東京医科大学化学2013年第4問
次の文章を読み、問い(問1~5)に答えよ。
Ag+、Al3+、Cu2+、Zn2+の4種類の金属イオンを含む水溶液アがある。各イオンを分離するために、次の操作を行った。
操作1:水溶液アに塩酸を加え、生じた沈殿イをろ過した。
操作2:操作1のろ液に硫化水素を通じた後、沈殿ウとろ液に分けた。
操作3:操作2のろ液を煮沸して硫化水素を追い出した後、アンモニア水を過剰に加え、生じた沈殿エをろ過した。
操作4:操作3のろ液に硫化水素を通じた後、沈殿オとろ液カに分けた。
このように、金属イオンを分離するために沈殿生成反応が利用される。また、沈殿が析出するかどうかは、溶解度積Kspから知ることができる。水に難溶性の塩化銀の飽和水溶液では、次の平衡が成り立つ。これを溶解平衡という。
AgCl(固)⇄Ag++Cl−これに化学平衡の法則を適用し、[AgCl(固)]を一定とみなすと、水溶液中の銀イオンのモル濃度[Ag+]と塩化物イオンのモル濃度[Cl−]の積は、温度が変わらなければ一定となる。
[Ag+][Cl−]=KspこのKspを溶解度積という。AgClの沈殿を含む飽和水溶液に塩化ナトリウムを加えると、(1)式の平衡がaに移動してAgClの沈殿の量はbする。すなわち、cの場合、AgClの沈殿が生じる。
水溶液中に硫化水素を通じると、金属イオンを沈殿させることができる。硫化水素は、水に溶けると次のように電離する。
H2S⇄2H++S2−沈殿ウとオも難溶性の塩であり、これらの飽和水溶液でも、塩化銀と同様な溶解平衡が成り立っている。溶解度積の比較的dい沈殿オは、[S2−]がeい酸性水溶液ではfとなりgが、水溶液を塩基性にすると、(3)式の平衡がhに移動して[S2−]がiくなるため、jとなりk。一方、溶解度積の比較的lい沈殿ウは、[S2−]がmい酸性水溶液でも、nとなりo。
- 問1 Cu2+イオンはどこに含まれるか。最も適当なものを、次の(1)~(5)のうちから選べ。 19
- (1)沈殿イ
- (2)沈殿ウ
- (3)沈殿エ
- (4)沈殿オ
- (5)ろ液カ
- 問2 沈殿エの色として最も適当なものを、次の(1)~(6)のうちから選べ。 20
- (1)淡桃色
- (2)青白色
- (3)黒色
- (4)暗褐色
- (5)黄色
- (6)白色
- 問3 問題文中のd 、kにあてはまる語句として最も適当なものを、次の(1)~
(4)のうちから選べ。
- d: 21
- k: 22
- (1)沈殿する
- (2)沈殿しない
- (3)小さ
- (4)大き
- 問4 問題文中のf、nにあてはまるものとして最も適当なものを、次の(1)~(3)のうちから選べ。
- f: 23
- n: 24
- (1)[Ag+][Cl−]>Ksp
- (2)[Al3+]2[S2−]3>Ksp
- (3)[Cu2+][S2−]>Ksp
- (4)[Zn2+][S2−]>Ksp
- (5)[Ag+][Cl−]<Ksp
- (6)[Al3+]2[S2−]3<Ksp
- (7)[Cu2+][S2−]<Ksp
- (8)[Zn2+][S2−]<Ksp
- 問5 次の記述のうち誤っているものを、次の(1)~(8)のうちから2つ選び、解答番号25の解答欄にマークせよ。 25
- (1)塩化銀の飽和水溶液の濃度が1.4×10−5mol/Lのとき、この温度での塩化銀の溶解度積は2.0×10−10mol2/L2である。
- (2)Ag2S、MnS、FeSはいずれも中性~塩基性溶液でのみ沈殿する。
- (3)アンモニア水に塩化アンモニウムを加えると、溶液の塩基性が弱まる。
- (4)塩化銀の沈殿を含む飽和水溶液に硝酸銀を加えると、塩化銀の沈殿は増加する。
- (5)塩化ナトリウムの飽和水溶液に濃塩酸を加えると、塩化ナトリウムの結晶が析出する。
- (6)硫酸バリウムの沈殿を水で洗うよりも、希硫酸で洗浄するほうが、硫酸バリウムは溶けにくくなる。
- (7)塩化銀の沈殿を含む飽和水溶液にアンモニア水を加えると、塩化銀の沈殿は溶解する。
- (8)溶解度積の大きい塩ほど、その塩は沈殿しやすい。