東京慈恵会医科大学化学2012年第1問
二酸化炭素は、炭素や炭素化合物の燃焼、生物の呼吸、生物体の腐敗などによって生じる。大気中の二酸化炭素は、近年わずかずつではあるが、増加し続けている。二酸化炭素は常温常圧では無色無臭の気体であるが、固体の二酸化炭素は、規則正しく配列した分子結晶をつくる。
水に溶けた二酸化炭素の飽和水溶液は、式(1)のような電離平衡で表されるが、その平衡は著しく左に偏っている。 CO2+H2O⇆A 式(1)の電離定数(K)は、水の濃度を一定と考えてよいので、式(2)のように表される、20℃で、二酸化炭素の圧力が1.01×105 Paの飽和水溶液における式(2)の電離定数(Ka)の値は、4.41×10-7 mol/Lである。 Ka=B
また、式(1)の電離による生成物の一つはさらに電離するが、その電離定数の値は非常に小さい。したがって、大気と平衡にある水の水素イオン濃度は、近似的には式(2)の電離定数の値だけを考えればよい。
二酸化炭素がア金属元素の水酸化物の水溶液に吸収されると、イ塩の沈殿を生じるが、この塩は純水にはわずかしか溶解しない。しかし、イ塩を含む水溶液に、さらに二酸化炭素を通じ続けると、沈殿は消える、この反応は式(3)のように表される。 C
- 問1 文中の空欄アとイに適切な語句を記せ。
- 問2 式(1)の化学反応式を完成させるために、右辺の空欄Aに適切な化学式を示せ。
- 問3 式(2)の右辺の空欄Bに適切な式を記せ。
- 問4 式(3)の空欄Cに化学反応式を示せ。ただし、ア金属元素はMで表わせ。
- 問5 大気(20℃、1.01×105 Pa)中の二酸化炭素の濃度を350 ppm(ここで、1 ppmとは気体1000 L中に1 mLの気体物質が含まれていることを表している。)として、次の(i)と(ii)に答えよ。
- (i) 20℃で大気と平衡にある雨水1.00 Lに溶解する二酸化炭素の物質量はいくらかを記せ。
ただし、二酸化炭素の圧力が1.01×105 Paのとき、20℃で水1.00 Lに溶解する二酸化炭素の体積を標準状態(0℃、1.01×105 Pa)の体積に換算した値は0.871 Lである、また、標準状態での二酸化炭素1 molの体積は22.4 Lとする。
- (ii) 20℃で大気と平衡にある雨水のpHはいくらかを記せ、ただし、式(1)の電離度は1に比べて十分に小さいものとする.また、雨水には二酸化炭素以外の成分は溶解していないものとし、二酸化炭素の溶解により雨水の体積は変化しないものとする。
- 問6 下記の実験について、次の(i)と(ii)に答えよ。
[実験] 水酸化ナトリウム水溶液に大気中の二酸化炭素を吸収させたアルカリ性の溶液200 mLがある。この溶液20.0 mLをコニカルビーカーにとり、まず、指示薬としてフェノールフタレイン溶液を数滴加えて0.100 mol/L塩酸水溶液で滴定したところ、15.0 mLを加えたところで溶液の色が赤色から無色となった。続いて、この溶液に指示薬としてメチルオレンジ溶液を数滴加えて、同じ濃度の塩酸水溶液で滴定を続けたところ.6.00 mLを加えたところで溶液の色が橙黄色から赤色となったので、滴定を止めた。なお、炭酸水素ナトリウム水溶液にフェノールフタレイン溶液を数滴加えても溶液の色は無色である。
- (i) 下線部の溶液200 mLに吸収された二酸化炭素は、27.0℃、1.01×10 Paで何Lになるかを記せ。
- (ii) 下線部の溶液200 mL中に残っている水酸化ナトリウムの濃度(mol/L)は、いくらかを記せ。