昭和大学生物2013年第2問
遺伝子に関する以下の文章を読んで質問に答えなさい。
- (1) 原核生物である大腸菌は周囲の環境に応じて遺伝子発現が調節されている。酵素合成の誘導の例としてグルコース含有培地(培地A)で培養していた大腸菌をグルコースがなくラクトースが添加されている培地(培地B)に移し替えた場合がある。培地Aにある時にはラクトース分解酵素は合成されない。その理由は大腸菌の( ア )遺伝子から作られた( イ )がラクトース分解酵素の構造遺伝子の上流にある( ウ )部位に結合しており、RNAポリメラーゼは( エ )に結合出来なくなり、ラクトース分解酵素は合成されないからである。次に培地Bに移し、分解されるべき基質がある状態になるとラクトースは( イ )と結合し、( ウ )から離れ、RNAポリメラーゼは( エ )に結合し、転写が始まりラクトース分解酵素が合成され、ラクトースはグルコースと( オ )に分解される。A従って、この場合( イ )はラクトースと( ウ )の2つに対する結合部位を持っていることになる。
- 問1 ( ア )~( オ )に適当な語句を入れなさい。
- 問2 ラクトース分解酵素の構造遺伝子は3種類が隣接し、1つの( ウ )および( エ )により制御されていることになる。このような遺伝子集団の単位は何と呼ばれるか書きなさい。
- 問3 下線部Aで示したように結合部位が2つあり、1つの部位に物質が結合すると活性が変化するようなタンパク質から成る酵素は何とよばれるか書きなさい。
- 問4 培地Bにラクトースの代わりにIPTG(イソプロピル-チオガラクトピラノシド)という物質を添加するとラクトースよりもラクトース分解酵素の誘導率が6倍も高い。その理由としてIPTGのどのような化学的特徴が考えられるか。30字以内で書きなさい。
- (2) 真核生物の転写、 翻訳は原核生物とは大きく異なる。真核生物のDNAは( カ )と呼ばれるタンパク質と結合しており、そのままではRNAポリメラーゼはDNAと結合出来ないので、転写を開始するにはこの結合がほどける必要がある。また原核生物ではRNAポリメラーゼのみでDNA上の正しい領域からの転写を行うことが出来るが真核生物では正しい転写反応が起こるためにはRNAポリメラーゼと( キ )と呼ばれる因子が必要である。さらに真核生物のゲノムDNAには転写領域以外にも転写を制御するための( ク )と呼ばれる領域があり、ここに結合するタンパク質は転写因子と呼ばれる。真核生物のゲノムDNAから転写されたRNAは( ケ )と呼ばれる。( ケ )には最終的に翻訳される( コ )と破棄される( サ )が含まれる。( サ )を取り除き( コ )を順番に結合する過程は( シ )と呼ばれる。
- 問5 ( カ )~( シ )に適当な語句を入れなさい。
- (3) p53遺伝子産物(p53)は転写因子として働き、損傷したDNAの修復やアポトーシス、細胞周期の制御などに関与した多彩な生理機能を持っている。一方、ヒトの悪性腫瘍の多くでp53の変異や欠失が起こっている。このように変異によって失活すると細胞のがん化を引き起こすような遺伝子をがん抑制遺伝子という。クヌッドソンはがん抑制遺伝子に関しては対立遺伝子の一方が失活してもがん化は起こらず、対立遺伝子の両者が失活して初めてがん化が引き起こされると考えた。この仮説は2段階ヒット理論(two hit 仮説)と呼ばれている。この仮説に基づき、以下の問題に答えなさい。
- 問6 正常細胞とp53が変異したがん細胞を融合させた細胞の形質はどうなるか、理由とともに20字以内で答えなさい。