東京慈恵会医科大学化学2012年第2問

次の文を読み、下記の問い(問1~問5)に答えよ。

アルミニウムは、家庭用品、建築材料、ジュラルミンとして航空機の材料などに幅広く使われている。単体のアルミニウムは、主成分が酸化アルミニウムである鉱石のボーキサイトを濃い水酸化ナトリウム水溶液で処理して、これから純粋な酸化アルミニウムをつくる。アルミナともよばれる酸化アルミニウムは、融点が2054℃と高いので、融点が1000℃の氷晶石(Na3AlF6)に溶かして電気分解する。この製造法のように、金属元素の水酸化物、塩化物、酸化物などを液体にして電気分解する方法を$\underline{(1)~\fbox{ア}電解}$という、単体のアルミニウムは、密度の小さな軽い金属で、銀白色をしている。単体のアルミニウムを空気中に放置すると、表面にち密な被膜ができる。このような状態を$\fbox{イ}$という.アルミニウム製品の表面を人工的に酸化させて、酸化アルミニウムの被膜をつくったものをアルマイトという。アルミニウムの粉末と酸化鉄(Ⅲ)との混合物はテルミットとよばれる。(2) このテルミットに点火すると、アルミニウムは還元剤として働いて反応し、このとき多量の熱を出す。この反応はテルミット反応とよばれ、溶接に利用されている。アルミニウムの単体は、酸の水溶液にも、強塩基の水溶液にも溶ける、酸化アルミニウムは、水には溶けないが、酸の水溶液にも強塩基の水溶液にも溶ける。(3) 硫酸アルミニウムと硫酸カリウムの混合水溶液を濃縮すると、(4) ミョウバンとよばれる無色の結晶が得られる。ミョウバンの水溶液には、硫酸アルミニウムと硫酸カリウムの混合水溶液と同じ種類のイオンが含まれている。このような塩を複塩という。また、ミョウパンの水溶液は、酸性を示す。

  • 問1 文中の空欄$\fbox{ア}$と$\fbox{イ}$に適切な語句を記せ。
  • 問2 次の(i)と(ii)に答えよ。

    下線部(1)による酸化アルミニウムの電解は、炭素を電極として行われる。この電解の陽極と陰極で起こる反応は下式のように表される。

    • (陽極) $\text{C}+2\text{O}^{2-}\longrightarrow\text{CO}_2+4e^-$
    • (陰極) $\text{Al}^{3+}+3e^-\longrightarrow\text{Al}$
    • (i) この電解の全体の反応を化学反応式で示せ。
    • (ii) 下線部(1)により、酸化アルミニウムを2.00時間電解して単体のアルミニウムを20.0 g得るには、何A(アンペア)の電流を流せばよいかを記せ。ただし、流した電流はすべてこの電解に用いられたものとする。
  • 問3 下線部(2)の反応において、アルミニウム(固)1 molが反応したときの熱化学方程式を、式中に各物質の状態も記して示せ。ただし、アルミニウム(固)の燃焼熱は837 kJ/mol、酸化鉄(Ⅲ)(固)の生成熱は824 kJ/moIとする。
  • 問4 下線部(3)の水溶液に不純物として少量の銅(Ⅱ)イオンが存在し、その水溶液は酸性を示した。この水溶液から銅(Ⅱ)イオンだけをとり除く適切な方法を、下記の試薬群の中から必要な試薬を用いて50字以内で記せ。ただし、用いた試薬による反応および分離操作は完全に行われるものとする。

    【試薬群】 塩酸、水酸化ナトリウム水溶液、硝酸、硫化水素、硫酸

  • 問5 下線部(4)の結晶を水に溶かし、アンモニア水を加えると沈殿$\text{I}$が生じた。この沈殿$\text{I}$に水酸化ナトリウム水溶液を加えたときの反応を化学反応式で示せ。