東京女子医科大学生物2013年第5問

ヒドラに関する以下の文章を読んで次の各問に答えよ。

ヒドラは、無脊椎動物のイソギンチャクやクラゲと同じ(ア)と呼ばれるグループの仲間であり、水中で生活する。円筒形の体を持ち、底部で固い基質に付着し、反対側の頭部に触手が周りに生えた口を持ち、触手で捕えたエサを食べて生活する。有性生殖も行なうが、親個体の体の一部から小さな突起が生じてそれが新しい個体となって親個体から分離して増える無性生殖もよく行なわれ、高い再生能力も持つ。

実験室の中で育てて長年無性生殖で增え続けているヒドラを使い、ほぼ同じ大きさの個体を用意して、以下のような体の一部の移植実験を行なった。

A) 下図Aのように、1匹の個体の1~4のどれかの部位から体の組織の小片を切り取り移植片とし、これを別個体の4の部位から同じ大きさの組織を除去してそこに移植して育てた。すると、1から取った組織片の移植を行なった個体の91%で、2から取った組織片の移植を行なった個体の47%で、3から取った組織片の移植を行なった個体の29%で、4から取った組織片の移植を行なった個体の0%で、移植部位に頭部の形成が見られた。

B) 下図Bのように、1匹の個体の1の部位から体の組織の小片を切り取り移植片とし、これを別個体の1~4のどれかの部位から同じ大きさの組織を除去してそこに移植して育てた。すると、1の部位に移植した個体の2%で、2の部位に移植した個体の35%で、3の部位に移植した個体の57%で、4の部位に移植した個体の91%で、移植部位に頭部の形成が見られた。

以上の実験においては、移植片を取った個体あるいは移植先となった個体のどちらか一方は必ず無害の青色色素で生体染色したものを用いた。全ての移植において移植片は移植先の個体にすみやかに生着し、移植部位に頭部形成が起った場合その頭部の色は移植片の色と同じであった。実験結果はどちらを生体染色したかによって違いが無かったので、両方のケースをまとめてある。

tokyojoshiika-2013-biology-5-1
  • 問1.文中のアに当てはまる適当な分類学上の名称を答えよ。
  • 問2.文中の下線部のような無性生殖の方法の名称を答えよ。
  • 問3.以下の可能性のうち、上の実験から否定出来ると思われるものを全て選べ。
    • a.ヒドラの体の組織には別のヒドラ個体に移植された時に頭部を形成する能力があるが、その能力は頭部に近い部位の組織ほど強い。
    • b.ヒドラ個体の体の組織は移植された別個体のヒドラの組織の頭部形成を抑える作用を持つが、その作用は頭部に近いほど強い。
    • c.ヒドラ個体の体の組織は移植された別個体のヒドラの組織に働きかけて頭部形成を引き起こす作用を持ち、その作用は底部に近いほど強い。
    • d.ヒドラの体の組織には別のヒドラ個体に移植された時に、移植先のヒドラ個体の組織が持つ頭部形成を引き起こす作用に反応して頭部を形成する能力があるが、その反応能力は底部に近い部位の組織ほど弱い。
    • e.ヒドラの体の組織は別のヒドラ個体に移植された時に、移植先のヒドラ個体の組織に働きかけて頭部形成を引き起こす作用を持つが、その作用は頭部に近い部位の組織ほど強い。
    • f.ヒドラ個体の体の組織には移植された別のヒドラの組織が持つ頭部形成を引き起こす作用に反応して頭部を形成する能力があるが、その反応能力は底部に近いほど弱い。
    • g.ヒドラ個体の体の一部を切除すると切除の影響で必ず頭部が形成される。