連絡により膵臓に伝わり、膵液が分泌されると考えた。
一方、イギリスの生理学者ベイリスとスターリングは、イヌの腸に分布する神経を手術により切断した後、腸管腔内に胃液と同じ濃度の塩酸を入れる実験を行うと、膵臓から膵液が流れ出てくること、また、腸の粘膜を取り、塩酸を混ぜ、その後、粘膜をすりつぶし、その抽出液をイヌの静脈に注射すると、1分もたたないうちに、膵液が多量に流れ出すことを明らかにした。ベイリスとスターリングは、塩酸の刺激により、腸粘膜に物質Mが生じ、分泌されたMが血流によって膵臓に運ばれ、膵臓を刺激して膵液を分泌させると考えた。
- 1.文章中の〔 ア 〕~〔 オ 〕に適切な語句を答えなさい。
- 2.下線の物質Mは何か答えなさい。また、このような物質は一般的には何と呼ばれているか答えなさい。
- 3.胃の出口付近の粘膜から血中に分泌され、胃の粘膜からの塩酸の分泌を促進する物質の名称を答えなさい。
- 4.腸の粘膜で塩酸の刺激を受け、Mを産生分泌する機構については、図1のAとBの仮説が提唱された。
仮説A:刺激を受容し、Mを産生分泌する細胞を刺激する神経ネットワークが存在する。
仮説B:仮説Aの神経ネットワークは存在せず、Mを産生分泌する細胞が刺激の受容と分泌を行う。
仮説AとBの適否を調べるため、図2のような実験系で、十二指腸の上下を結紮し胃液と同じ濃度の塩酸(S)を注入した後、膵液の単位時間当たりの分泌量(分泌速度)を調べると、図3のように変化した。この実験系で、電位依存性$\text{Na}^+$チャネルを選択的に阻害する薬剤のテトロドトキシンを血中投与した後、再び塩酸を十二指腸ループ内に注入したとき、仮説A、仮説B、それぞれに従うと、膵液の分泌速度がどのように変化するか予想し、解答紙の図中に書き加えなさい(解答紙の図中のSは塩酸、Tはテトロドトキシンの投与を示している)。また、予想の理由を説明しなさい。ただし一連の実験中、血流等は正常状態に維持している。