東京女子医科大学生物2012年第1問

タマネギを用いた次の実験や体細胞分裂に関する以下の問に答えよ。

タマネギのりん茎の底部を水につけて発根させた後、根の先端部1cmを切り取った。切り取った根の先端部に、以下の(1)から(6)の操作を順に行なって標本を作製し、顕微鏡で観察した。

  • (1) カルノア液(酢酸とエチルアルコールを混ぜたもの)に10~15分ほど入れた後、取り出した。
  • (2) 60°Cに温めた4%塩酸に数分間浸した後、蒸留水に移した。
  • (3) スライドガラス上にのせた後、柄付き針で組織をほぐした。
  • (4) 酢酸オルセイン溶液を1~2滴加えて、数分間放置した。
  • (5) カバーガラスをかけた。
  • (6) ろ紙片をカバーグラスの上にのせて、親指でその上から力を加えて押しつぶした。
  • 問1. 右図は切り取った根の先端部を縦断したものを表している。体細胞分裂が行なわれているのはア~エのどの部分か、1つ選べ。
  • tokyojoshiika-2012-biology-1-1
  • 問2. 植物の根や茎の先端部にある体細胞分裂が盛んに行なわれている組織を何と呼ぶか。以下のア~コの中から1つ選べ。
    • ア. 茎頂分裂組織
    • イ. 根端分裂組織
    • ウ. 頂端分裂組織
    • エ. 茎頂成長組織
    • オ. 根端成長組織
    • カ. 頂端成長組織
    • キ. 形成層
    • ク. 海綿状組織
    • ケ. 通道組織
    • コ. さく状組織
  • 問3. (2)、(4)、(6)の操作のどれか1つを行なわずに標本をつくリ顕微鏡で観察したところ、次の様な問題が生じた。それぞれどの操作を行なわなかったのだろうか。以下のア~カの中から最も妥当なものを1つ選べ。
    • 1) 細胞が重なり合ってよく見えない
    • 2) 無色透明でよく見えない
      • ア. (2)
      • イ. (4)
      • ウ. (6)
      • エ. (2)あるいは(4)
      • オ. (2)あるいは(6)
      • カ. (4)あるいは(6)
  • 問4. 標本を観察したところ、体細胞分裂している細胞は標本のごく一部の領域にしか見られず、それ以外の大部分の領域では分裂していない細胞ば かりだった。分裂している細胞が見られる領域では次のa~fのような像(矢印の細胞)が観察された。それぞれ、以下のア~オのどの時期に当たるか。最も妥当なものを1つ選べ。なお、ア~オのいずれもa~fのどれかに該当する。
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    • ア. 分裂期の前期
    • イ. 分裂期の中期
    • ウ. 分裂期の後期
    • エ. 分裂期の終期
    • オ. 間期
  • 問5. 前問のa~fのうち、細胞1個あたりの核のDNA量が最も少ない可能性のあるものはどれか。以下のア~カの中から1つ選べ。
    • ア. a
    • イ. b
    • ウ. c
    • エ. d
    • オ. e
    • カ. F
  • 問6. 分裂している細胞の見られる領域から全く見られない領域まで視野を動かして観察し、それらの領域での視野に見られる分裂期各期の細胞や分裂していない細胞の数をそれぞれカウントし合計したところ、次の表のような結果となった。また、タマネギ根端で体細胞分裂を盛んに行なっている組織の細胞の分裂期の長さを文献で調べたところ、83分であるとわかった。この値と表の結果を元にして前期の長さを求めようと考えた。以下のア~オの中から最も妥当なものを1つ選べ。ただし、タマネギ根端で体細胞分裂を盛んに行なっている組織では、いずれの細胞も互いに関係なくばらばらのタイミングで分裂している。
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    • ア. 前期の長さは約5分と計算される
    • イ. 前期の長さは約13分と計算される
    • ウ. 前期の長さは約70分と計算される
    • エ. 前期の長さは約138分と計算される
