東京慈恵会医科大学化学2013年第4問

次の文を読み、下記の問い(問1~問5)に答えよ。なお、計算値の答えは必要ならば四捨五入せよ。

タンパク質分子は、種々のα-アミノ酸が一定の順序で脱水縮合し、ペプチド結合によって多数連なったポリペプチドである。タンパク質分子を構成するα-アミノ酸の配列順序は、分子の形やタンパク質の性質をきめる重要な要素である。この配列順序は、そのタンパク質の( ア )構造といわれる。タンパク質では、一つのアミノ酸のペプチド結合した窒素原子に結合している水素原子と分子内または分子間の他のアミノ酸のペプチド結合した炭素原子に結合している酸素原子との間で、下式に示したような水素結合が形成される。

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このような水素結合が、同一分子内の一つのアミノ酸と、それから数えて4番目のアミノ酸との間で多数形成されると、タンパク質分子は( イ )構造をとる。羊毛のやわらかさ、伸縮性および強度は( イ )構造に由来する。また、このような水素結合の形成により、シート状構造になることがある。( イ )構造やシート状構造はタンパク質の( ウ )構造といわれる。卵白を加熱すると凝固してゲル状になる。このとき、卵白中のタンパク質分子のペプチド結合は切れないが、水素結合やイオン結合などの組みかえがおこる。そのためタンパク質分子の高次構造が変化して、性質が変わる。これをタンパク質の( エ )という。タンパク質の( エ )は、熱のほか、酸や塩基、重金属イオンおよびアルコールなどによってもおこる。

  • 問1 文中の空欄( ア )~( エ )に適切な語句を記せ。
  • 問2 次の問い(1)と(2)に答えよ。

    ロイシン〔示性式:$(\text{CH}_3)_2\text{CHCH}_2\text{CH}(\text{NH}_2)\text{COOH})$〕とバリン〔示性式:$(\text{CH}_3)_2\text{CHCH}(\text{NH}_2)\text{COOH})$〕を縮合重合して得られた高分子量のポリペプチドがある。このポリペプチド0.42gを分解し、発生したアンモニアを0.10mol/L硫酸水溶液50mLに吸収させた。未反応の硫酸を中和するのに、0.10mol/L水酸化ナトリウム水溶液60mLが必要であった。

    • (1)発生したアンモニアの物質量(mol)を有効数字2桁で記せ。
    • (2)すべての窒素原子がアンモニアになったとすると、もとのポリペプチド中のロイシン部分は質量比で何%かを整数値で記せ。ただし、ポリペプチドの両末端部分は無視してよい。
  • 問3 卵白に含まれているタンパク質のアルブミンにはシステインというアミノ酸が多く含まれている。システイン〔示性式:$\text{HSCH}_2\text{CH}(\text{NH}_2)\text{COOH}$〕というアミノ酸はタンパク質中ではジスルフィド結合を形成することもある。システインがジスルフィド結合により2量体を形成したアミノ酸をシスチンという。シスチンの構造式を示せ。ただし、立体異性体を区別して示す必要はない。
  • 問4 あるタンパク質の水溶液を試験管に少量取り、この水溶液に水酸化ナトリウムを数粒の加えて加熱した。溶液を室温まで冷却したのち、この水溶液に酢酸鉛(Ⅱ)の水溶液を数滴加えたところ黒色沈殿が生じた。生じた黒色沈殿の化学式を記せ。
  • 問5 卵白から単離したアルブミン(分子量$4.5\times10^4$)とアミノ酸のアラニン(分子量89)の水溶液をそれぞれビーカーに作った。ところが、容器にラベルを貼るのを忘れたため、両者の水溶液の区別がつかなくなった。これらの水溶液に試薬や器具を入れたりせず、また、これらの水溶液を加熱や冷却することなしに、両者の水溶液を区別したい。二つの水溶液を区別する方法を、その操作と結果を含む文で、句読点も含めて80文字以内で記せ。