産業医科大学生物2012年第1問
酵素についての次の文章を読み、設問に答えなさい。
酵素は主にタンパク質からできており、生物体内で起こる様々な化学反応を促進する触媒として働く。たとえば(1) 過酸化水素は常温で徐々に分解して酸素と水を生じるが、力タラーゼという酵素を作用させるとこの反応が促進され、過酸化水素は速やかに分解される。
アミラーゼという酵素はデンプンを分解できるが、同じグルコースを構成単位とするセルロースは分解できない。同様にマルターゼはマルトース(麦芽糖)のみを分解しグルコースを生じる。このように酵素はそれぞれ特定の物質にしか作用しない。(2) この性質を利用して特定の酵素に対してのみ、その作用を阻害する阻害物質(酵素阻害剤)が開発されており、医薬品などにも応用されている。
一般に化学反応は温度の上昇に伴って反応速度が増加する。(3) 無機触媒を用いた反応でも温度の上昇と共に反応速度は増加するが、酵素反応ではある温度を境に反応速度が減少する。このように酵素反応では最もよく反応が進む温度がある。同様に酵素の作用は温度以外にもpH、塩類濃度など様々な外的条件の影響を受ける。
- 下線部(1)について、図1に過酸化水素が常温で分解していく際の、エネルギー状態の変化を模式的に示す。
- (1) 図1のア、イに当てはまる語句を答えなさい。
- (2) 解答紙の図に力タラーゼを作用させた時のエネルギー状態の変化を実線で描きなさい。
- (3) 過酸化水素を分解する反応は無機触媒として白金を加えて促進させることもできる。この時のエネルギー状態の変化を解答紙の図に破線で描きなさい。
- 〔(2)・(3)の解答欄〕
- 下線部(2)について、ある酵素とそれに対する阻害剤A、Bの効果を調べるための実験を行った(図2)。一定量の酵素に一定量の阻害剤Aを加えたもの(a)、一定量の酵素に一定量の阻害剤Bを加えたもの(b)、一定量の酵素のみ(c)の3つの条件に対して基質の濃度を変え、反応速度を測定した。
- (1) この結果より阻害剤A、Bについてそれぞれ阻害様式の名称を答えなさい。
- (2) 酵素活性を阻害するしくみをA、Bを比較して説明しなさい。
- 下線部(3)について図3で温度と反応速度の関係を示す。酵素反応で温度の上昇と共に反応速度が減少するしくみについて無機触媒と比較して説明しなさい。
- 以下に示すa)~d)の条件の時、反応速度と変化量(X)の関係を示すグラフを図4のア~クの中から選び、記号で答えなさい。
- a) 無機触媒が過剰量あり基質の量(X)を変化させる。
- b) 基質が過剰量あり酵素の量(X)を変化させる。
- c) 基質が過剰量あり設問2の阻害剤Bの量が一定で酵素の量(X)を変化させる。
- d) 基質と酵素の量が一定でpH(X)を1から12まで変化させる。ただしグラフの横軸の0は考えない。