    • オ. これらの情報からは前期の長さはわからない
  • 問7. 前問の表の結果と文献で調べた分裂期の長さを元に、タマネギ根端で体細胞分裂を盛んに行なっている組織の細胞の細胞周期の長さを求めようと考えた。以下のア~オの中から最も妥当なものを1つ選べ。
    • ア. 細胞周期の長さは約90分と計算される
    • イ. 細胞周期の長さは約1086分と計算される
    • ウ. 細胞周期の長さは約1291分と計算される
    • エ. 細胞周期の長さは約1982分と計算される
    • オ. これらの情報からは細胞周期の長さはわからない
  • 問8. 顕微鏡で観察している細胞の実際の大きさを知ろうと考えた。以下のア~エの中から最も妥当なものを1つ選べ。
    • ア. 接限ミクロメーターを顕微鏡の接眼レンズに入れた状態で標本を観察し、細胞の大きさが接限ミクロメーターの何目盛りに相当するかを調べる。次に、接眼レンズから接眼ミクロメーターを取り出し、取り出した接眼ミクロメーターの目盛りを定規で測定し、ミクロメーターの1目盛りの大きさを計算する。この値に顕微鏡で観察した日盛りの値をかけて、細胞の大きさを計算する。
    • イ. 顕微鏡の横に定規を置いて、左目で顕微鏡の接限レンズをのぞき右日で定規を見て、顕微鏡で観察している細胞を定規の目盛りと比べることで細胞の大きさを測定する。測定した値を観察時の顕微鏡の倍率で割ることにより、実際の細胞の大きさを計算する。
    • ウ. 顕微鏡にデジタルカメラをセットし、テレビにつなげて観察している標本の像がテレビに写るようにする。テレビの画面上で細胞の大きさを定規で測定し、観察時の顕微鏡の倍率で割ることにより、実際の細胞の大きさを計算する。
    • エ. ア~ウの方法では細胞の大きさを知ることはできない。
  • 問9. DNA合成期の細胞に3Hチミン(*)を含むヌクレオチドを与えると、DNAの新しいヌクレオチド鎖の合成に利用され3Hチミンを含む新しいヌクレオチド鎖ができる。DNA合成期に3Hチミンを含むヌクレオチドを与えた細胞が体細胞分裂を行なって、2個の娘細胞ができた。この娘細胞のDNA合成期の前の核1個中のDNAに含まれる3Hチミンの量は、DNA合成期直後の親の細胞の核1個中のDNAに含まれる3Hチミンの量の何倍か。以下のア~オの中から最も妥当なものを1つ選べ。(*:3Hチミンは放射性同位元素である3H [三重水素]を含むチミンで、通常の水素原子を持つチミンと同じ化学的性質を持つ。)
    • ア. 0.1倍
    • イ. 0.5倍
    • ウ. 1倍
    • エ. 1.5倍
    • オ. 2倍
  • 問10. 前問の2個の娘細胞が分裂期の中期になって染色体が形成された時、この2個の細胞の染色体全てのうち、3Hチミンを含む染色体と3Hチミンを含まない染色体の数の比はどのようであるか。以下のア~オの中から最も妥当なものを1つ選べ。ただし、娘細胞には3Hチミンを含むヌクレオチドは与えないものとする。
    • ア. 含む染色体:含まない染色体$=1:0$
    • イ. 含む染色体:含まない染色体$=3:1$
    • ウ. 含む染色体:含まない染色体$=1:1$
    • エ. 含む染色体:含まない染色体$=1:3$
    • オ. 含む染色体:含まない染色体$=0:1$
  • 問11. 前問の娘細胞がさらに体細胞分裂を行なって、元の親細胞の孫細胞に相当する計4個の細胞ができた。この孫細胞に相当する4個の細胞が分裂期の中期になって染色体が形成された時、この4個の細胞の染色体全てのうち、3Hチミンを含む染色体と3Hチミンを含まない染色体の数の比はどのようであるか。以下のア~オの中から最も妥当なものを1つ選べ。ただし、娘細胞や孫細胞には3Hチミンを含むヌクレオチドは与えないものとする。
    • ア. 含む染色体:含まない染色体$=1:0$
    • イ. 含む染色体:含まない染色体$=3:1$
    • ウ. 含む染色体:含まない染色体$=1:1$
    • エ. 含む染色体:含まない染色体$=1:3$
    • オ. 含む染色体:含まない染色体$=0:1$