東京慈恵会医科大学化学2012年第3問

無機および有機ハロゲン化合物に関する以下の問題$\text{I}$、$\text{I}\hspace{-.1em}\text{I}$に答えよ。
  • $\text{I}$ 17族ハロゲン元素に関する表1、2を参考に、下記の問い(問1、問2)に答えよ。
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    • 問1
      • (1) 次の二つの化学反応式(a)(b)の空欄に、反応が右に進むものには「→」、左に進むものには「←」、反応しないものには「×」を入れよ。
        • (a) $2\text{KI}+\text{CI}_2\Box 2\text{KCI}+\text{I}_2$
        • (b) $2\text{KF}+\text{Br}_2\Box 2\text{KBr}+\text{F}_2$
      • (2) ハロゲン化物イオンの還元力の強さの順をA$\gt$B$\gt$C$\gt$D (ABCDは該当する元素記号)のように書き、そのような順になる理由を、イオン化エネルギー・電子親和力・電気陰性度のうち、ハロゲン化物イオンの還元力の強さに最も影響あるものとの関係を含めて60文字以内で記せ。
    • 問2 ハロゲン化合物の沸点に関する以下の文の空欄$\fbox{ア}$~$\fbox{ウ}$に入る適切な語句、空欄$\fbox{エ}$、$\fbox{オ}$に入る適切な分子式を記せ。

      ハロゲン単体の沸点が、原子番号が大きい元素の単体ほど高くなるのは、分子量が大きい分子ほど分子間に働く弱い引力である$\fbox{ア}$力が大きいからであり、同様の理由でハロゲン化水素の沸点も分子量が大きいほど高い。しかし、$\text{HF}$の沸点のみは他のハロゲン化水素より高い。この理由は、$\text{HF}$分子では共有結合の$\fbox{イ}$が大きく、分子間で特に強い$\fbox{ウ}$結合を形成しているからである。典型元素の水素化合物の同様な関係は$\fbox{エ}$と$\fbox{オ}$の間にも見られる。これとは異なり、下の問題のように有機フッ素化合物分子では$\fbox{イ}$が予想外に小さく、分子量が大きくても沸点は低い。

  • $\text{I}\hspace{-.1em}\text{I}$ 次の文を読み、下記の問い(問3~問8)に答えよ。

    19世紀には吸入麻酔薬として、ジエチルエーテルや$\fbox{カ}$が使われた。しかし、現在ではこれらの物質はわが国では使用されていない。その後、有機ハロゲン化合物に次々と麻酔作用が発見され、ハロタン(CF3CHClBr)、エンフルラン(CHFCICF2OCHF2)、フルロキセン(CF3CH2OCH=CH2)、メトキシフルラン(CHCl2CF2OCH3)や、現在わが国でおもに用いられているイソフルラン(CF3CHClOCHF2)$やセボフルラン((CF3)2CHOCH2F)が知られている。これらの中には、(1) 光学異性体をもつ物質もあるが、その場合には光学異性体の混合物として用いられる

    これらの有機フッ素化合物の合成では、F2と炭化水素の反応は制御がむずかしいので、(2) CI2と炭化水素の反応で、いったん、塩化物を得てから、置換反応によりフッ素化物に変換する。また、塩素化の段階で過剰に反応が起こった場合には、(3) 還元剤を使ってC-CI結合をC-H結合に戻すことも行われる

    古くから使われてきた吸入麻酔薬であるが、その詳しい作用機構はまだ明らかになっていない。最近、やはり吸入麻酔薬である(4) デスフルラン(CF3CHFOCHF2)が、神経細胞表面に存在するタンパク質と分子間結合するようすが明らかにされた。おもしろいことに、まったく分子構造が異なるが麻酔作用が知られている(5) プロポフオール(構造式1)も同じタンパク質と分子間結合できることが示された。

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    • 問3 次の文は、空欄$\fbox{カ}$に入る物質の性質を表している。空欄$\fbox{カ}$に入る物質名を答えよ。

      アセトンとヨウ素の反応と同様な反応で、アセトンを塩基性条件で次亜塩素酸と反応させると生成する。分子量119.5。

    • 問4 ハロタン(A)、エンフルラン(B)、フルロキセン(C)、メトキシフルラン(D).イソフルラン(E)、セボフルラン(F)のうち、下線部(1)のように光学異性体の混合物として用いられるものはどれか、適するものをすべて選び記号A~Fで答えよ。
    • 問5 下線部(2)のような反応を室温で行う時、必須となる反応条件は何か。
    • 問6 下線部(3)のような工程の一つに、塩化物CF3CCl2OCHF2と還元剤である同物質量の2-プロパノール(CH3CH(OH)CH3)との反応でイソフルランを得るという反応がある。この反応の化学反応式を、構造式を用いて記せ。
    • 問7 下線部(4)のようなデスフルランとタンパク質の分子間結合部位で、デスフルラン分子を取り巻いて接しているアミノ酸の組み合わせとして、上記問2の有機フッ素化合物の特徴から予想されるものは以下のア~エのうちどれか。記号ア~エで答えよ。
      • (ア) グルタミン・アスパラギン・グルタミン・トレオニン・グルタミン・チロシン
      • (イ) イソロイシン・イソロイシン・フェニルアラニン・トレオニン・イソロイシン・バリン
      • (ウ) リシン・セリン・リシン・トレオニン・トレオニン・リシン
      • (エ) アスパラギン酸・アスパラギン酸・チロシン・グルタミン酸・トレオニン・アスパラギン酸
    • 問8 下線部(5)のプロポフォールの正式な名称は「2,6-ジイソプロピルフェノール」である。これは、イソプロピル基((CH3)2CH-)が二つベンゼン環に結合したフェノールであることを意味する。数字「2,6-」はイソプロピル基が結合しているベンゼン環の炭素原子の位置番号を示している(構造式1)。異なる位置番号(x、y)の「x,y-ジイソプロピルフェノール」という名称の位置異性体はプロポフォールを含めて何種類存在するか。