東海大学生物2012年第2問
次の文章を読んで、以下の各問に答えなさい。
自然界では、(1)同一の種に属する生物の個体が集まって、集団で生活している。生物は生殖により増えるが、実際には無制限に増え続けることはなく、(2)ある段階で増加速度が鈍くなり、増加しなくなる。これは食物の質や量の低下、生活空間の不足、病気などが原因で増加率が下がるためである。また動物における個体数は、それぞれの生物の増殖率、個体の発育速度、形態変化、性比、年齢構成などによっても大きく影響される。
こうした独特の生態や形態を持つ生物は、それぞれ異なる祖先から誕生し、独自の進化をたどり今日に至った。こうした生物の進化の道筋においては、古い時代に分かれたものほど類縁が遠く、新しく分かれたものほど類縁が近いと考えられるが、同じ進化の過程を経た同一種内においても変異を見ることができる。生物の形質は基本的に遺伝によって決まるが、(3)生育条件の違いによっても個体差が生じてくる。また、DNAの複製や染色体が分配される時などに生じる遺伝子の変化が生物の形質の変化を生じさせる。この様な遺伝子の変化を突然変異と呼ぶ。突然変異はある細胞に偶発的に生じ、それが生殖細胞に生じた場合は(4)有性生殖を通じて親から子に受け継がれ集団内に拡散する。(5)この有性生殖を行う集団では、集団を構成する個体どうしが有性生殖を通じて遺伝子を混合するので、集団内の特定の対立遺伝子が増えたり減ったりし、集団内の遺伝的頻度が変化する場合がある。特に個体数が小さな集団では、特定の対立遺伝子を持つ個体の偶然な伝達頻度の違いは、この対立遺伝子の頻度に大きな影響をもたらす。
- 問1 以下の[Ⅰ]~[Ⅴ]の各問に答えなさい。
- [Ⅰ] 下線部(1)のことを何と呼ぶか、適切な語句を答えなさい。
- [Ⅱ]下線部(2)のことを何と呼ぶか、適切な語句を答えなさい。
- [Ⅲ] 下線部(3)のことを何と呼ぶか、適切な語句を答えなさい。
- [Ⅳ] 下線部(4)を以下の語群にある二つの語句を使い、句読点を含めて40字以内で説明しなさい。
[語群]配偶子、接合子 - [Ⅴ] 生物の出生した卵や子が時間とともに減少していく様子を表したものを「生存曲線」と呼ぶ。図1は魚類、鳥類、ほ乳類を例にそれぞれの生存曲線を示したものである。これらの生物の生存曲線をア~ウから、またその説明文をa~cの中から選び、それぞれ記号で答えなさい。
[3つの曲線の説明文]
- a. 出生後から老化期まで死亡率がほぼ一定である。
- b. 出生後初期の死亡率は高く、個体数の変動が大きい。
- c. 初期の死亡率は低く、多くの個体が最高寿命の近くまで存在する。
- 問2 本文中の下線部(5)を読み、以下の[Ⅰ]~[Ⅳ]の各問に答えなさい。
- [Ⅰ] 図2中の3つの対立遺伝子(A1、A2、A3)を持つ集団(n=45)のへテロ接合体の割合を求めなさい。なお、値は四捨五入して小数点以下第二位まで求めなさい。ただし、この小集団はハーディー・ワインベルク平衡で保たれているものとする。
- [Ⅱ] ハーディー・ワインベルク平衡が保たれる条件として間違っているものを二つ選び、a~eの記号で答えなさい。
- a. 個体の移出や移入が起こる。
- b. 突然変異が起こらない。
- c. 自然選択が起きる。
- d. 自由に交配が起きる。
- e. 個体数が十分にある。
- [Ⅲ] この小集団がハーディー・ワインベルク平衡にあるとき、3つの対立遺伝子(A1、A2、A3)における、次世代のそれぞれの頻度を求めなさい。なお、値は四捨五入して小数点以下第二位まで求めなさい。
- [Ⅳ] 文章中の下線部(5)のように、自然選択とは異なり、偶然により集団内のある特定の対立遺伝子頻度が変化することを何と呼ぶか、適切な語句を答えなさい。