産業医科大学生物2012年第3問

次の文章を読み、設問に答えなさい。

ロバート・フックは自作の顕微鏡を用いていろいろなものを観察していた。彼は植物を観察中、コルクの薄片が多数の小部屋のように仕切られているのを発見し、この小部屋を細胞'cell'と名づけた。現代では改良された顕微鏡が用いられており、光学顕微鏡で観察できない大きさのものは〔 ア 〕顕微鏡を用いて観察することも可能になった。

マウスから脾臓を取り出して細胞を調製し、光学顕微鏡で観察する実験を行った。等張液である塩濃度〔 イ 〕%の生理食塩水を入れたシャーレ上で、脾臓をピンセットでほぐし、試験管に移した。5分間静置後、沈んだかけらを取らないように、細胞浮遊液を別の試験管に移し遠心分離したところ、上澄みは透明で沈殿は赤色を呈していた。上澄みを捨て、残った沈殿物に(1) 低張液を入れ撹拌後、5分間静置した。試験管を遠心分離すると、沈殿部分の赤色は観察されなかった。上澄みを捨て、生理食塩水10mLを入れて(2) 細胞浮遊液を得た。その(3) 細胞浮遊液の10µLとトリパンブル一染色液190µLを混ぜ、その一部を血球計算盤(メモリつきのスライドガラス)のカバーガラスとの隙間に入れた。光学顕微鏡で観察したところ、図1のようであった。(図1では黒い丸が染色された細胞を表している)

  1. 空欄〔 ア 〕、〔 イ 〕に適切な語句を答えなさい。
  2. 下線部(1)の操作の結果、試験管内でどのような反応が起きたか、答えなさい。
  3. 大腸菌、インフルエンザウイルスおよびヒト卵細胞をこの顕微鏡下で図1と同じ倍率で観察した場合、どのスケールで観察されるか。図2の(あ)~(う)からそれぞれ選びなさい(形は考慮しないものとする)。ただし、観察することができない場合は(え)と答えなさい。
  4. 長さ1mmを100等分した対物マイクロメーターを顕微鏡のステージ上に置き、接限レンズに入っている接眼マイクロメーターを較正した。この時の視野の一部を拡大したのが図3で、上に写っている目盛りが対物マイクロメーター、下側の数字のついた目盛りが接限マイクロメーターの目盛りである。顕微鏡から対物マイクロメーターをはずし、細胞核を染色したリンパ球のプレパラートをセットして検鏡した。観察できた視野の一部を拡大したものが図4である。このリンパ球の直径を図から読み取り、$\mu$mの単位で答えなさい。
  5. 下線部(3)の操作では死んだ細胞が染色され、生きた細胞は染色されない。その理由を答えなさい。
  6. 下線部(2)の細胞浮遊液中の生細胞数を計算したところ、〔A〕×10〔B〕個であった(Bは乗数を表す)。〔A〕および〔B〕にあてはまる数字を整数で答えなさい。ただし、カバーガラスと血球計算盤との隙間は0.1mmとする。
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