東海大学生物2012年第4問

DNAの複製に関する以下の各問に答えなさい。
  • 問1 ヒト体細胞の細胞周期における染色体1本あたりのDNA量と細胞1個あたりのDNA量をそれぞれ解答欄に記入し、図1を完成させなさい。なお、染色体1本あたりのDNA量は点線で、細胞1個あたりのDNA量は実線で記入すること。ただし、染色体1本あたりのDNA量と細胞1個あたりのDNA量で共通する部分は、細胞1個あたりのDNA量と同じ実線で記入しなさい。また、G1期の最初のDNAの相対量(縦軸値)は“2”とする。
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  • 問2 ヒト線維芽細胞の細胞周期の長さを測定したところ、G1期、S期、G2期、M期の順にそれぞれ、10時間、8時間、4時間、2時間であった。この細胞の培養液に放射性同位元素である$^3\text{H}$で標識したチミジン(チミンを塩基として持つヌクレオチドの前駆体)を添加した。この$^3\text{H}$-チミジンは、細胞周期のG1期、S期、G2期、M期のいずれの時期にDNAに取り込まれるか答えなさい。
  • 問3 ヒト線維芽細胞の培養液に$^3\text{H}$-チミジンを添加した。そして、この添加直後にM期に入った細胞を追跡した。この細胞から生じた娘細胞のうち、その染色体DNAの両鎖が全長にわたって$^3\text{H}$-チミジンで標識されるまでの時間とその時点までに行う細胞分裂の回数を答えなさい。なお、細胞が分裂する際に、染色体は交差することなく娘細胞に均等に分配されるものとする。
  • 問4 次の文章を読み、以下の[Ⅰ]~[Ⅲ]の各問に答えなさい。

    DNAが複製するときには、まず、らせん構造を形成している2本のDNA鎖の対合する塩基どうしの結合が切れて、1本鎖のDNAにわかれる。この塩基どうしの結合が切れて、複製が始まる染色体上の特定の部位のことを複製開始点という。健常なヒトの体細胞に含まれる染色体は、全部で$6\times10^9$塩基対のDNAで構成されるので、平均すると染色体1本あたりの塩基対数は( ア )$\times10^8$塩基対である。仮にこれをその末端に複製開始点が1ヵ所だけあるDNA鎖として、反対の端まで複製した場合、DNAポリメラーゼの複製の速度を毎秒50塩基対であるとすると、複製を完了するまでに数百時間もかかることになる。ところが、ヒト細胞の平均的なゲノムDNAの複製時間は10時間前後である。したがって、染色体全体を複製するためには、複数の複製開始点が存在することが予想される。実際、ヒト体細胞を$^3\text{H}$-チミジンを含む培養液中で短時間培養した後、(1)細胞を破壊してDNAを伸ばして観察したところ、図2 (B)のようになった。$^3\text{H}$-チミジンに由来する放射線(以下$^3\text{H}$-チミジンシグナルとする)は太線のように観察された。この観察結果をふまえて、問2および問3で使用したヒト線維芽細胞の染色体1本あたりの複製開始点の数は、最低でも( イ )ヵ所必要であることがわかった。なお、染色体全体に複製開始点は偏りなく等間隔で存在するものとし、すべての複製開始点で同時に複製が始まるものとして計算した。

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    • [Ⅰ] 下線部(1)の観察から得られる結果の説明として誤っているものを、以下の(a)~(d)の中から選び、記号で答えなさい。
      • (a) 複製が進行しているDNA領域に$^3\text{H}$-チミジンが取り込まれている。
      • (b) $^3\text{H}$-チミジンシグナルが検出されないDNA領域は、複製がまだ開始していない領域である。
      • (c) 複製開始点を中心として、両方向に複製が進行している。
      • (d) 染色体上の複数のDNA領域で複製が進行している。
    • [Ⅱ] 空欄( ア )、空欄( イ )のそれぞれに入る適切な数値を答えなさい。ただし、空欄( ア )の値は、四捨五入して小数点以下第二位まで求めなさい。
    • [Ⅲ] $^3\text{H}$-チミジンを添加した培養液でヒト体細胞を10分間培養した。次に、その細胞を$^3\text{H}$-チミジンを含まない培養液に移し、さらに10分間培養を続けた後、細胞を破壊してDNAを伸ばして観察した。図2の(C)において観察されるDNAの状態を予想し、解答欄に図示しなさい。なお、(C)の時点においても$^3\text{H}$-チミジンシグナルは残っているものとする。