東京医科大学生物2012年第3問

<文I>、<文II>を読んで問いに答えよ。
<文I>

真核生物の(A)酵母の生活環には、一倍体と二倍体の世代がみられる。一倍体は体細胞分裂によって増殖し、動物の性に相当する2つの接合型の個体間で接合を行い、二倍体になる。この(B)二倍体も体細胞分裂によって増殖するが、ある環境条件になると(C)減数分裂によって一倍体になる

  • 問1 次の(a)~(g)のなかで、文中の下線部(A)に最も適するものを2つ選び、解答番号14の解答欄にマークせよ。$\fbox{14}$
    • (a) 藻類
    • (b) 菌類
    • (c) 植物
    • (d) 細菌
    • (e) 単細胞生物
    • (f) 多細胞生物
    • (g) 原生動物
  • 問2 ある酵母での細胞1個あたりのDNA量の変化の例を図1に示した。

    この酵母が文中の下線部(B)のためにDNA複製を行った期間、また、文中の下線部(C)の第二分裂の期間は、図1の(1)~(9)のどれに相当するか。最も適するものを、(a)~(i)のなかから1つずつ選べ。ただし、酵母は真核細胞にみられる一般的な体細胞分裂や減数分裂を行うものとする。

    下線部(B)のためにDNA複製を行った期間:$\fbox{15}$
    下線部(C)の第二分裂の期間:$\fbox{16}$
    • (a) (1)
    • (b) (2)
    • (c) (3)
    • (d) (4)
    • (e) (5)
    • (f) (6)
    • (g) (7)
    • (h) (8)
    • (i) (9)
  • tokyoika-2012-biology-3-1
  • 問3 図1の(1)から(14)までの過程が同調すると、(14)の時点での酵母の個体数は(1)の時点の何倍に増加するか。最も適する数を、(a)~(g)のなかから1つ選べ。$\fbox{17}$
    • (a) 2
    • (b) 4
    • (c) 8
    • (d) 16
    • (e) 32
    • (f) 64
    • (g) 128
  • 問4 図1(1)の期間の染色体1本あたりのDNA量の相対値を1とする。(a)~(e)のなかで、正しい記述をすべて選び、解答番号18の解答欄にマークせよ。$\fbox{18}$
    • (a) 図1(3)の期間の染色体1本あたりのDNA量の相対値は2である。
    • (b) 図1(4)の期間の染色体1本あたりのDNA量の相対値は1である。
    • (c) 図1(6)の期間の染色体1本あたりのDNA量の相対値は2である。
    • (d) 図1(8)の期間の染色体1本あたりのDNA量の相対値は0.5である。
    • (e) 図1(14)の期間の染色体1本あたりのDNA量の相対値は1である。
  • 問5 次の(a)~(e)のなかで、文中の下線部(C)の過程だけにみられるものはどれか。最も適するものを1つ選べ。$\fbox{19}$
    • (a) 染色体の凝縮
    • (b) 紡錘体の形成
    • (c) DNAの複製
    • (d) 中心体の分離
    • (e) 相同染色体の対合
<文II>

酵母では、温度感受性の細胞周期変異体が多く見つかっている。この変異体は、適温に保てば変異タンパク質が正しく働いて増殖できるが、温度が上がると変異タンパク質の構造が壊れて機能しなくなり、細胞周期の特定の段階が欠損して増殖できなくなる。

一倍体酵母の温度感受性細胞周期変異体のなかから、(D)一つの遺伝子の突然変異が原因で23℃では増殖できるが、36℃では増殖できない2種類の変異株(M1、M2)を単離して、実験1、2を行った。

-実験1- 液体培地が入ったフラスコ内で、野生株とM1、M2変異株のそれぞれを23℃で培養した。それらが十分に増殖した後、培養温度を36℃に変えて培養を続けた。36℃に変えた直後から経時的にそれぞれの株の細胞数、DNA量、RNA量、タンパク質量を測定し、その結果を図2に示した。

-実験2- 36℃に変えて5~6時間経過した細胞を顕微鏡で観察し、次の結果を得た。

  • ・野生株:様々な大きさの出芽を1つもっていた。
  • ・M1変異株:核を1つもち、出芽していなかった。
  • ・M2変異株:多核で、伸長した出芽を数個もっていた。
tokyoika-2012-biology-3-2
  • 問6 次の(1)~(5)のなかで、実験1(図2)と実験2の結果から推察できる36℃での野生株の挙動はどれか。最も適するものを2つ選び、解答番号20の解答欄にマークせよ。$\fbox{20}$
    • (1) 細胞周期を同調させた。
    • (2) 細胞の倍加に約4時間を要した。
    • (3) 細胞の増殖率は、一定であった。
    • (4) DNA、RNA、タンパク質の合成率は、細胞の増殖率と相関した。
    • (5) 個体群の密度効果が働いた。
  • 問7 次の(1)~(4)のなかで、実験1(図2)と実験2の結果から推察できる36℃でのM1、M2変異株のそれぞれの挙動とその考察として、適切でないものはどれか。1つ選べ。$\fbox{21}$
    • (1) M1変異株では、RNA、タンパク質の合成は阻害されていない。
    • (2) M2変異株では、DNA、RNA、タンパク質の合成が継続している。
    • (3) M1変異株は、細胞の増殖とDNA合成が停止し、染色体が凝縮している。
    • (4) M2変異株は、細胞質分裂が欠損した状態で、細胞周期の過程が進行している。
  • 問8 野生株とM1、M2変異株の間で互いに交配して二倍体酵母をつくり、それらの表現型を観察した。その結果を表1に示した。
    この結果から、文中の下線部(D)(p.35)に関する考察として最も適するものを、(1)~(4)のなかから2つ選び、解答番号22の解答欄にマークせよ。$\fbox{22}$
    tokyoika-2012-biology-3-3
    • (1) M1、M2変異株は共に、優性の変異である。
    • (2) M1、M2変異株は共に、劣性の変異である。
    • (3) M1、M2変異株のそれぞれの変異は、同一遺伝子内の異なるところで起きている。
    • (4) M1、M2変異株のそれぞれの変異は、異なる2つの遺伝子で起きている。